上 下
1 / 40
こわがり花りんと魔王サマ

1

しおりを挟む

『こっちに……、きて』

 う……。
 学校へ登校中の足が、ピタリと止まる。
 わたしは、いま――
 聞きたくない声を、キャッチしてしまった。

『こっちだよ……、こっち』

 まただ。
 また聞こえる。
 人ではない、あの声が!

『早く、こっち……。来て……』
「うぅ……」

 まるで、すぐ耳元で聞こえている感じ。
 ボソボソって、ささやいているような……。

「こういう時は……、聞こえないフリ!」

 ふたをするように、両耳に手をあてる。
 ふっふっふ。
 これなら「声」も聞こえな、

『きて……、来て……早く』

 な、なにー!?
 まさかの、ノーダメージ!?

「やっぱり、逃げるに限るー!!」

 どんな事をしても、声は消えてはくれない。
 わたしは、白旗を上げる代わりに。
「あ~」と耳にふたをして、うなりながら学校へダッシュした。

 あ~、朝から疲れたくないのに……!
 どうして毎回、「こうなる」のー!

 わたし、子羽(こわ)花りん(かりん)。
 小学四年生の十才。
 肩より少し長いこげ茶色の髪に、まあるい目がチャームポイントの、とっても元気な女の子!

……じゃなくて。

 本当は、何に対しても怖がりな、おくびょうものの女の子。
 名前をイジられて、

「子羽花りんは、こわがりちゃ~ん」

 なんて、クラスの皆から言われてる。
 本当は、からかわれるのはイヤ。
 だって恥ずかしいし、悲しいもん。

 でも、クラスの雰囲気を、悪くするのもイヤ。
「こわがりのくせに、ハンコ―してくるんだ?」とか言われて、目をつけられたくないし……。

 だからわたしは、みんなから何を言われても、言い返したりしない。
 ヘラヘラ笑って、なんとかやり過ごしてる。

 そう、わたしこと子羽花りんは、
 とっても怖がりな、ヘイワ主義しゃなのです!

 あ、友達はゼロ人だよ?
 みんなは、わたしを「からかいたい」けど「友達にはなりたくない」みたい。
 
 ほんと、勝手だよね。
 でも、ハンコ―しないよ!
 だって、ヘイワ主義しゃだからね!

 でも、「友達はほしい」っていつも思ってる。
 わたしだって、友達に話し掛けられたいし、お話したいよ。

 でも――

『来て……』
「もうー! わたしに話し掛けてくれるのは、どうして、いつも人間じゃないの~!?」

 耳にまとわりつく声を聞いて、ため息が出る。

 そう。
 わたし「だけ」に聞こえる、この声は……
 人の声じゃない。

「こわいよ~……!」

 耳と目を閉じて、走っていたわたし。
 当たり前だけど、きちんと前が見えなくて……。

 ドンッ

「い、いたた……」

 何か固いモノに、思い切りぶつかった。
 う~。本当、ツイてない……。
 もう一度ため息をつき、学校を目指す。
 だけど、その時。

『おい、こっちを見ろ』
「!?」

 今までとは違う、ハッキリした声。
 しかも……。

 すっごく、エラソーな言い方!

「”こっちを見ろ”、だって……?」

 見るワケないじゃん!
 だって見たら最後、絶対にからまれるもん!
 そんなのイヤ!
 わたしは無事に、学校に行きたいの!

「スルーだ、逃げろー!」

 足に力をこめて、全力ダッシュ!
 逃げても声は聞こえるかも――と思ったけど、不思議なことに。
 それ以降。
 あの声は、まったく聞こえなかった。

 ◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

超イケメン男子たちと、ナイショで同居することになりました!?

またり鈴春
児童書・童話
好きな事を極めるナツ校、 ひたすら勉強するフユ校。 これら2校には共同寮が存在する。 そこで学校も学年も性格も、全てがバラバラなイケメン男子たちと同じ部屋で過ごすことになったひなる。とある目的を果たすため、同居スタート!なんだけど…ナイショの同居は想像以上にドキドキで、胸キュンいっぱいの極甘生活だった!

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。 魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、 基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。 平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。 王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、 王都をめざすことになったリプルとペブル。 きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。 ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!? 表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

スペクターズ・ガーデンにようこそ

一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。 そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。 しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。 なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。 改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。

処理中です...