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祓う千景くんとチキンなわたし

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「さっきの言葉にムカついたから、お前の顔面で、ツメといでやるからな」
「ひぃっ!?」

 ごめんなさい!と、ネコ千景くんに謝る。
 だけど正直、助かったかも。
 だってさっき、変な空気になったっていうか……。

 ――ありがと、小羽
 ――熱でもあんのか?

「~っ」

 ネコ千景くんにバレないように、赤くなった顔に、手をパタパタさせ風を送る。
 今日のわたし、なんか変だ!
 すると、その時。
 ワタワタ慌てるわたしとは反対に、ネコ千景くんが、のんびり呟いた。

「どうすっかなぁ。こんな姿じゃ、授業でられねぇし」
「あ、そっか!」

「まぁテキトーに時間つぶすか。
 小羽は戻れよ。そろそろチャイム鳴るぞ」
「え……あ、うん」

 確かに、ネコは教室に入れない。
 かと言って、千景くんを置いて、一人で教室に戻るのも……。

 う~ん、と悩んでいた、その時。
「そういえば」と、ネコ千景くん。

「今日はウルセー奴がいないな」
「“ウルセー奴”?」
「決まったんだろ――タヌキだよ」

 タヌキ――そう言われて、やっと気づく。
 そう言えば、キキがいない。
 一緒に登校したのに、どこではぐれたんだろう?
 まさか、迷子!?

「探しに行かなきゃ!」
「わざわざ妖怪を? やめとけやめとけ。
 どうせ、その辺で遊んでるっての」
「でも……」

 するとネコ千景くんが「お」、と。
 何かに気づいたようで、わたしの後ろを指さしている。

「探す手間が、はぶけたぞ。後ろみてみ」
「後ろ?」

 ネコ千景くんに言われて、後ろを向く。
 すると――

「に、ニワトリ!?――に、食べられてるキキ!?」

 なんと、ゾウほどある大きさのニワトリが、くちばしでキキをついばんでいた!
 しかも迫力ある仁王立ちで、わたし達を見下ろしている!?

「き、キキー!?
 ちょ、ちょっと! 千景くん! キキが食べられてるよ!!」
「不味そうなのに、よく食えるな」
「そーゆー問題じゃなくって!」

 するとネコ千景くんは「仕方ねぇな」と、ため息をつく。
 そして肉球のついた手で「滅」の構えをした。

「これが一石二鳥ってやつか。
 妖怪を二体まとめて消せるなんてな」

 すると食べられているキキが「小童! 覚えとけよ!」と怒鳴る。
 良かった! キキ、まだ大丈夫そう!

「だけどニワトリを、すぐ”滅”ってわけには……」
「またソレかよ。めんどくせぇなぁ」
「だ、だって!」

 もしかしたら、キキやカーくんみたいに、人間のせいで妖怪になったのかもしれない。
 それなら、祓うんじゃなくて、話を聞いてあげたい。
 それで、心が救われるなら――

 だけど……

『コケー! コケ!!』
「話が出来そうにないなぁ……」
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