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優しいカラスとクラスメイト

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 っていうか。
 ここまでカラスが攻撃してこなかったの、キセキじゃない?
 ふつうだったら、すでに攻撃してるよね?

「もしかして、待っててくれた……?」
『……(コクン)』

 え、本当に!?
 待っててくれたの!?
 そんな優しい妖怪いるの!?

「あ、ありがとう」
『……(コクン)』

 ちゃんと返事をしてくれるし、攻撃してくる様子はない。
 キキみたいに、人間に対して恨みを抱いてるわけじゃないのかも?

「ねぇキキ、千景くん。
 このカラスの妖怪は、悪い妖怪じゃないと思うよ。
 むしろ、すごく頭がいい気がする……っていうことは。
 さっき私たちが教室にいる時に、大きな声で鳴いたアレ。
 アレにも、なにか意味があるんじゃないかな?」

「ほう」と頷くキキ。
 一方で千景くんは、わざとらしく、ため息をはいた。

「はぁ~。だから嫌だってんだよ。
 妖怪と友達ごっこしたいなら、お前だけにしろ。俺を巻き込むな」
「む……。友達ごっこがしたいんじゃなくて、わたしは話を聞いてあげたいの!」

 だけど、わたしの言葉を聞く気はないらしい。
 千景くんがわたしのデコに、ビシッと人差し指をつきつけた。

「妖怪と人間は、相容れないんだよ。仲良くなれねーの。
 それに……。
 少しでも隙を見せたら、つけこまれんの。

 俺みたいにな」

「え?」

 今、なんて言った?
 つけこまれる? 千景くんが?
 聞き返そうとしたけど、千景くんはすでに手を構えていた。
 あれは……「滅」だ!

「おいカラス、今から俺の質問に答えろ。
 妖怪がかけた呪いを解く方法、お前は何か知っているか?」
『……』

 すると、カラスの妖怪は、静かに首を振った。
 それを見届けた千景くんは「そうか」と、手に力を込める。

「教えてくれて助かった。
 安らかに消え失せろ――滅!!」

 力強く、千景くんが唱えた時。
 カラスの妖怪は――いっさいの抵抗なく、目を閉じた。
 まるで、自分が消されるのを、受け入れてるかのように。

「やっぱり……」

 やっぱり、このカラスは他の妖怪とは違うよ!

「やめて、千景くん!!」
「――」

 手を構えたまま、「滅」の力を放出する千景くん。
 カラスは「滅」を受け、赤い炎に包まれた。
 あのカラスは、このまま炎に焼かれて、消えちゃうのかな?
 そんなの……ダメだよ!

 千景くんの祓いをやめさせようと、わたしは彼の正面に回る。
 そして両腕を広げ、千景くんを抱きしめた。

 ギュッ

「おわ!? お前、何してんだよ!」
「千景くん……お願いだから、やめて!」
「だからって、くっつくな!」

 千景くんは、体をねじって、わたしを振り落とそうとした。
 だけど、諦めない!
 わたしは絶対、この手を離さないからね!

 千景くんが「滅」の手をくずし、わたしを押し返す。
 すると力が薄れたのか、カラスを包んだ炎はすぐに消えた。
 よかった! 消化完了!
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