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恋への気づき*凌久*

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理由は簡単で、いつも誰かを目で追っているような、そんな仕草をする事が何度もある。

皆で話している時だって、こうやって俺と二人で話しているときだって。ふと芽衣を見ると、芽衣は俺ではない何かを見て、ふッと笑みを浮かべ、優しい顔をする時がある。たまに焦っているような表情もするけど……。


何にせよ、その視線や表情が、気になってしょうがない。ほら、今だって俺と目を合わせない。ずっと俺の手を見ている。

……ん?手?

俺の手に何かついてるか?と思いきや、何もない。じゃあ、見てるのは俺の手じゃなくて、他の奴とか――?

そう思って、俺はキョロキョロと辺りを見渡す。すると、俺に一番近い場所にいたのが楽先輩だ。


「(楽先輩……か)」


さっきも芽衣と二人きりで、自動販売機の前にいた。芽衣の様子もおかしかったし、目も赤かった。


何かあったのか?って聞かない方がいいと思ったから、スルーした。けど、やっぱり気になってしょうがない。

俺の昔からの悪い癖だ。

思った事は、何でもすぐに口にしてしまう。果たして、今。それは吉と出るか凶と出るか。


「なぁ、芽衣」


俺の言葉に「?」と頭をコテンと倒す芽以。俺の次の言葉を聞いて、いつの間にか持っていたペンを、カチャンと床に落とした。


「お前ってさ、好きなヤツいんの?」

「え……」

「それって誰?」

「~っ!」


俺の目に写る、真っ赤な顔をした芽衣。これは――黒だ。芽衣は、絶対に好きなヤツがいる。じゃあ、それは誰なんだよ。

気になった俺は、連続して質問をする。


「芽衣の好きな奴って、俺の知ってる奴?それとも、この中にいる誰かか?」

「え、っと……っ」


目をキョロキョロ動かして、動揺しているの芽衣。なるほど。芽衣の好きなヤツは、このメンバーの中にいるらしい。


それが分かっただけで、俺の悩みは解消されたも同然だ。

あぁスッキリした――と、なるはずなのに。

どうして胸のモヤモヤが消えねーんだよ。なんでスッキリしねーんだよ?


「……全然分かんねぇ」

「え、私の好きな人、分からない……?」

「……」


ちぐはぐな会話が、微妙に成立してしまった時。俺の眉間に、思い切りシワが寄った。なんでか知らないけど、腹が立ったからだ。


「なんだよ。芽衣の好きな人を、俺に当ててほしいのかよ」

「そ、そういうわけじゃ、ないけど……っ」

「じゃあ、なんでそんなに残念そうなんだよ」

「残念そう……?」

「自分の好きな人を俺に知られたいみたいな顔してるぞ」

「っ!?」


芽衣は自分でも分かってなかったらしい。俺の言葉を聞いて、驚いた顔をした。

けど、この状況で黙られても――話題に困った俺は、あの話題を芽衣にぶつける事にした。
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