こわがりちゃんとサイキョーくん!

またり鈴春

文字の大きさ
上 下
17 / 40
優しいカラスとクラスメイト

しおりを挟む

「ねぇキキ。もしかして……」
「あの女、カラスの姿は視えてないでしょうが……声は聞こえていますね。
 だから、あんなに怯えているんでしょう」
「だよねぇ……」

 すると、その時。
 けたたましく、カラスが鳴いた。

『カあぁぁぁぁぁ!!』

 思わず耳をふさぎたくなるような――鼓膜が揺れるほどの、つんざく声。
 ビリビリと、空気がふるえた。
 その証拠に、窓がカタカタと小刻みに音を立てている。

「び、ビックリした……。
 って、休田静ちゃん!?」

 見ると、休田静ちゃんは、力なく机に伏せている。
 こっちに向いた彼女の顔を見ると――立派な白目。
 あのカラスの声に、恐怖で気を失ったんだ!

「ど、どどど、どうしよう! 助けないと……!」
「さあ主、出番ですね!
 いつものようにご活躍してください!」

 どこから出したか分からないセンスを出して、肩の上で踊るキキ。
 そりゃ、わたしだって、休田静ちゃんを助けたいよ。
 だけど……!

「わたしが行ったら、迷惑になるんじゃないかな……」
「主?」

「小羽花りんに助けられた休田静ちゃん」って、皆がからかわない?
 わたしのせいで、休田静ちゃんを傷つけたりしないかな。
 もし、わたしのせいで休田静ちゃんが泣くことがあったら……

 ――こわがりのくせに、余計なことをしないでよ!

「……っ!」

 ドクンと、体が大きく波打った。
 ただの想像なのに、体の内側で、痛いくらい心臓が反応している。

「主……? 大丈夫ですか?」
「キキ……、うん」

 大丈夫――そう返事をした時。
 教室の中が、さわがしくなる。

「キャー!」
「千景くんに、お姫さま抱っこしてもらえるなんてー!」
「静ちゃん、いいなぁ~!」

 へ?
 お姫さま抱っこ!?

 見ると、今も白目をむいた休田静ちゃんを、確かに千景くんがお姫様抱っこをしていた。
 す、すごい力持ち!

「体調悪いみたいだから、保健室に運んでくるね」

 そう言った千景くんは、クラスの輪を抜け、教室を後にした。
 わたしの目の前を通る時、意味ありげに、こちらを見ながら――

「キキ……、わたしたちも行こう」
「どこへですか?」
「じ、人命救助!」

 あの最恐の魔王サマ千景くんと二人きりになったら、休田静ちゃんが危ないよ!
 それに――

「ついて来いって……。千景くんに、そう言われた気がしたの」
「フン、主を簡単に呼びつけるとは。不敬な」

 そうして――
 私とキキ、千景くん。さらには、気を失っている休田静ちゃん。
 この四人は保健室……ではなく。
 人気のない、校舎裏に移動した。

 すると、どこからともなく。
 バサリと黒い羽をはばたかせ、あのカラスもやってきた。

「部外者が寝てんなら、ちょうどいいな」

 休田静ちゃんを降ろした千景くんが、首をゴキゴキッと鳴らす。
 あぁ、王子様ではなく、もう魔王様になってらっしゃる……。
 ハハハと、乾いた笑いを浮かべる私。
 その横で、キキと千景くんは、早くもにらみ合っていた。

「こんの、妖怪タヌキが」
「ふん。小童ニンゲンが」
  
 バチバチ――と。
 二人の間に、火花が見える。
 ちょっとちょっと、二人とも!

「今は、いがみ合ってる場合じゃないと思うんですけど!」

 仲裁するよう、二人の間に入る。
 すると二人は「ギギギ……」といがみ合った後、フンッと。
 同じタイミングで、反対方向を向いた。
 はぁ……、やっとカラスの事に集中できる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

天使くん、その羽は使えません

またり鈴春
児童書・童話
見た目が綺麗な男の子が、初対面で晴衣(せい)を見るやいなや、「君の命はあと半年だよ」と余命を告げる。 その言葉に対し晴衣は「知ってるよ」と笑顔で答えた。 実はこの男の子は、晴衣の魂を引取りに来た天使だった。 魂を引き取る日まで晴衣と同居する事になった天使は、 晴衣がバドミントン部に尽力する姿を何度も見る。 「こんな羽を追いかけて何が楽しいの」 「しんどいから辞めたいって何度も思ったよ。 だけど不思議なことにね、」 どんな時だって、吸い込まれるように 目の前の羽に足を伸ばしちゃうんだよ 「……ふぅん?」 晴衣の気持ちを理解する日は来ない、と。 天使思っていた、はずだった―― \無表情天使と、儚くも強い少女の物語/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

両思いでしたが転生後、敵国の王子と王女になりました!?

またり鈴春
児童書・童話
ハート国とスター国は、昔からライバル関係にあり、仲が良くなかった。そのためハート国の王女・ミアと、スター国の王子・レンも、互いをライバル視するけど…… 二人の中身は、なんと小学四年生の同級生だった! 実は、前世で両想いだった二人。ひょんなことから転生し、なぜか記憶もバッチリ残っていた。そのため、互いに密かに「会いたい」と願う日々…… だけど、ついに我慢の限界が来て!? 外見20歳、内面10歳による二人の、 ドキドキラブコメ×ファンタジー物語☆彡

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

処理中です...