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運命の人

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「あ?」

「あ、あのね。さっき……さっき、ね」

「なんだよ」

「……っ」


こんな聞き方をしたら、卑怯かもしれない。だけど、私は――やっと実感できたから。

私の運命の人は、やっぱり凌久くんなんだって。そう納得できたから。


「(だって同じ人に、同じ言葉で励まされたんだもんね)」


【 お前は一人じゃない 】


「(間違う私を正解に導いてくれる凌久くんに、私はどうしたって惹かれてしまう。それに凌久くんの笑顔を見ると、すごく安心してすごく嬉しくて……もっと見たいって、そう思っちゃう)」


それはきっと、凌久くんが私の好きな人だから。私の運命の人だから。

凌久くんを、私の運命の人って思いたい。だから、さっき。今にも彼からほどけそうな赤い糸を見て、ソワソワしちゃったんだ。


「(私は、凌久くんの事が好き。例え意地悪でも、顔が怖くても……その想いは、決して揺らがない)」


だけど、少しだけ。私が凌久くんの心を、揺らしてみても良いかな?

凌久くんの心の中に、私という風を吹かせて、そして――少しでも、私を意識してもらいたい。


「私が……私が歌沢くんのただのファンって聞いて、どう思った?」

「へ……?」

「……っ」

「え、っ!」


凌久くんは少しだけ目を開いた後。居心地が悪そうに、私から目を逸らす。

そしてポケットにズボッと両手を入れて、いかにも虚勢を張ったらしい雰囲気を出して……小さな声で、こう言った。


「ただのファンって聞いて……安心した」

「安心……?な、なんで?」

「遊園地に行ったデートの日……あんなに楽しそうな顔してたくせに……って。なんか悔しくなったっていうか……」

「っ!」


凌久くんの言葉に動揺して、私が体が揺らした時――二人の間の赤い糸が、ピンと張りつめる。

気のせいかもしれないけど、薬指に巻かれた赤い糸がキュッと、更に強く結ばれた気がした。

という事は、凌久くんも……?


「あーもう!いいから!行くぞ!」

「あ、ちょ、待ってよ!」


凌久くんに繋がった赤い糸に引っ張られるように、私は凌久くんの後を追った。

ふわふわ、と。

ずっと二人の間にいる、赤い糸。

この存在に、私は少しずつ――愛の重さを、覚えていくのだった。
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