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溺愛争奪戦

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「鈍くて、ひたむきで、優しくて。そんな芽衣だからこそ、俺は惹かれたんだろうな」

「え、」

「目、閉じろ」

「!」


言うやいなや。
近づくやいなや。

凌久くんは私の唇と自分の唇を、ソッと合わせた。私は突然過ぎて、何が何だか分からなくて――ただ、されるがままとなる。


「~ッ!?」

「――フッ、へたくそ。もう一回」


ニッと笑った凌久くんは、それはそれはカッコよくて。カッコイイのに人気声優で、しかも私のことを好きでいてくれる――なんて。

まさかそんなハッピーエンドになるなんて思っていなかった私。目まぐるしく変わる状況に、頭も心もついて行かなくて……


バタン


「え、おい!芽衣!?」

「ご、ごめ、体の力が、抜け……」

「はあ?おい、しっかりしろ。大丈夫か?」

「だい、大丈夫……ですっ」


な、なんか……凌久くんの破壊力が、すさまじいんだけど……!?っていうか、さっき凌久くんとキスしたよね!?キスされたよね!?

しかもさっき、凌久くんが私に「大丈夫か?」て言った!いつもの凌久くんらしくない!しかも、いつの間にか私をお姫様抱っこしてるし!


「(ひぇ~!凌久くん、どうしちゃったのー!?)」


信じられなくて、恥ずかしくて、そして嬉しい。嬉しくて、爆発して、今すぐしんじゃうんじゃないの?って思う程、幸せだ。

って、そう思ってるのに。

凌久くんは「トドメ」と言わんばかりに、とってもいい声で、私に甘い言葉を送った。


「なぁ芽衣。鈍感なお前には、きちんと言葉にして言っておく。よく聞いとけよ」

「え」

「俺は芽衣の事が好きだ。どんな奴からもお前を守るから、俺と付き合って。それで……俺のそばに、ずっといてほしい」

「!?!?」


くらっと。覚えたのはめまいか、それとも甘すぎて溶けそうな幸せか。


「おい、返事は?」

「ひゃ、ひゃい……っ」

「ん」


「ん」と笑って、私のおでこにキスをする凌久くん。あっ、甘すぎる……っ!待って、待ってっ!

本当に、もうムリ……っ!!


「凌久くん……」

「あ?」

「幸せな時間を、ありが、とう……」

「あ、気ぃ失った」


そして――


お姫様抱っこをされたまま、私たちはラウンジに戻る。すると、何とか意識を取り戻していた私を見た皆が心配してくれた。椅子を長く繋げて、私が寝転ぶスペースを作ってくれる。


「芽衣ちゃん、大丈夫?」

「ありがとうございます楽先輩。大丈夫、です……たぶん」

「……」


その時、楽先輩はチラリと凌久くんを見る。そして、次に私。すると楽先輩は、私に何を聞くでもなく「そっか」と納得したように頷いた。


「顔が赤い事には、触れない方が良さそうだね」

「っ!」


その言葉で、私の顔が赤みを増したのを見て、楽先輩は「良かった」と笑った。


「え、良かった……?」

「芽衣ちゃんが幸せそうなら、俺も幸せだから。今の君を見て、俺も幸せなんだよ」

「楽先輩……」


さっき私に告白してくれた楽先輩。楽先輩の期待に応えられなかったのに、そんな事を言ってくれるなんて。やっぱり楽先輩、優しすぎるよ。

だけど楽先輩は「でもね」と、少し意地悪そうに笑う。ん?なんだろう。


「さっきも言ったけど、俺って優しくない時があるからね。その時は遠慮なく、声宮くんから君をさらうから、覚悟しててね」

「ら、楽先輩……っ」


オーバーヒート直前な私に、楽先輩は「俺は今、芽衣ちゃんから離れた方が良さそうだね。お大事に」と言葉を残し、皆の所へ戻って行った。

申し訳ない……。けど確かに、今は離れてくれる方がありがたいかも……!


「(はぁぁぁ~楽先輩は、たまに罠を仕掛けてくるから心臓に悪いっ)」

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