こわがりちゃんとサイキョーくん!

またり鈴春

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わたしの友達・わたしの仲間

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「げ! その顔なんだよ!?
 猫又と戦ってんだぞ!? もっとシャキッとしろ!」
「だ、」

 誰のせいだと思ってるの、誰の!
 恥ずかしいのと照れくさいのとで、うつむくわたし。
 すると、千景くんの「ヤベ」の声。
 ん?「ヤベ」?

「千景くん、どうし……わぁ!?」

 ボワンッ

 ネコ千景くんが、白い煙に包まれる。
 これは――!

「人間に、戻れた……」

 人間の手足を見て安心したのか、千景くんはハァ~と長いため息をつく。
 一方、久しぶりの魔王サマ再来に、わたしは安心するやら、背筋が伸びるやら……。
 いや、自分の肩の力が抜けてるから、きっとわたしも、うれしいんだと思う。
 ネコ千景くんが、人間の姿に戻って――良かった。

「マジでどうなることかと思った……あれ?
 そういや猫又は?」
「え?」

 わたし達を、おそっていた猫又。
 そういえば静かだ。静かすぎるっていうか……。
 フシギに思って猫又を見ると、そこには――おどろく光景が待っていた。

「千景くん、アレ!」
「大きな……狐?」

 猫又よりも、さらに大きな狐が、猫又の頭を押さえつけていた。
 大きな狐に踏んづけられた猫又は、ジタバタあがくも、抜けられない。
 どうやら猫又よりも、狐の方が強いらしい。

「でも、なんで狐が……?」
「おい、花りん。アレを見ろ」
「え……、あ!」

 千景くんが指をさす。
 見ると、狐のしっぽがあった。
 しかも九本!

「狐は狐でも、ただの狐じゃねぇ――九尾だ」
「きゅうび……?」
「猫又よりも格上の、大妖怪だ。
 でも、なんでこんな所に……」

 千景くんは、眉をしかめて不思議がる。
 すると今まで抵抗していた猫又が、九尾には勝てないと思ったらしく、急に大人しくなった。
 耳もシッポも、ダラリと地面に垂れ下がっている。
 これは……もう戦う意思がない、って事だよね?

 その時――カーくんが、上空から叫んだ。

「主! 話をするなら今です!
 浄化することが出来るかもしれません!」
「そ、そっか。分かった、やってみる!」

 今なら、やれる気がする。
 ヨシ――!
 だけど、立ち上がるわたしの手を、千景くんがギュッと握る。

「千景くん、どうかした?」
「……俺も一緒に行く。
 お前に何かあったら、アトアジ悪いし」
「千景くん……」

 千景くんは、口は悪いけど、優しい人だ。
 今だって、言い方は悪いけど……本心では、わたしを心配しているのが分かる。
 だけど――

「お願いだから、来ないでね」
「なんでだよ!」

「あの猫又は、千景くんを狙ってる。
 だったら、千景くんは近づかない方がイイよ」
「……くそッ」

 顔を下げて、悔しそうにする千景くん。
 そんな彼の手に、わたしはそっと……
 バナナを渡した。

「もしお腹が空いたら、これを食べて待っててね」
「……」

 その後、千景くんは大人しく待ってくれた――なんて、そんなわけはなく。

「こんな時に、ふざけてんじゃねー!」

 わたしの背中に、魔王サマよろしくの顔で、ギャーギャー文句を言っていた。
 もちろん、聞こえないフリ。
 わたしは今から、猫又と話をしに行くんだもん!
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