抜けがけ禁止×王子たちの溺愛争奪戦

またり鈴春

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4人の王子様

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「おい後輩。非常電話のボタンをもう一回、押して見ろよ」

「お、押しましたよ!さっき連絡来たじゃないですか……っ」

「そーそー。カリカリせずに待ったら?どうせ今は修理中だろうしさ。何度も連絡しても無駄だって」


 声宮くんの提案を、歌沢くんと不動先輩が否定した。すると、否定されたのが気に食わなかった声宮くんは「チッ」と再び舌打ちをする。

 すると、


「……短気」

「あぁ?」


 楽先輩の言葉により、エレベーターのギスギスは最高潮に達する。


「先輩。いま俺の事を何て言った?」

「俺は本当の事しか言わないよ」

「つまり俺が短気で常にイライラしてる、うざったい奴だって?」



「(声宮くん、墓穴掘ってるよ……!)」



 誰もそこまで言ってないのに……っ。

 返事をしない楽先輩に、声宮くんが「ここを出たら覚えとけよ」と言う。その言葉に、涼しい声で返事をしたのは楽先輩。


「俺はしょうもない事はすぐに忘れちゃう性格だから、ごめんね」

「あぁ!?」

「あと、君の大きい声に花畑さんが怯えてるから、やめてあげて」


 その声に、私の肩がピクリと跳ねる。急に私の名前が出てくるとは思わなくて……ビックリした。

 だけど、もっとビックリしたのは、


「楽先輩、私の事……知っているんですか?」

「うん」

「(な、なんでだろう?)」


 私みたいな一般生徒を、王子って呼ばれるほど有名な楽先輩が、どうして知っているの?

 それに、さっき声宮くんに「私が怯えてる」って言ってくれたけど……。真っ暗なのに、どうして私が怯えてるって分かったんだろう。


 すると同じ事を思ったのか。声宮くんが「声だけで表情が分かんのかよ」と、楽先輩をバカにして言った。

 だけど楽先輩は怒ることなく、静かに返事をする。


「分かるよ。気配とかオーラで」

「私、オーラ出してました……?」

「うん、不安そうなオーラが飛んでた」

「(飛んでたんだ!?)」


 じょ、冗談だよね……?

 真っ暗だけど楽先輩の声が少し弾んだから、先輩が笑っているのが分かった。……確かに、暗闇でも、相手の表情って意外と分かるのかもしれない。


「それに花畑さんの場合は、声が分かりやすいから」

「え、声?」

「うん、あの日もそうだった。実はね。俺、花畑さんが入学した日に会ってるんだよ。俺が一方的に花畑さんを見ただけ、だけどね」

「え!?」


 ウソ……全然知らない!どういうこと?入学式の私を見たってこと!?


「(入学式の私、変な事をしてないよね……!?楽先輩が、どんな私を見たのか、すっごく気になる……!)」


 だけど、今この場には、他に三人の王子がいる。この人たちに、私の知らない私を聞かれるのは、嫌かも……っ。

 私は聞きたいけど、王子たちには聞かれたくない――というジレンマで悩んでいると、楽先輩が「くすっ」と笑った。


「今、花畑さん慌ててる」

「え!!なんでそれを!」

「ね?案外、相手の事がわかるんだよ。暗闇もバカにならないでしょ?」


 その時、私の頭の上に、大きな手が降ってくる。そしてポンポンと、優しい手つきで撫でてくれた。


「!?」


 いきなりの事でビックリしたけど、何とか声を出さずにすんだ。心臓に悪い……!というか、この手って楽先輩?だよね?
 まるで私を安心させるかのように頭を二、三度往復した手。その後、ゆっくりと離れていく。


「大丈夫。いつどこで花畑さんと会ったかは、皆の前で言わないから安心して」

「は、はい……っ」


 という事は、皆に言えないような恥ずかしい事をしていたんだね、入学式の日の私……。楽先輩の気遣いに感謝!

 すると、急に声宮くんが「はぁ」とため息をつく。


「(舌打ちの次は、ため息なんだね……)」


 声宮くんって、色々と忙しい人だなぁ。

 そんな事を思っていると、声宮くんが今度は舌打ちをした。「チッ」と。


「(ん?)」


 その舌打ちが、さっきよりも近くで聞こえたのは……気のせい、かな?
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