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繋がるリング
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しおりを挟む「じつは私……赤い糸が見えるの」
言って、しまった。
ついに言ってしまった!
どうしよう、言っちゃった!
引かれてないかな?ってか普通は引くよね。「運命」をバカにしてた凌久くんなら特に……!
「(うわぁぁ、怖い。なんて言われるんだろう……っ)」
だけど、どういう事か。凌久は何も言わなかった。
何を言われるのか怖くて目を瞑っていた私。だけど、ずーっと静かだから不思議になって……おそるおそる、目を開ける。
すると、凌久くんが、今までにないくらい目を開いて、私を見ていた。
「えと、凌久くん……?」
「え、あ……」
「ごめん、大丈夫……?」
「ん……」
と言ったまま、凌久はまた、何やら考え込んで口を閉じた。えと、どうしたんだろう?
あ、分かった。私が「赤い糸」とか言うから、やっぱりドン引きしてるんだ。
でも、あまりにも私が真剣だから、さすがの凌久くんも気を遣って何も言わない、とか?
だけど、私の想像とは違う――斜め上の回答を、凌久くんは口にしたのだった。
「それが理由なわけ?」
「へ?」
「いつも俺を見るんじゃなくて、芽衣が違うところを見てたのは……その“赤い糸”を見てたから?」
「え……私、いつも違う所を見てた?」
「不自然なくらいに、目が合わない時があったぞ」
「ご、ごめん。たぶん、赤い糸を見ていたんだと思う」
素直に答えると、凌久くんは大きく息を吸って、長く吐いた。「はぁ~」と。そして見て分かるくらい少しずつ、肩の力を抜いていく。
「ど、どうしたの?」
「いや、そっか……なるほどな」
「凌久くん?」
「それなら納得だ」
「!?」
どうしよう、凌久くんがおかしい。「運命の人を探しに来ました」って言った時は爆笑したのに、「赤い糸が見える」と言った今は、笑って納得してる。
絶対、何かの間違いだ。
「凌久くん、今の話を……信じるの?」
「あ?そりゃ信じられねーよ。赤い糸ってあれだろ?小指に繋がる、とかっていうアレだろ?」
「ひ、左手の薬指だよ……」
少し不安になったものの、たぶん凌久くんの「赤い糸」への認識は間違ってない。じゃあ、何で?なんで「運命の人を探しに来た」って言った時みたいに、私を笑わないの?
「り、凌久くん……病院に行く?」
「あ゛?」
「ごめん、何でもない」
怖い顔で睨まれた。どうやら凌久くんは、通常通りみたいです。
だけど、通常通りなら、尚更ワケわからないわけで……。正直に、凌久くんに聞いてみる事にした。
「凌久くん、どうして私の事を笑わないの?」
「笑う?なんで?」
「だって私が前“運命の人を探しに来た”って言ってた時は、すごく笑ってたから……」
「あーそんな事もあったな」
軽ッ!他人の事だから、その程度の記憶力で間違ってないけど、軽!私が傷ついた事には微塵も申し訳なさを覚えてないみたい。いや、もう別にいいんだけどね……。
それよりも気になるのが、凌久くんの表情。さっきから、ずっと穏やかで、柔らかい。目つきも全然鋭くなくて、怖くない。
どこか遠い目をした凌久くんは「あの時はさ」と、地面を歩いているアリを見つめる。アリは一生懸命、大きなエサを運ぼうとしていた。
「あの時はさ、お前の事をよく知らなかったからな。なに夢見てんだか、って思ったけど」
「けど?」
「今は、違うだろ?もうただのクラスメイトの関係じゃないだろ。俺と芽衣は」
「え……」
ビックリした私。それを見る、今だ優しい顔の凌久くん。二人の顔に、夕日のオレンジが降り掛かっている。
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