抜けがけ禁止×王子たちの溺愛争奪戦

繋がるリング

２

「一緒に遊園地に行った。寮母さんに見つからないよう、俺の部屋で芽以と隠れた。俺が風邪の時、芽衣は看病してくれた。あと、歌沢の悩み事もあるな。勇気出して、正直に俺を頼ってくれただろ。

これだけ一緒に過ごしてきて、ただのクラスメイト？じゃねーだろ。もう、芽衣の事を何も知らなかった、あの時の俺じゃない。

芽衣がバカみたいに真っ直ぐで、頑張り屋で、優しくて、人を大切に思う奴って……俺は知ったんだ。

そんなお前が“赤い糸が見える”って言うんなら――俺は信じる。だから笑わねーよ」

「凌久くん……、っ」


なんでだろう……涙が、溢れてくる。

凌久くん、私のことを、そんな風に思ってくれてたんだ。そんな風に、信じてくれたんだね。


「う～っ」

「げ、泣くなよ……」


凌久くんは露骨に嫌な顔をして、自分の袖でグイッと、私の目をこすった。ハンカチを貸してくれた楽先輩との違いに、思わず笑ってしまう。

だけど、いいの。

そんな凌久くんが、私は好きなんだから。


「そう言えば凌久くん、さっき“納得”って言ってたけど、あれはどう言う意味？私が赤い糸を見てると知って、何に納得したの？」


――いつも俺を見るんじゃなくて、芽衣が違うところを見てたのは……その“赤い糸”を見てたから？
――それなら納得だ


「っ！」


赤い顔をしたのは、凌久くん。涙を拭いた自分の腕を私から離して、さっきからあまり進んでないアリの行進を、再び見つめる。


「あれは、だな……。お前が、いつも俺を見ないからだ」

「私が、凌久くんを？」

「そ。俺と話してても、ずっと俺の手ばっかり見てるし。でも、自分の手を見ても、気になる物なんて何もついてないだろ？

だから、俺以外の誰かを見てんじゃねーの？って……。そう思うと、腹が立ったんだよ」

「え、腹が立った？」

「っ！！」


瞬間、凌久くんは「しまった！」という顔をした。アリを見ていた目は、すぐにギュッと固く閉じられ、大げさなほど私から顔を逸らす。


「（凌久くん、もしかして恥ずかしがってる？）」


もし、そうだとしたら……嬉しい。どういう事？詳しく聞きたい、って。私の高鳴る胸が、そう、せかしてくる。


「ど、どうして腹が立ったの？」

「ど、どうでもいいだろ！」

「よくないよ！ねぇ、なんで？」

「あ～！もう！」


凌久くんは怒った顔で、私を見た。そして「お前こそな！」と、ビシッと私を指さす。


「お前は！紛らわしいんだよ！てっきり俺以外の好きな人を見てんのかと思ったら、赤い糸を見てたなんて！」

「な！し、仕方ないじゃん！凌久くんと繋がってる赤い糸が、どうしても気になっちゃって、」


と言った時。凌久くんが「え？」と、驚いた顔で私を見た。


「”凌久くんと繋がってる赤い糸”って……。え、じゃあ――

芽衣と赤い糸で繋がってる相手って、俺？」

「え」

「そうか。だから芽衣は、俺の手ばかり見てたのか。俺の手に赤い糸があるから。で、芽衣はそれが”気になる”って？ふ～ん。どんな風に”気になる”んだよ？」


形勢逆転。今度は私が、赤くなる番。