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わたしの友達・わたしの仲間
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しおりを挟む『ギャオー!』
まるで雷が落ちたかのような、耳をつんざく音がひびく。
勢いで出てきちゃったけど……。
この猫又、本当に大きい!
「このバカ! なんで出て来たんだよ!
隠れてろって言ったろ!」
「主! 危険です!」
「でも、わたし……!」
千景くんを助けたかったの――
と言えたら、さぞカッコよかっただろうけど……。
『ギャオー!!』
猫又を前にすると、あまりの迫力に、気を失いそうだった。
大きな体、赤い目、わたしをカンタンに飲み込みそうな広い口……。
「あ、あわわ……!」
「なに固まってんだよ! 早く逃げろ!」
千景くん、わたしだって逃げたいよ!
だけど、恐怖で足が動かないの!
「わたし、ダメダメだ……っ」
カーくんに「取り柄がある」って言われて、まいあがってた。
――
だけど……。
わたしは、やっぱり誰の役にも立てない。
おくびょうな、こわがり花りんのままなんだ……!
ギュッ
情けなくて、目をつむる。
その間も、猫又がわたしに向かって、突進してきた。
猫又が動く度に、ドシンドシンと揺れる地面。
立ってるだけで、精一杯だよ……!
「た、助け……っ」
その時――
視界のはしっこで、千景くんの姿がチラリと見える。
千景くんは猫又と比べると、体の大きさが、天と地の差ほどある。
それなのに、猫又を恐れることなく、わたしの元へ、真っ直ぐ走ってきてくれてる。
「花りん!!」
「千景くん……っ」
あぁ、千景くんはスゴいや。
千景くんだって、猫又が怖いはずなのに。
それでも、わたしを助けようとしてくれるんだ。
――知り合いがやられるのを、黙って見てるわけないだろ
――たまには心配されんのも、悪くねーな
――ありがと、小羽
いつも怖いけど、本当は優しい千景くん。
もし千景くんが、猫又に傷つけられたら?
わたしをかばって、ケガしたら?
「イヤ……」
――お前だけでも隠れてろ
――花りん!
「そんなの、イヤ!」
ザリッ
震える足に力を入れる。
すると、猫又よりも先に、千景くんがやってきた。
「花りん!」
ネコ千景くんは思いっきりジャンプをして、わたしの体に飛び込もうとする。
だけど……
「カーくん――千景くんを助けて!」
「は?」
キョトン顔の千景くん。
そのすきにカーくんが空からまいおり、ネコ千景くんの首根っこをくわえる。
「カーくん、絶対に千景くんを降ろさないでね!」
「わかりました、主」
うなずいたカーくんは、スゴい勢いで、この場から離れていく。
グングン昇っていくカーくんと千景くんを見て、ホッと安心できた。
だけど当然、千景くんは気に入らないみたい。
上空で「おい離せ!」と、テイコーする声が聞こえる。
「バカ小羽! 一人じゃなんも出来ねーだろうが!
こんな時に強がってんじゃねーよ、死ぬぞ!」
「そ、そんなハッキリ言わなくてもいいじゃん!」
カーくんと同じで、千景くんも言い方がキツイんだから、もう!
「でも、どれだけキツい事を言われても……千景くんをココにいさせるわけには、いかないよ」
猫又は、千景くんを狙っていた。
それなら、千景くんはココから離れてないとマズイ気がするの。
大丈夫。
千景くんがいなくても、なんとかなる!
いや、絶対、わたしが何とかする!
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