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こわがり花りんと魔王サマ

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「はぁ……。なんか、疲れた一日だったね」

 まだ朝だけど――自分にツッコミながら、タヌキくんへ近づく。
 すると、気絶していたタヌキくんは目を覚まし、まっすぐわたしを見た。

「ねぇタヌキくん。今日は疲れたからさ。
 二人でゆっくり、お話しない?」
『!』

「わたし、タヌキくんの事をもっと知りたいな。
 そうだ! 名前を考えようよ。
 タヌキの最後の文字をとって、キキっていうのはどう?」
『……キキ?』

「そう。気に入った?」

 すると、タヌキくん――キキは、コクンと頷いた。
 かわいい仕草を見て、わたしの顔に、思わず笑みが浮かぶ。

「わたし、キキに会えて嬉しいよ。
 登校中、わたしに話し掛けてくれてありがとうね。
 初めは、どんな怖い妖怪化と思ったけどさ~」
『花りん……いや、あるじ!』
「……へ?」

 聞き間違いかな?
 いま「主」って聞こえたけど……。
 でも、朝から色々あって疲れたわたしは、急にスゴイ眠気におそわれる。

「ふわ~。いい天気だし、ひと眠りしようか。
 キキも一緒に。ね?」
『主は、もう僕が怖くないのですか……?』

 悲しそうに尋ねるキキ。
 そりゃ、初めは攻撃もしてくるし、怖かったけどさ。

「キキは優しいタヌキだって分かったから。
 だから――もう大丈夫でしょ? キキ」
『……はいッ』

 スリスリと、わたしの足に頬をスリ寄せるキキ。
 さっきまで「怖い妖怪」と思っていたのがウソみたい。

 あ。
 そう言えば、もう一人いたなぁ。
 最初と今で、イメージ違う人。
 もちろん――野良千景くんのこと。

 ――こっちを見ろ
 ――俺だって……こんな事は、二度とごめんだしな
 ――知り合いがやられるのを、黙って見てるわけないだろ

 優しい王子様のようで、最恐の魔王だった千景くん。
 妖怪に呪いをかけられた千景くん。
 なぜかネコ化してしまう千景くん――
 今日一日で、千景くんについて色々と知れたような……謎が深まったばかりのような。

「明日、色々きこう。だけど、嬉しいな……。
 妖怪が視える人に、初めて会えた!」

 思わず、腕の中にいるキキを、キュウッと抱きしめる。
 するとキキは、懐かしい人肌を思い出したのか――
 涙をポロリと、静かに落としていた。
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