抜けがけ禁止×王子たちの溺愛争奪戦

またり鈴春

文字の大きさ
上 下
10 / 58
声宮くんと遊園地

しおりを挟む

「ゆ、遊園地!?」

「そー。やっぱデートって言ったら、ここだよな」

「にしても、なんでメガネと帽子?」

「俺は人気声優として顔バレしてるからな。変装だっての」

「(変装さえもサマになるって……腹立つな)」


 そんなこんなで着いた先は、遊園地。

 平日の夕方近くだというのに、遊園地は賑わっていた。主にカップルで。


「(他の人が見たら、私と声宮くんも彼氏彼女に見えるのかな……?)」


 そう思うと手汗がジットリ出てきた。しまった、冷や汗が……!

 声宮くんに「きったねー」なんて言われないために、繋がっている手をすぐに離す。すると声宮くんは、ムッとして顔で私の名前を呼んだ。


「おい、芽衣。なに手を離してんだよ」

「だ、だって……」

「これからデートなんだぞ?ほら、手よこせよ。いくら汗っかきでも、俺は気にしねーよ」

「(遠回しに”汗ばんでる”って言われてる!)」


 やっぱり汗の事に気づかれてた!と思うと、妙に恥ずかしくなって。私は、自分の両手を胸の前でギュッと握る。

 ふっふっふ。これで手は繋げまい……!

 そんな悪あがきをした私を見た声宮くん。お決まりのため息を、これでもかと深くついた。


「はぁ~仕方ねぇな。じゃあ、アレ行くか」

「あ、あれ……?」


 不思議がる私を見て、声宮くんはニッと笑った。その顔に不安になったのは、言うまでもないよね……!


「ど、どこに行くの!?」

「まーまー、ついてくりゃ分かるって」


 今度は強引に手を握ろうとしなかった声宮くん。手を繋がないまま、声宮くんが前、私が後ろと、二人は縦に並んで歩く。

 遊園地の中は混雑していて、何度も人に当たってしまう。ドンと、肩が思い切りぶつかって、思わず顔が歪んでしまった。今のは……ちょっと痛かったなぁ。

 私の前を歩く、声宮くんの背中を見る。私が人にもみくちゃにされているとは知らず、涼しい顔をして歩いている。

 っていうか、声宮くんがカッコ良いから、まるでパレードみたいに、声宮くんが行く道を皆が率先して開けていた。イケメンっていいなぁ。色々お得だ……。


「(ってか、デートっていうなら、少しは私の事を気にしてくれてもいいじゃん……)」


 大丈夫か?とか、ちゃんとついてきてるか?とか。そんな確認をするために、たまには後ろを振り返ってくれてもいいじゃん。


「(まぁしょせん、勝負のためだけのデート、だもんね)」


 歌沢くんと勝負するための、形だけのデート。いくらときめく事を言われても、中身はこんなもんだよね。

 声宮くんの気まぐれな優しさの一割を、さっき何度も見ちゃったから……声宮くんに幻想を抱いちゃった。しっかりして私……!

 声宮くんは、意地悪が9割!もう忘れない!

 私が自分に喝を入れ直した、その時。声宮くんが「お」と顔を上げる。彼の視線を追って、私も顔を上げるのだけど……


「よし、着いたぞ。ここに入る」

「こ、ここここって…………!!」


 目の前に広がるアトラクション。それは――


「入場者の後ろを、全速力で追いかけてくる事で有名なお化け屋敷だ!」

「(ひィィィー!!!!私、お化け苦手なのに!!)」


 ウキウキしている声宮くんには悪いけど、なんで遊園地一発目でお化け屋敷なの!?デートって言うなら、もっと女子が喜びそうな所から連れて行ってよね!

 と、そんな私の気持ちが手に取るように分かったのか。声宮くんは「なんでお化け屋敷きたんだって思っただろ」とニヤニヤした顔で私を見た。


「お前が俺と手を繋がねーっていうからだ」

「へ?どういう、」

「このお化け屋敷に入ってもなお、”手を繋がない”なんて。そんな事が言えるかなぁ~?」

「!」


 わ、罠だ!!策士だ!!

 私が自分から「手を繋いでほしい」って言わせるために、わざとお化け屋敷を選んだんだ!


「ず、ずるいよ!」

「ズルくて結構。言っておくけど、俺はどんな事をしてでも芽衣と手を繋ぐからな」

「!」


 そういう言い方が、女子の誤解を招くんだって……!なんか、ときめいちゃうじゃん!私の事をそこまで思ってくれてるの?とかって、勘違いしちゃうじゃん。


「た、ただの勝負なのに……そこまでしないくても、」


 すると声宮くんは「何言ってんだよ」と私の頭にポンと手を置いた。


「今はデートしてんだ。勝負なんて忘れて、純粋に楽しもーぜ」

「え……」

「お、ガラガラだからすぐ入れるぞ」

「え!?」


 声宮くん、勝負の事を忘れてたんだ……。私は、てっきり……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クール天狗の溺愛事情

緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は 中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。 一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。 でも、素敵な出会いが待っていた。 黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。 普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。 *・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・* 「可愛いな……」 *滝柳 風雅* 守りの力を持つカラス天狗 。.:*☆*:.。 「お前今から俺の第一嫁候補な」 *日宮 煉* 最強の火鬼 。.:*☆*:.。 「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」 *山里 那岐* 神の使いの白狐 \\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!// 野いちご様 ベリーズカフェ様 魔法のiらんど様 エブリスタ様 にも掲載しています。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

龍神の化身

田原更
児童書・童話
二つの大陸に挟まれた海に浮かぶ、サヤ島。サヤ島では土着の信仰と二つの宗教が共存し、何百年もの調和と繁栄と平和を享受していた。 この島には、「龍神の化身」と呼ばれる、不思議な力を持った少年と少女がいた。二人は龍神の声を聞き、王に神託を与え、国の助けとなる役割があった。少年と少女は、6歳から18歳までの12年間、その役に就き、次の子どもに力を引き継いでいた。 島一番の大金持ちの長女に生まれたハジミは、両親や兄たちに溺愛されて育った。六歳になったハジミは、龍神の化身として選ばれた。もう一人の龍神の化身、クジャは、家庭に恵まれない、大人しい少年だった。 役目を果たすうちに、龍神の化身のからくりに気づいたハジミは、くだらない役割から逃げだそうと、二年越しの計画を練った。その計画は、満月の祭の夜に実行されたが……。 40000字前後で完結の、無国籍系中編ファンタジーです。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~

狭山ひびき@バカふり160万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。 そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。 「……わたしは、妖精が見えるの」 気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは―― 心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。 けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た! ……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね? 何もかも、私の勘違いだよね? 信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?! 【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

処理中です...