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祓う千景くんとチキンなわたし

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「で、コッチの話って何でしょう?」

 わたしも「滅」の構えをする。
 すると千景くんに、すごい勢いで睨まれた。
 おぉ、怖いこわい!

「最近、学校に変な気が混じってないか?」
「変な気?」

「常に妖怪に見られてる、みたいな」
「う、う~ん?」

 深刻な顔をしている千景くん。
 だけど――ごめんなさい。
 わたし、全然きづいてません……。

「小羽が妖気を感じないなら、気のせいか」
「え?〝気づいてません〟って、声に出てた?」
「そのポカン顔を見りゃ、だいたい分かるっての。
 時間とって悪かったな」

 手をヒラリとさせ、わたしを置いて、一人去っていく千景くん。
 あっさりと話を終わらせた千景くんだけど……寄せた眉は、元に戻ってない。
 スゴイしかめっ面だ。

「ち、千景くん!」

 呼ぶと、少し先にいる千景くんが、振り返る。

「あのさ……大丈夫? いつもより、元気がないよ?」
「え……」

 千景くんは、少しだけ目を開いた。
 まるで「なんで分かった?」って、驚いたみたいに。

「わたし頼りないけど、もし千景くんが困ってるなら、相談に乗りたい!
 さっきは、その……助かったし、嬉しかった。ありがとう」

 ――もしかして友達になったの?
 ――そうだよ、わたし達、友達になったんだぁ!

 静ちゃんのあの言葉が、例えその場の勢いだとしても。
 わたしのことを「友達」って言ってくれて、嬉しかったの。

「だから千景くんも、なんでも話して!」
「小羽……」

 千景くんは進んだ道を戻って、わたしの所へ戻ってきた。
 そして「はぁ」と、なぜかため息をつく。

「な、なんでため息……?」
「いや……まさか小羽に、そんなこと言われるなんてな」
「心配されるの、嫌だった?」

 すると千景くんは「ブハッ」と吹き出した。
 口に手をあてて、クツクツ笑っている。

「心配されるのが嫌な奴なんて、いんの?」
「!」

 今……。
 千景くんの魔王のイメージが、一気になくなった。
 千景くんって、こんな風に笑うんだ。

「むしろ、逆だっての。
 たまには心配されんのも、悪くねーな」

 ポンッ

「ありがと、小羽」
「え、えっ」

 千景くんは、わたしの頭に優しく手を置いた。
 優しい手つき、優しい顔。
 教室の王子様でも、魔王様でもない千景くん。
 あれ?なんだか、わたし――

「おい小羽、どした? ボーッとしてるぞ」
「ふへ……?」

 ポケ~とした意識を、一気に呼び戻す。
 あれ?
 わたし今……
 まさか千景くんに、見惚れてた!?

「熱でもあんのか?」
「あ、ありあり、ありません!」

 千景くんが、わたしのおデコに手を置く。
 予想しなかったことに、思わず顔を赤くしてしまった。
 すると、それに気づいた千景くんも……

「お前、なんで赤くなってんだよ!」
「ち、千景くんこそッ」

「俺はいつも通りだろ!」
「そんな事ないよ! タコみたいに顔真っ赤だよ!」

「誰がタコだ!」と、再び魔王サマに戻った千景くん。
 すると、その時――

 ボワン

 いきなり白い煙が現れ、千景くんが呑み込まれる。
 しゅうぅぅ、と白い煙が晴れ、そこにいたのは――

「ニャー」
「ネコ千景くん……こんにちニャ」

 すっごくフキゲンそうな、黒猫ちゃん。
 ネコ千景くんの、ご登場だ。
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