抜けがけ禁止×王子たちの溺愛争奪戦

またり鈴春

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運命の人

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突然だけど、過去の話。



私が例のアニメを見た理由は、その日、小学校で悲しい事があったからなんだけど。

その悲しい事は、何かっていうとね――


『芽衣ちゃんきらーい。行こう、皆』


その一言で、今まで仲が良かったグループは、簡単に解散してしまった。解散――というより、私だけが抜けた、といった方が正しいけど。

人生で初めて、友達とケンカをしてしまった。しかも、ハブられるという極刑……。

その事実に打ちのめされた私は、救いを求めるように家に帰り、そしてテレビをつけた。その時、ちょうどアニメが放送されていた。


『あ、なんだか……すきなこえ』


ちょうどアニメの総集編をしていたから、何も知らなかった私でも、すぐにアニメの内容を理解することが出来た。

そして、そのアニメの中。ひときわ輝いていた男の子。

揺れる茶髪が特徴の、ぶっきらぼうだけど、本当は優しい――そんな男の子。

その子のセリフの中で、一番有名なもの。


【 お前は一人じゃない 】


その言葉が、当時の私にはひどく響いた。グループからハブられて一人きりになった私。

そんな私に、男の子が「一人じゃない」って言ってくれた気がして……一気に、惹かれた。

初めは、口も悪いし意地悪だし、いけすかないキャラクターって思ってたのに。その一言だけで、私は簡単に恋に落ちてしまったの。


『もうちょっと……がんばって、みようかな』


明日から学校に行きたくないと思っていた私が、その男の子のセリフだけを支えに――結局、その後も休まずに登校する事が出来た。


別の友達を作る事が出来たから、グループをハブられても気にならなかった。好きな人が言ってくれた、あの言葉だけを頼りに、逆境の中でも精一杯あがくことができた。


だから、私の好きな人は「ただ好き」というわけじゃなくて。

辛かったあの時の私を支えてくれた、大事な人。なくてはならない人。

いつか、当時のお礼を言いたい。そして、いつか恩返しをしたいって。

そう思っていたんだけど……


「おい、芽衣」

「(ビクッ!)」

「この前はありがとな。看病してくれたの、助かった」

「か、かかか、そうだ、ね!ん、元気になてて、良かた!」

「……おい、大丈夫かよ?いま何語を喋ったんだ?」


その相手が、まさかの凌久くんと知った、あの日から――数日が経った。

凌久くんはスッカリ元気になったみたいで……今も教室の中で、いつも通りに過ごしている。

そう、凌久くんはいつも通り。なんだけど、私は違う。

私はあの日から、凌久くんを、ガンガンに意識してしまっていた。


「(今まで苦手な人と思っていたのに、急に運命の人って言われても……っ)」


好きな声優さん=凌久くんと分かった日は、感極まって泣いてしまったけど。よくよく考えたら……

私は凌久くんを好きなのか?という話で。凌久くんを見ては「好き?嫌い?」と。まるで花占いみたいに、頭の中で二択を繰り返してしまう。

そんな私を見て、凌久くんが不気味がるのは当然の事で……。


「まさかお前、俺の風邪が移ったんじゃねーの?」


と。凌久くんは、まるで病原菌みたいな目で私を見て、ザッと距離を置く始末。

そう言えば、故障したエレベーターの中でも、こんな反応されたなぁ……。大事な喉を守るためと、きちんとした理由があるのは知ってる。けど、それはそれで傷つくと言うか。


「か、風邪じゃない。いたって、いつも通り……です」


凌久くん=好きな声優さん=運命の人、の方程式が私の中にある今。凌久くんを前にするだけで、挙動不審な行動をとってしまう。
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