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新たなピンチ!
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「れ、連くん!
その言い方は……」
「だって、場合によっては、俺たちの事も全て筒抜けなわけでしょ?
それは、危ないと思うよ」
「危ない?」
「そうだなぁ、例えば……」
連くんは、私でも分かるように説明してくれる。
「転生した俺たちって、不思議生命体みたいなものだと思う」
「う、宇宙人、みたいな?」
「まあ、それに近い感じ。
妖精を作ることが出来る人が、不思議生命体を放っておくと思う?
普通は、詳しく調べたいって思うんじゃないかな?」
「つ、つまり……」
連くんは頷く。
口元に、ひくついた笑みを浮かべて。
「もしソフィアに捕まったら、俺たちも宇宙人みたいに実験されるかもって事」
「え、えええぇぇ!?」
いや、いやいやいや!
それは絶対イヤ!
だって、なんか怖すぎるし!!
「どうにかして逃げよう! 連くん!」
「逃げるのは無理だよ。
俺は王子で、ミアは王女だしね。
何をしてても、どこにいても目立っちゃうから……。
ソフィアは変装の名人らしいし。
俺たちの居場所は、常に把握されてると思っていいかもね」
「えぇ!?」
大声を出すと、丸めていた手の中から痛みが走る。
「ミア、うるさい」
どうやら、ネネちゃんに蹴られたみたい……。
一言謝って、深呼吸。
連くんとロロに、提案してみる。
「じゃあ、皆で逃げよう!」
「無理」
「無理だな」
うお! すぐに却下!?
ロロまで!
「俺たちが王子と王女の座を退いたとなれば、いつソフィアが、どういった形で、その座を狙うか分からない。
繰り返すけど。
さっきロロは、”ソフィアは変装の名人”と言っていた。
俺かミアに扮して城内に紛れ込むのは、そう難しい事じゃないと思う」
「う゛……」
それは、一番イヤかも。
私以外の人が「ミア王女」になりきって、国を動かすなんて。
考えただけで、ゾッとする。
ってか、そもそも「変装の名人」って所がすごい厄介じゃない!?
だって、今だってどこかの誰かに紛れてても、おかしくないって事だよね!?
「なんか、お化けみたいで怖くなってきた……」
「お化けって、ミアお前な……」
「だって~!」
神様、あんまりです!
異世界に飛ばすだけじゃなく、私に、こんな恐怖まで用意するなんてー!
元の平和な世界が懐かしいです!
帰りたいです!!
「うえぇ~……!」
弱気になった私に、連くんは「大丈夫だよ」と頭を撫でてくれる。
「とりあえず、ハート国とスター国が仲良くなったわけだし。
ソフィアの事を両国に話して、そして調査・監視する。
こうやって、ソフィアに自由を与えなければ、きっと世界は平和なままだよ。大丈夫」
「連くん……」
連くんが「大丈夫」と言うと、本当に大丈夫な気がするから不思議。
好きな人の言葉って、なんて勇気を貰えるんだろう……!
感動していると、ロロが手を挙げた。
「さっきの話に戻るけど」と添えて。
「さっき、俺がスパイをしていないって事実。それを証明するものは、ない」
「え」
ロロ、言い切っちゃうの!?
目の色を変えた連くんに、ロロは「でも!」と、眉にシワを寄せた。
「俺はミアを裏切ってない。
それだけは、信じて欲しい」
「ロロ……」
「俺は、ミアの純粋な優しさに、いつも……」
と、ロロがそこまで言った時だった。
私は、ロロの背後に、変な物を見る。
「ねぇロロ。
いつもの蝶々の羽は、どこに行ったの?」
「は?」
「だって、後ろに綺麗な白い羽が生えてるよ?
まるで天使みたいな」
「!!」
その時、ロロの顔がすごい険しくなる。
しかも――
「逃げろ!!!!」
大声を出して、ロロは素早く私達から遠ざかった。
「え、ロロ!?」
心配する私。
だけど、次に聞こえたのは、
「美亜、危ない!!」
連くんの、大きな声。
それに、私を抱きしめる、強い力。
「連くん!?」
「また黒い塊だ!俺たちを狙ってる!」
「えぇ!?」
見ると、私たちの真上に、いつ現れたか分からない黒い塊があった。
それは、確かに校舎裏で見たものと似ていて……。
咄嗟に私の頭が、ズキズキと唸り始める。
「痛っ!」
「美亜! 大丈夫!?」
「わ、私の事は、いいの……。
それより!」
ロロを見る。
すると、ロロは天使の大きな羽に包み込まれ――
シュンッ
そして、羽もろとも姿を消した。
「え、ロロ……?」
呆然とする私。
だけど、そんな私にも危険は迫る。
黒い塊が、
もうすぐそこまで、
迫ってきていた。
「きゃあ!?」
「絶対に俺から手を離さないで、美亜!」
「うんッ!」
ギュッ、と。
私たちは、抱きしめ合う。
離れないように、強く強く。
すると、黒い塊は、まるで私たちを食べるように呑み込んだ。
そして――
コチ、コチ
一定のリズムで、大きな時計が時を刻む。
だけど、その場には、誰もいない。
今まで賑わっていた王子の部屋は、突如として――
もぬけの殻になったのだった。
その言い方は……」
「だって、場合によっては、俺たちの事も全て筒抜けなわけでしょ?
それは、危ないと思うよ」
「危ない?」
「そうだなぁ、例えば……」
連くんは、私でも分かるように説明してくれる。
「転生した俺たちって、不思議生命体みたいなものだと思う」
「う、宇宙人、みたいな?」
「まあ、それに近い感じ。
妖精を作ることが出来る人が、不思議生命体を放っておくと思う?
普通は、詳しく調べたいって思うんじゃないかな?」
「つ、つまり……」
連くんは頷く。
口元に、ひくついた笑みを浮かべて。
「もしソフィアに捕まったら、俺たちも宇宙人みたいに実験されるかもって事」
「え、えええぇぇ!?」
いや、いやいやいや!
それは絶対イヤ!
だって、なんか怖すぎるし!!
「どうにかして逃げよう! 連くん!」
「逃げるのは無理だよ。
俺は王子で、ミアは王女だしね。
何をしてても、どこにいても目立っちゃうから……。
ソフィアは変装の名人らしいし。
俺たちの居場所は、常に把握されてると思っていいかもね」
「えぇ!?」
大声を出すと、丸めていた手の中から痛みが走る。
「ミア、うるさい」
どうやら、ネネちゃんに蹴られたみたい……。
一言謝って、深呼吸。
連くんとロロに、提案してみる。
「じゃあ、皆で逃げよう!」
「無理」
「無理だな」
うお! すぐに却下!?
ロロまで!
「俺たちが王子と王女の座を退いたとなれば、いつソフィアが、どういった形で、その座を狙うか分からない。
繰り返すけど。
さっきロロは、”ソフィアは変装の名人”と言っていた。
俺かミアに扮して城内に紛れ込むのは、そう難しい事じゃないと思う」
「う゛……」
それは、一番イヤかも。
私以外の人が「ミア王女」になりきって、国を動かすなんて。
考えただけで、ゾッとする。
ってか、そもそも「変装の名人」って所がすごい厄介じゃない!?
だって、今だってどこかの誰かに紛れてても、おかしくないって事だよね!?
「なんか、お化けみたいで怖くなってきた……」
「お化けって、ミアお前な……」
「だって~!」
神様、あんまりです!
異世界に飛ばすだけじゃなく、私に、こんな恐怖まで用意するなんてー!
元の平和な世界が懐かしいです!
帰りたいです!!
「うえぇ~……!」
弱気になった私に、連くんは「大丈夫だよ」と頭を撫でてくれる。
「とりあえず、ハート国とスター国が仲良くなったわけだし。
ソフィアの事を両国に話して、そして調査・監視する。
こうやって、ソフィアに自由を与えなければ、きっと世界は平和なままだよ。大丈夫」
「連くん……」
連くんが「大丈夫」と言うと、本当に大丈夫な気がするから不思議。
好きな人の言葉って、なんて勇気を貰えるんだろう……!
感動していると、ロロが手を挙げた。
「さっきの話に戻るけど」と添えて。
「さっき、俺がスパイをしていないって事実。それを証明するものは、ない」
「え」
ロロ、言い切っちゃうの!?
目の色を変えた連くんに、ロロは「でも!」と、眉にシワを寄せた。
「俺はミアを裏切ってない。
それだけは、信じて欲しい」
「ロロ……」
「俺は、ミアの純粋な優しさに、いつも……」
と、ロロがそこまで言った時だった。
私は、ロロの背後に、変な物を見る。
「ねぇロロ。
いつもの蝶々の羽は、どこに行ったの?」
「は?」
「だって、後ろに綺麗な白い羽が生えてるよ?
まるで天使みたいな」
「!!」
その時、ロロの顔がすごい険しくなる。
しかも――
「逃げろ!!!!」
大声を出して、ロロは素早く私達から遠ざかった。
「え、ロロ!?」
心配する私。
だけど、次に聞こえたのは、
「美亜、危ない!!」
連くんの、大きな声。
それに、私を抱きしめる、強い力。
「連くん!?」
「また黒い塊だ!俺たちを狙ってる!」
「えぇ!?」
見ると、私たちの真上に、いつ現れたか分からない黒い塊があった。
それは、確かに校舎裏で見たものと似ていて……。
咄嗟に私の頭が、ズキズキと唸り始める。
「痛っ!」
「美亜! 大丈夫!?」
「わ、私の事は、いいの……。
それより!」
ロロを見る。
すると、ロロは天使の大きな羽に包み込まれ――
シュンッ
そして、羽もろとも姿を消した。
「え、ロロ……?」
呆然とする私。
だけど、そんな私にも危険は迫る。
黒い塊が、
もうすぐそこまで、
迫ってきていた。
「きゃあ!?」
「絶対に俺から手を離さないで、美亜!」
「うんッ!」
ギュッ、と。
私たちは、抱きしめ合う。
離れないように、強く強く。
すると、黒い塊は、まるで私たちを食べるように呑み込んだ。
そして――
コチ、コチ
一定のリズムで、大きな時計が時を刻む。
だけど、その場には、誰もいない。
今まで賑わっていた王子の部屋は、突如として――
もぬけの殻になったのだった。
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