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わたしの友達・わたしの仲間
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しおりを挟む「あなた、子猫じゃなかったの!?」
『子狸が子犬と間違われるように、私ら狐も、よく子猫に間違われるんだ』
「そ、そんなことって……!」
ビックリだよ!
どこからどう見ても、可愛い子猫だったもん!
いや、でも確かに耳は大きかったような……。
って、フツーは気づかないって!
すると、遠くにいるキキが「子猫にしてはスゴイ威圧感だと思いました!」と叫ぶ。
そうか。子猫を見た時キキが固まっていたのは、九尾から漏れる妖気をキャッチしていたからなんだ。
『お腹が空いていたので、小さなサイズにしか化ける事が出来なかったんだ。驚かせてしまって、すまないね』
「ううん。雨の中、あなたを見つけることが出来て良かった」
『今日はね、あの時に借りた布と板を返しに来たんだ』
「布と板……」
九尾に渡されたのは、ハンカチと下敷き。
なるほど、確かに……布と板だ!
『お前は、私の恩人だ。
その恩人を助けられたのなら、私も嬉しいよ』
「九尾……ありがとう。あなたは命の恩人だよ。
あなたも、そしてわたしも――
お互い、無事でよかった!」
ニコリと笑うと、九尾は大きな顔を、私の頬にすり寄せる。
暖かい――思わず、ギュッとしてしまった。
「また、どこかで会おうね。九尾」
『約束しよう、いつか必ずな――』
そう言って、九尾は空高くジャンプする。
そして、そのまま降りてくることなく、姿を消した。
「行っちゃった……」
会って行動を共にする妖怪もいれば、すぐ離れていく妖怪もいる。
九尾と過した時間は短い。
だけど、わたしにとって、かけがえのない時間になった。
「また会おうね、九尾!」
すると、わたしの腕の中に、猫又のニャーちゃんが乗った。
ちょっと寂しがるわたしの腕の中で、ニャーちゃんは、どこか安心したように見える。
もしかして……さっき頭を踏まれたから、九尾が怖い、とか?
「大丈夫だよ、ニャーちゃん、安心して。九尾は怖くないよ。
本当に怖いのは……」
ニャーちゃん、教えてあげよう。
世の中には、妖怪よりも怖い人間がいる事を……!
ガシッ
「みーつーけーたーぞー」
「ひぃ! 噂をすれば……!」
そう、平和に解決したように思えて、まだ問題が残っている。
それは――
「おい猫又!
俺の呪いを解く方法、結局なんだよ!?」
魔王様の降臨!
ギロリとニャーちゃんを睨む、千景くん。
そんな千景くんにビクともしないニャーちゃんは、平然と答えた。
『ほかの妖怪なら、呪いを解く方法を知ってるかもしれんな。
その妖怪を見つけられるよう、せいぜい頑張ることだ』
「な……!?」
ふざけんなー!!と、千景くんの怒りはおさまらない。
わかる、わかるよ千景くん!
でも、どうか落ち着いて!
「千景くん、ドードー……!」
「やっと猫又に会えたのに、振り出しに戻ったんだぞ……。
これが落ち着いていられるか!!」
「そ、それは、そうなんだけど!
でもね……わたしは、嬉しいよ!」
「は? 嬉しい……?」
俺の不幸を嬉しがるほど、花りんは俺の事を嫌ってるのか――と、すごい勘違いをした千景くん。
わたしは慌てて、首を振る。
「そうじゃなくて!
わたし、千景くんの妖怪探しを手伝ってから……良いことばかりだから」
「良いこと……?」
「うん。キキとカーくんと仲間になれたし、千景くんとも、こうやって話せるようになったしね!」
「花りん……」
だからさ、千景くん。
「また二人で、妖怪探しをしようよ!
そして絶対、呪いを解く方法をみつけよう!」
「……」
何も言わない千景くんは、フキゲンな顔でわたしを見た。
そして――
「バーカ」
「へ……!?」
いきなり悪口!?
それはあんまりだよ、千景くん!
すると千景くんは腕を組み、わたしを見下ろした。
何やら、言いたいことがあるみたい……?
「さっきの、マジでヒヤヒヤしたぞ」
「さっきの?」
「こわがりとか言われてるくせに、猫又に突っ込んでいくなんて……。
うそつくなよ。お前、怖いものなしじゃねーか」
「え……?」
こわいものなし?
こわがり花りんって言われてる、このわたしが?
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