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4人の王子様
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しおりを挟む「俺の魅力を声だけと思うなよ。こんな田舎娘の一人や二人、すぐに落としてやるよ」
「(勝手に田舎娘設定になってるし!)」
「そういう乱暴な言葉遣いが、女性へのマナー違反って気づいてませんね。話になりません。俺の勝利が見え見えの勝負で申し訳ないです」
「はっ、言うじゃねぇか。そこまでお花畑にご執心なのかよ」
「あなたみたいな野蛮な人との勝負に、絶対に負けたくないと思っただけです」
「(ひぃ~!もうやめてよー!)」
早くここから出してー!!――と思う反面。
歌沢くんの変化に、少し驚いた。だって、ルイ先輩と話していた時は、オドオドしてたのに……。今は堂々としていて、まるで別人。
「(歌沢くん、言う時は言うんだなぁ。そのギャップが、ちょっとカッコイイかも……。
って、違う違う!真っ暗の中で、ついにケンカが始まりそうだよ!心臓が限界、誰か助けてー!)」
エレベーターの修理はまだですかー!!と、心の中で叫んだ、
その時だった。
「(え?)」
私の目の前に、ふわっと「何か」が見えた。その「何か」とは、
「(赤い糸……?)」
真っ暗のエレベーター中。それは急に見えた。
私の体から、真っすぐに伸びている――赤い糸。
細長い、タコ糸のようなものが、赤みを帯びて、淡く光っている。その糸をずっと辿っていくと、私の左手に巻き付いていた。
しかも、巻きついていた場所は……
「(薬指!)」
私の左手の薬指に、赤い糸が巻かれてある。え、ちょっと待って……左手の薬指って!
「赤い糸」と「左手の薬指」ときたら……次の言葉は「運命の人」って決まってる!ということは、私と赤い糸で繋がっている人が、私の運命の人ってこと?しかも、このエレベーターの中にいる誰かってこと!?
目を凝らすと、赤い糸は誰かの指に巻かれているようだった。
「(赤い糸の結び目が見える。私の薬指に結ばれているのと、同じ糸。じゃあやっぱり、あの人が私の運命の人?)」
だけど、全く顔が見えない。赤い糸だけが、暗闇にハッキリと浮かんでいる。
あ、そう言えば……私以外の王子たちは、この赤い糸が見えているのかな?
「あの、今……何か見えますか?」
「は?頭だけじゃなくて目までおかしくなったのかよ。お花畑」
「な、何も見えません……っ」
「早く明りつかないかなぁ」
「花畑さん、どうかした?」
この反応。やっぱり、皆には見えてないんだ……。なんで?どうして私だけに見えてるの?
「(っていうか、誰と繋がっているのか……。すごく気になる……っ)」
糸に沿って、歩いてみようか。私と同じ赤い糸で結ばれているその手が誰なのか……知りたい。
なんで私にだけ赤い糸が見えているのか。
本当に「運命の人」と繋がる赤い糸なのか。
全然、何もわからないけど……。
――このエレベーターにいるって事は、花畑さんも寮生活って事だよね?実家は遠いの?何でこの学園に来たの?
――私は……その……う、運命の人を見つけに……っ
運命の人を見つけに来た私の前に、突然現れた赤い糸。
こんなチャンス、逃すわけにはいかないよね?
「(よし!誰に繋がってるか、確認するぞ!)」
そう意気込んで、糸を頼りに三歩くらい歩いた時だった。
フッと、赤い糸が消えてしまう。あれ?さっきまでハッキリと見えていたのに……どこに行ったの!?
真っ暗闇の中、キョロキョロしても赤い糸は見えない。こっちかな?あっちかな?と高さや角度を変えて探したけど、全然ダメ。どうやら、赤い糸は見えなくなったみたい。
「(あーあ……。せっかくのチャンスだったのに)」
はぁ、と肩を落として落ち込んだ私。その時に声宮くんが「え?おい今、」と驚いた声を出した。
「(ん?さっきよりも、更に声宮くんの声が近い気がする)」
不思議に思った、その時だった。
パッ
エレベーターの故障が直ったらしく、やっと明かりが戻って来た。
今まで真っ暗だったから、急に明るくなった明暗の差に、目がついていかない。しばらくギュッと目をつむった後に、ゆっくりと開いてみる。
すると――
「おい、俺を襲おうとしたな?」
「へ?」
「なんでお花畑が、俺とこんなに近い所にいるんだよ」
「!?」
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