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優しいカラスとクラスメイト
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しおりを挟む「ねぇキキ。もしかして……」
「あの女、カラスの姿は視えてないでしょうが……声は聞こえていますね。
だから、あんなに怯えているんでしょう」
「だよねぇ……」
すると、その時。
けたたましく、カラスが鳴いた。
『カあぁぁぁぁぁ!!』
思わず耳をふさぎたくなるような――鼓膜が揺れるほどの、つんざく声。
ビリビリと、空気がふるえた。
その証拠に、窓がカタカタと小刻みに音を立てている。
「び、ビックリした……。
って、休田静ちゃん!?」
見ると、休田静ちゃんは、力なく机に伏せている。
こっちに向いた彼女の顔を見ると――立派な白目。
あのカラスの声に、恐怖で気を失ったんだ!
「ど、どどど、どうしよう! 助けないと……!」
「さあ主、出番ですね!
いつものようにご活躍してください!」
どこから出したか分からないセンスを出して、肩の上で踊るキキ。
そりゃ、わたしだって、休田静ちゃんを助けたいよ。
だけど……!
「わたしが行ったら、迷惑になるんじゃないかな……」
「主?」
「小羽花りんに助けられた休田静ちゃん」って、皆がからかわない?
わたしのせいで、休田静ちゃんを傷つけたりしないかな。
もし、わたしのせいで休田静ちゃんが泣くことがあったら……
――こわがりのくせに、余計なことをしないでよ!
「……っ!」
ドクンと、体が大きく波打った。
ただの想像なのに、体の内側で、痛いくらい心臓が反応している。
「主……? 大丈夫ですか?」
「キキ……、うん」
大丈夫――そう返事をした時。
教室の中が、さわがしくなる。
「キャー!」
「千景くんに、お姫さま抱っこしてもらえるなんてー!」
「静ちゃん、いいなぁ~!」
へ?
お姫さま抱っこ!?
見ると、今も白目をむいた休田静ちゃんを、確かに千景くんがお姫様抱っこをしていた。
す、すごい力持ち!
「体調悪いみたいだから、保健室に運んでくるね」
そう言った千景くんは、クラスの輪を抜け、教室を後にした。
わたしの目の前を通る時、意味ありげに、こちらを見ながら――
「キキ……、わたしたちも行こう」
「どこへですか?」
「じ、人命救助!」
あの最恐の魔王サマ千景くんと二人きりになったら、休田静ちゃんが危ないよ!
それに――
「ついて来いって……。千景くんに、そう言われた気がしたの」
「フン、主を簡単に呼びつけるとは。不敬な」
そうして――
私とキキ、千景くん。さらには、気を失っている休田静ちゃん。
この四人は保健室……ではなく。
人気のない、校舎裏に移動した。
すると、どこからともなく。
バサリと黒い羽をはばたかせ、あのカラスもやってきた。
「部外者が寝てんなら、ちょうどいいな」
休田静ちゃんを降ろした千景くんが、首をゴキゴキッと鳴らす。
あぁ、王子様ではなく、もう魔王様になってらっしゃる……。
ハハハと、乾いた笑いを浮かべる私。
その横で、キキと千景くんは、早くもにらみ合っていた。
「こんの、妖怪タヌキが」
「ふん。小童ニンゲンが」
バチバチ――と。
二人の間に、火花が見える。
ちょっとちょっと、二人とも!
「今は、いがみ合ってる場合じゃないと思うんですけど!」
仲裁するよう、二人の間に入る。
すると二人は「ギギギ……」といがみ合った後、フンッと。
同じタイミングで、反対方向を向いた。
はぁ……、やっとカラスの事に集中できる。
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