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こわがり花りんと魔王サマ
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しおりを挟む「魔王……、じゃなくて。千景くん。
どういう呪いをかけられたか、聞いてもいい?」
「……さっき、俺を変な呼び方しなかったか?」
ブンブンと勢いよく、頭を左右に振る。
すると千景くんは、ジト目でわたしを見てきた。
だけど……「呪いねぇ」と。
テンションが下がったような声を出す。
「呪いについては、また今度、話してやるよ」
「え! でも、」
「――小羽」
大きな声を出すわたしに、千景くんは「静かにしろ」のポーズ。
「さっきからうるさい。授業中だぞ」
「え、あ……」
千景くんは人差し指をピンと伸ばし、自分の口にあてた。
カッコイイ千景くんがすると、なぜか王子様みたいにキマるから不思議――
なんて思っていたのが、運の尽き。
ボーッとしていたわたしの体は、急にぐらりと揺れ、地面に近づく。
え、まさか……わたし、こけたの!?
「わ、わわわあ!?」
パシッ
何かにつかまろうと手を伸ばしたら、千景くんの腕に当たる。
わたしは遠慮なく、千景くんの体に抱き着いた。
すると――
「げ……!?」
千景くんの顔が、みるみるうちに青くなる。
「ふぅ。なんとか、こけずにすんだ。
千景くん、ありがとう!――って。
千景くんこそ大丈夫? 顔が赤いよ?」
「う、うるせぇよ! きやすく俺にさわんな!」
「ひどい!」
仮にもクラスメイトなのに!
だけど悲しむわたしを横に、千景くんはビクッと体を震わせる。
そして――
「あ、やっべ……!」
それだけ言い残し、千景くんは、近くの草むらに隠れてしまった。
ん? なぜ草むらに隠れるの?
「千景くん……大丈夫?」
心配になって、急いでかけ寄る。
だけど、そこにいたのは、魔王でも王子でもなく――
「にゃーん」
「……ネコ?」
超絶かわいい、ネコがいましたとさ。
「ほうほう、ネコですか……」
真っ黒のネコを前に、腕を組んで考える。
学校に迷い込んだのかな?
それとも、誰かが家から連れてきちゃったとか!?
「でも首輪がないなぁ。あ、そういえば――」
確か、ネコってノドをマッサージすると気持ちいいんだっけ?
よし!
「ほーらほら、マッサージだよ~。
お、ゴロゴロっていい始めた」
ネコは、わたしの手にされたい放題。
無防備に体をねじったり、お腹を見せたりしてる。
か、かわいい……!
「いま探してる千景くんも、これくらい可愛さがあったら、怖くないのになぁ」
話し掛けると、ネコはとたんに、目を光らせた。
……ん?
この目の鋭さ、どこかで見覚えがある!
すると、まるで答え合わせをするように――ネコが口を開けた。
「悪かったな、可愛げなくて」
「……え?」
ネコなのに、日本語をしゃべってる。
それに、どこかで聞いたことがある声……
え、もしかして――!?
「まさか、このネコ……千景くん!?」
ネコを指さす手が、ガクガク震える。
だって、だってだって!
あの魔王サマ千景くんが、かわいいネコになって、喋ってるんだよ!?
なんで、どういうこと!?
そして、わたしのパニックがピークに達した時、
ボフンッ
白い煙と共にネコは消え、再び千景くんが姿を現した。
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