こわがりちゃんとサイキョーくん!

またり鈴春

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こわがり花りんと魔王サマ

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「あ~、いってぇなぁ。
 どうしてくれんだよ、これよぉ」

 しかも、すっごいガラの悪い魔王様になってらっしゃる!
 なに?
 一体なにがどうなって、こんなコトに!?

「そうか! わたしが二回もぶつかったから、千景くん、おかしくなっちゃったんだ!」
「あぁ?」
「ひー! ごめんなさい、ごめんなさい!」

 頭をペコペコ下げる。
 だけど千景くんは、謝るわたしの口を、まるで蚊をしとめるみたいに――パチンと叩いて、そのまま手でふさいだ。

「むぐ!?」
「もう授業は始まってんだよ。静かにしろ」
「わはひまひは(わかりました)……!」

 オニも黙るような、そんなコワさを千景くんから感じる。
 鋭く光る目に、危うく気絶しそうになった。
 あぁ、なんでこんな事に……。

 クラスのみんな。
 ごめんなさい。
 わたしは、ウソをついていました。
 今まで一番怖いものはみんなだと、そう思ってました。
 だけど、違います。
 わたしが一番怖いもの。
 それは――

「で、許してほしければ、俺の話を聞け。
 返事は”了解”――それだけだ」
「り、りょーかいぃ……」

 野良千景くん。
 この人が、わたしの一番怖い(×もの)(〇ひと)です。

 ◇

「俺は、とある呪いをかけられた。
 その呪いを解きたいんだ。
 でも、その方法が分からない。
 だから、俺の呪いを解く手伝いをしてほしい」
「……はぁ」

 現在、一時間目。
 校舎裏。
 わたしと千景くんは、授業を休んで話をしていた。
 すると、いきなりブッソ―な話題……。

 ゴクリ

 ただならぬ内容に、思わずツバを飲み込んでしまう。

「誰に、呪いをかけられたの?」
「俺に呪いをかけたのは、人じゃねぇ――妖怪だ」

「……へ?」
「妖・怪」

 クラッと、めまいがした。
 呪い、妖怪――
 出来れば、聞き間違いであってほしい……!

「わたしは、妖怪なんて視えないよ?」

 ここで「小羽花りんは妖怪が視えるヤバい奴」なんて思われたら、イヤだもん!
 だから、すぐサマ、知らないフリをした。
 だけど……

「妖怪が視えないヤツは、最初、”妖怪なんていない”って言うらしいぞ。
 ”視えない”って言う奴は、妖怪の存在を知ってるヤツだけだ。
 やっぱお前、妖怪が視えてるな?」
「!」

 しまった! カマをかけられた!
 この魔王、イケてる顔で、なんつーえげつない事を……!!

「み、視えて、」
「ウソついたら、今度の給食のデザート、お前の分をもらう」
「すみません、視えてます」

 くそ~!
 まさか給食のデザートを、人質にとられるなんて思わなかった!
 なんというアクドイことを……!

 ギギギと、奥歯をかみしめるわたし。
 そんなわたしを見て、魔王は「良かった」と、安心したように息を吐いた。
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