54 / 58
溺愛争奪戦
2
しおりを挟む「鈍くて、ひたむきで、優しくて。そんな芽衣だからこそ、俺は惹かれたんだろうな」
「え、」
「目、閉じろ」
「!」
言うやいなや。
近づくやいなや。
凌久くんは私の唇と自分の唇を、ソッと合わせた。私は突然過ぎて、何が何だか分からなくて――ただ、されるがままとなる。
「~ッ!?」
「――フッ、へたくそ。もう一回」
ニッと笑った凌久くんは、それはそれはカッコよくて。カッコイイのに人気声優で、しかも私のことを好きでいてくれる――なんて。
まさかそんなハッピーエンドになるなんて思っていなかった私。目まぐるしく変わる状況に、頭も心もついて行かなくて……
バタン
「え、おい!芽衣!?」
「ご、ごめ、体の力が、抜け……」
「はあ?おい、しっかりしろ。大丈夫か?」
「だい、大丈夫……ですっ」
な、なんか……凌久くんの破壊力が、すさまじいんだけど……!?っていうか、さっき凌久くんとキスしたよね!?キスされたよね!?
しかもさっき、凌久くんが私に「大丈夫か?」て言った!いつもの凌久くんらしくない!しかも、いつの間にか私をお姫様抱っこしてるし!
「(ひぇ~!凌久くん、どうしちゃったのー!?)」
信じられなくて、恥ずかしくて、そして嬉しい。嬉しくて、爆発して、今すぐしんじゃうんじゃないの?って思う程、幸せだ。
って、そう思ってるのに。
凌久くんは「トドメ」と言わんばかりに、とってもいい声で、私に甘い言葉を送った。
「なぁ芽衣。鈍感なお前には、きちんと言葉にして言っておく。よく聞いとけよ」
「え」
「俺は芽衣の事が好きだ。どんな奴からもお前を守るから、俺と付き合って。それで……俺のそばに、ずっといてほしい」
「!?!?」
くらっと。覚えたのはめまいか、それとも甘すぎて溶けそうな幸せか。
「おい、返事は?」
「ひゃ、ひゃい……っ」
「ん」
「ん」と笑って、私のおでこにキスをする凌久くん。あっ、甘すぎる……っ!待って、待ってっ!
本当に、もうムリ……っ!!
「凌久くん……」
「あ?」
「幸せな時間を、ありが、とう……」
「あ、気ぃ失った」
そして――
お姫様抱っこをされたまま、私たちはラウンジに戻る。すると、何とか意識を取り戻していた私を見た皆が心配してくれた。椅子を長く繋げて、私が寝転ぶスペースを作ってくれる。
「芽衣ちゃん、大丈夫?」
「ありがとうございます楽先輩。大丈夫、です……たぶん」
「……」
その時、楽先輩はチラリと凌久くんを見る。そして、次に私。すると楽先輩は、私に何を聞くでもなく「そっか」と納得したように頷いた。
「顔が赤い事には、触れない方が良さそうだね」
「っ!」
その言葉で、私の顔が赤みを増したのを見て、楽先輩は「良かった」と笑った。
「え、良かった……?」
「芽衣ちゃんが幸せそうなら、俺も幸せだから。今の君を見て、俺も幸せなんだよ」
「楽先輩……」
さっき私に告白してくれた楽先輩。楽先輩の期待に応えられなかったのに、そんな事を言ってくれるなんて。やっぱり楽先輩、優しすぎるよ。
だけど楽先輩は「でもね」と、少し意地悪そうに笑う。ん?なんだろう。
「さっきも言ったけど、俺って優しくない時があるからね。その時は遠慮なく、声宮くんから君をさらうから、覚悟しててね」
「ら、楽先輩……っ」
オーバーヒート直前な私に、楽先輩は「俺は今、芽衣ちゃんから離れた方が良さそうだね。お大事に」と言葉を残し、皆の所へ戻って行った。
申し訳ない……。けど確かに、今は離れてくれる方がありがたいかも……!
「(はぁぁぁ~楽先輩は、たまに罠を仕掛けてくるから心臓に悪いっ)」
1
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
アダムとイヴ
桃井すもも
恋愛
私には、婚約者がおります。
その名をアダム様と仰います。
私の名がイヴですから、アダムとイヴで「創世記」の例のお騒がせカップルと同じ名ですね。
けれども、彼等と私達は違います。
だって、アダム様には心を寄せる女性(ひと)がいらっしゃるのですから。
「偶然なんてそんなもの」のお二人も登場します。
からの
「ままならないのが恋心」へ連なります。
❇例の如く、100%妄想の産物です。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる