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祓う千景くんとチキンなわたし

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 コンビニでバナナを買って、仔猫にあげる。
 すると仔猫は、すごい勢いで食べ始めた。

「こんなに小さいのに、すごい食欲だね」
「よほど腹が減っていたんですね。主がいなければ危なかったですよ」
「うん、バナナの一本売りがあって助かったよ」

 あれが3本セットとかなら、買えなかったなぁ。値段的に。

「こういう時のために、一本で売ってるんだね。
 にしても、コンビニに一人で入ったの初めてだから……すっごくドキドキしたよ」

 心臓に手を当てて、ホウと息を着く。
 だけど、安心するには早かった。
 なぜなら――

 ポツ、ポツ

 キキの予言通り、雨が降り始めてしまった!

「わー! 雨だ! しかも、メチャ激しいやつだよー!」
「主! 急いで帰りましょう!」
「そうだけど……でも!」

 仔猫を見る。
 すると仔猫は、まだまだ一生懸命バナナにかぶりついていた。
 バナナのおかげで、いずれ満腹になるだろうけど……。
 あの小ささで雨に打たれたら、寒くて凍えちゃうよ!

「キキ、わたしのランドセルから、下敷きを出してくれる?」
「はい!」

 キキに下敷きを出してもらってる間に、スカートのポケットに入れていた、ハンカチとティッシュを取り出す。

「はい主、下敷きです!」
「ありがとう!」

 仔猫の下に、ポケットティッシュを、まるごと一つ置く。そして、仔猫にハンカチをかけた。
 あとは、下敷きを上手くたてれば……よし。
 仔猫用の雨宿り、できあがり!

「これで濡れないよ!」
「……」

 自分の下や上を、キョロキョロ見ている仔猫。
 そして、どうやら自分に害をなすものではないと分かると、再びわたしをジッと見つめた。

「君は、鳴かないんだね」
「……」
「いつか絶対、また会おうね。
 その時、元気な声を聞かせてね!」

 仔猫にあいさつをしていると、肩に乗ったキキが急かす。

「早く帰らないと、主が風邪をひいてしまいますよ!」
「わー、本当だ! 急ごう!」

 そして、わたしとキキは、濡れながら家に帰る。
 すぐに温かいお風呂に入って、風邪も引かなかった。
 だけど、問題はまだあって……。

「え、千景くん。今日、休み?」

 驚くことに、次の日の学校にも、千景くんは姿を見せなかった。
 昨日、ネコ化して別れて以来、一度も会っていない。
 これは、もしかして……

「千景くんに、何かあったんだ……!」

 そう思うと、いても立ってもいられない。
 授業が始まる時間だったけど……ひっそりと教室を抜け出した。
 その際――
 家からこっそり持ってきたバナナを、カバンからスカートのポケットの中に、移動させる。
 その様子を見ていたキキ。
「なんでバナナが……」と、不思議なものを見る目で、ポケットに入ったバナナを見つめた。

「今日の帰り道、また仔猫に会うかもしれないと思って、家からコッソリ持ってきたの」
「なるほど! 主の心は、海より広いですね!」
「お、大げさだよ……」

 苦笑いしながら、バナナの入ったポケットを、ポンポンと叩く。
 よし――これで準備万端だ!

「ただ今より、任務開始。
 ネコ千景くんを、捜索します!」

 すると肩に乗ったキキが「おー」と、面倒くさそうな声を出した。
「なんで嫌ってる相手をワザワザ探さないといけないんだ」って心の声が聞こえる!
 だけど、その時。
 クンッと、スカートに重みがかかる。
 不思議に思って、視線を下にズラすと……

「にゃぉ……」
「黒猫……ハッ! まさか、千景くん!?」

 スカートにぶらさがる黒猫。
 それが千景くんだって、すぐに分かった。
 だって見てよ! この不機嫌マックスな顔!

「さすが主! アッパレです!」
「あはは……。まさか、こんなに早く見つかるなんて」

 わたしとキキが話をする中。
 ネコ千景くんが、スカートからポロッと取れる。
 そして力無く、地面に横たわった。

「千景くん、しっかり! 何があったの!?」

 千景くんを抱き抱える。
 すると、聞こえたのは……

 ぐぅぅぅぅ

 立派な、お腹の音。

「もう無理。腹減った……」
「あらら……」

 どうやら、ネコ千景くん。
 昨日から一度も人間に戻れず、飲まず食わずで過ごしていたみたいです。
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