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繋がるリング
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しおりを挟む凌久くんは、私を見てニヤニヤしながら「どうなんだよ芽衣」と余裕の表情をしている。
~もう! こうなったら……
「そ、そうだよ!」
「へ?」
「凌久くんだよ。私と凌久くんが、赤い糸で繋がってるの!
凌久くんが、私の運命の人なの!」
「……は、え!?」
ボッと火がつくくらいに赤くなった凌久くんは、ジッとしたままでは、いられなくなったらしい。勢いよく立ち上がって、私と少しづつ距離を空ける。
「ちょ、どこに行くの!?」
「ど、どこでもいいだろ!」
「っ!」
その距離感に、急に不安を覚えた。昔、追いかけていた凌久くんが姿を消した、あの辛い記憶を思い出してしまって――
「い、行かないで。凌久くん、」
「”行かないで”って、」
「お願い、もう……どこにも行かないで」
「芽衣……」
さすがに不思議に思ったのか、凌久くんは私の所へ戻ってきた。そして、今だにしゃがんでいた私に「ほら」と、手を伸ばしてくれる。ゆっくり立ちあがった私。そんな私を、凌久くんは静かに見ていた。
「……ありがとう。ごめん、変な事を言って」
「いーけど……さっきの、どういう意味だよ」
――お願い、もう……どこにも行かないで
「あ……えっと、」
つい、咄嗟に言っちゃった。だけど……凌久くんには、昔の話を聞いてもらいたい。
ずっとあなたを探してた、ずっと応援してた。ずっと会いたかったって――溢れるくらいの私の気持ちを、知っていてほしいの。
「凌久くんが風邪で寝込んだあの日。部屋に置いてある台本を、見ちゃったの」
「! お前は……」
「ご、ごめん!後で謝るから、今は聞いて。ね?」
そう言うと、凌久くんはムスッとした顔で「続けろよ」と言ってくれた。
「私ね。昔、友達とトラブルがあったの。すっごく傷ついて、悲しかった。だけど、そんな私を救ってくれたのは、凌久くんなんだよ」
「え、俺?」
「うん。凌久くんの部屋にあったアニメの台本。そのアニメで、凌久くんが演じたキャラクター。そのキャラの一言で、私は救われたの」
【 お前は一人じゃない 】
私がセリフを口にすると、凌久くんは目を細めた。「何度も練習したシーンだな」と、懐かしそうに笑う。良かった、あのアニメの事。キャラクターの事。凌久くん、覚えててくれたんだね。
「あのセリフに、私は支えられた。そしてその時から、私は凌久くんを追いかけてたの」
「で、俺の部屋で台本を見つけて、あのキャラを演じているのが、俺だって分かったのか」
「うん。凌久くんの声を聞いたあの日から、ずっと探していたの。だけど、見つからなかった。
だけど私は凌久くんを諦められなくて。一度だけでいいから会いたいって、ずっと思ってた。
そして、もしも本当に会えたなら、それは運命だって、そう思ったんだよ。
だから、私はずっと”運命の人に会いたい”って、そう言ってたの」
「それで、声優が多く通うっていう、ココに入学したのか」
「うん」
「それでエレベーターの中で、”運命の人に会いに来た”って言ってたのか」
「……うん」
凌久くんは「そうか」と言って、片手で口を覆った。
「全部、俺のためだったのか」
「うん……そう」
私やっと会えたの、凌久くんに――と言うと、凌久くんは眉間にシワを寄せた。悲しそうな顔で、私を見ている。なんで、なんで凌久くんがそんな顔をするの?なんで凌久くんが、泣きそうになってるの?
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