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4人の王子様
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しおりを挟む「~っ!」
そうか、これが意地悪い声宮くんが「王子」って呼ばれるワケなんだ!アメとムチで上手く私を転がして、手懐けていくって作戦(?)なんだ!
「(騙されない、騙されないぞ……!)」
「おい、変な顔で俺を睨むな」
「へ、変な顔っ!?だれが!」
「お前の事だ、お花畑。
お。やっと降りる階に着いたぞ」
私たちはエレベーターから出るため、出入り口まで足を進める。
その時、私の頭にポンっと手をやる声宮くん。ん?あれ?なにが起きたの?
「こ、声宮くん?」
「……」
混乱する私とは反対に、声宮くんは何も言わない。な、なに?不安すぎるんだけど!?
心臓がバクバクする私を、静かに見つめていた声宮くん。しばらくした後、私の頭から手を離して、エレベーターの外に出た。
その時に――声宮くんは、とても変な事を言った。
「デート、どこに行きたいんだよ?」
「……へ?」
もちろん、私の頭はクエスチョンマークでいっぱい。かろうじて残っていた意識を総動員して「デートって?」と口を動かした。
すると、声宮くんはため息をつきながら説明してくれる。
「あの後輩と勝負してるからな」
「へ、勝負って……あ」
――ここを出たら勝負しますか。どちらが花畑さんに好かれているか
そういえば、歌沢くんがそんな事を言っていた。だから歌沢くんも降りる時、私に「今度デート行きましょうね」って言ったのか。
私が全てを理解した事を察したらしい。声宮くんは眉を八の字にして、再びため息をつく。
「超忙しい俺の時間を、お前みたいなお花畑のために割くのは不本意だが――このまま後輩野郎に負けるのも気に食わねぇ。だから、お前に好かれるために、俺がわざわざお前とデートしてやるって話だ」
「そ、」
そんな事をデートする前に言われたら……絶対に引くって!ドン引きだよ!私、声宮くんの事を好きにならない自信が、スゴくある!
だけど声宮くんはエレベーターのドアを押さえて「仕方ねぇから特別だぞ」と何様な態度。
かと思えば、身長の高い声宮くんは、私を上から覗き込むようにヌッと前かがみになり、私に影を落とす。そして、その状態のまま「本当は」と口を開いた。
「本当はこのままお前とデート行くつもりだったけど、お花畑が調子悪いんならやめとくわ」
「え?調子が悪いって、」
「眩暈がしてふらついたんだろ?今日は寮に帰って寝とけよ。担任には俺から話しておくから」
「え、あ……ありがとう……?」
今は、まだ昼休み。ということは、私は午後の授業を全部休むことになるのかな?まぁ……いいか。たまには。
「(声宮くんの優しさが何だか怖いけど、今日は疲れたし……よし、休もう!)」
「やったー部屋でゴロゴロしよう~」と喜んでいた私の顔を見て、声宮くんはフッと笑った。少しだけ優しく見えたのは、気のせい?
「なんか元気そーだけど……でも、ま。調子悪いんだろうな。エレベーターが真っ暗な時から思ってたけど、お前の頭アツすぎだぞ。熱測っとけよな」
「へ?」
「風邪移されて、俺の大事な喉を潰されたくねーし。じゃーな」
「……」
私が呆然としている間に、エレベーターのドアは、いつの間にか閉まっていた。
いや、だって……
声宮くん、さっき私に何て言った?
――”エレベーターが真っ暗な時から思ってた”けど、お前の頭アツすぎだぞ
真っ暗だった時に、私の頭の熱さを知るには――私の頭に直接触るしか、確かめようがないはず。
「え、じゃあ、エレベーターが真っ暗だった時に、私の頭をポンポンしたのって……」
楽先輩じゃなくて、声宮くんなの?
え、なんで?
あの超絶意地悪な声宮くんが、私の頭をポンポンって……想像がつかないんだけど。
「ちょっと、本当に……頭が痛くなってきた……」
赤い糸が見えた他に、非現実的な事が、あのエレベーターの中でもう一つ起こっていたなんて……。
そうか、きっと夢なんだ。
全部ぜんぶ、夢に違いない――
そう思って眠りについた私が、翌朝。信じられない光景を目にするなんて……。私はちっとも、予想出来なかった。
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