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告白の返事
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しおりを挟む「運命の人……」
「芽以ちゃん、言ってたよね」
――この学校で、私がずっと探している運命の人に、絶対に出会えますようにー!!!!
「あ」
そう言えば、そうだった。楽先輩には、私の恥ずかしい姿を見られているんだった。だけど、まさか今、このタイミングで楽先輩がその話題を出すなんて……。
もしかして楽先輩「告白の返事をここでして」って。そう言っているのかな?
ドキンッ
どう答えるのが正解なんだろう。どう答えるのが、楽先輩を傷つけないんだろう――私はそんな事ばかり、頭の中で考えていた。だけど、その時。口をキュッと閉じた私の頭を、楽先輩が優しく撫でた。
「芽以ちゃん、君の考えていることは大体わかるつもりだよ」
「え、なんで……」
「なんでだろう。あ、そうか。俺が先輩だからだよ。年上だからね。後輩の事は何でも分かるんだよ?どんな事でもね」
「……」
「あれ?」
いつもの楽先輩らしからぬ発言に、驚いた。いつも楽先輩は冷静で、取り乱すことがない人って、そんな風に思ってたのに。
「先輩も、冗談とか言うんですね……」
すると楽先輩は、少し勝気な表情から、一気に照れた顔になった。さっきの自分は取り繕っていたニセモノだよって、正直に白状するみたいに。
「そりゃ……ね。いつまでも芽衣ちゃんに、そんな顔させられないしね」
「楽先輩……」
この人は、もう。本当に、どこまでいってもお人よしなんだろうな。限りなくお人よしで、強くて、そして優しい人。それが楽先輩。そんな先輩に告白されるなんて、本当に幸せな事だと思う。私、贅沢者だ。
そんな私が、楽先輩のために出来る事。それは、伝える事だと思う。今の私の気持ちを、素直に、先輩に伝える事。
先輩が傷つかない方法を――なんて言っていたけど、あれは結局、私が傷つかない方法を考えていただけなんだ。
告白を断った時の楽先輩が傷つく表情を見たくなくて、その後の関係がギクシャクするのが嫌で。そうならないように、私は私を甘やかして、逃げていただけなんだ。
私の頭の上にある先輩の手の温かさを、改めて感じる。この温かさに、私は真っすぐ応えたい。
「楽先輩。お話が、あるんです……っ」
この時点で、既に涙声になっていた私。そんな私を見て、楽先輩は全てを察したのか、眉を下げて「うん」と笑った。
「芽以ちゃん、辛いね。でも大丈夫、一人じゃないよ。一緒に傷ついて、そして一緒に、また笑い合おうね」
「……っ」
先輩の言葉に、私の涙がぽろっと流れる。それを見逃さなかった楽先輩は「泣くのは早いよ」と言って、また笑った。
「す、すみません」
「ううん、俺の方こそ。魅力的な芽衣ちゃんを見つけてしまってごめんね。見つけなければ、告白して芽衣ちゃんを困らす事はなかったのにね」
「そ、そんな事……」
こんな時ですら、楽先輩は私を気遣う。「好きになってごめんね」と言うのではなく、「見つけてしまってごめんね」と言ってくれた。そんな優しい言葉を言えるのは、地球上で、きっと楽先輩だけだと思う。
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