両思いでしたが転生後、敵国の王子と王女になりました!?

またり鈴春

文字の大きさ
上 下
26 / 29

え、魔法!?

しおりを挟む
 次に、目を覚ました時。
 私の前には、連くんがいた。

「美亜、平気?」
「あ……、うん!」

 連くんの姿を見て、ホッとする。
 小学生じゃない、二十歳のレン王子だったから。

「本当に、来れたんだね。異世界に」
「うん! やっぱり神様はいるのかな?」
「お願いを叶えてくれたし、居るんだよ。きっと」

 それに、神様がいてくれるなら心強い――
 そう思って、希望を抱いたのだけど。
 連くんは「う~ん」と、渋い顔をして腕を組んだ。

「美亜の話も聞いて、俺も心の中で”神様あて”に色々言ってみたんだけど……。
 ダメだね。
 うんともすんとも言わないや」
「え、神様に色々言ってみたの?
 何を?」

「……」
「連くん?」

 少し無言になった連くんは、話を逸らした。
「それにしても、ここはどこかな?」なんて、わざとらしく。

「あの、連くん?
 もしかして、私に言えないようなお願い事?」

 だったら、かなり気になるんだけど!
 すると連くんは、少しずつ顔を赤くして……
 なんと、コクリと頷いた。
 そして、何を言うかと思えば。

「むしろ美亜にだから、言えないような事……だよ」
「え!?」

 そんな意味深なことを言われると、ますます気になるー!
 だけど、忘れてはいけない人物が、もう一人。
 それは、連くんの手の中から声を出した。

「だー! もう!
 イチャイチャするな!
 こっちは傷心中なんだっての!
 ちょっとは気を遣ってよ! 特にミア!!」
「はい! すみません、ネネちゃん!」

 いつもの妖精サイズに戻ったネネちゃんが、勢いよく手の中から飛び出してきた。
 すごい顔で、私を見降ろしてる……!

 かと思えば「で?」と。
 わざと空気を変えるような、明るい声色を出す。

「あそこにいるのは誰?」

「へ?」
「あ、本当だ」

 ネネちゃんが指さす先に、その人はいた。
 まるで、小学生の私達と同じくらいの身長。
 丸い大きなメガネに、長いフード付きのマントを被っている。
 髪はボブくらいある。
 じゃあ、女の子かな?
 それにしても……。
 えっと、どちら様?

「あの、どうしたの? 迷子?」
「……」

 メガネの奥の瞳と、視線があった。
 すぐに逸らされたけど。

「どうしたのかな?
 見たところ、迷子だよね?」
「いや、迷子っていうか……。
 ここって、荒野じゃない?
 家も人も、誰も見当たらないよ?」
「あ、確かに……」

 見渡しても、廃墟が続くばかり。
 霧も出ているようで、道の先なんて見えやしない。

「ちょっと神様とやら~。
 私たちを、一体どこに飛ばしたの?」

 眉間に皺を寄せて、ネネちゃんが不満を口にする。
 すると、なぜか目の前のフードの女の子が喋った。

「すみません」と。

「ん? 今、あの子しゃべった?」

 すると聞き間違いじゃなかったのか。
 フードの子は、もう一度謝った。

「すみません」
「あ、あの……、何に対して謝ってるの?」

 私が聞くと、フードの子は、少しずつ私たちに近寄ってきた。
 警戒した連くんが、スッと私を隠すように目の前に立ってくれる。

「連くん、大丈夫だよ。
 それに、もし連くんに何かあったら、」
「いい。美亜を少しでも危険な目に遭わせたくないんだ」
「連くん……」

 王子様がお姫様に言うみたいなセリフ!
 こんな状況なのに、胸がドキドキする……!

「って、本当に王子と王女でしょ!
 あ~もう!
 その雰囲気をツツシメって言ってるの!」

 イライラしたネネちゃんが、怒りの矛先を、フードの子に変える。

「ほら、そこのフード女も!
 さっさと自己紹介をしてよね!」
「ね、ネネちゃん!」

 まるで、どこかのヤンキーみたいな口ぶりだよ!
 可愛いヒラヒラのドレスを着てるんだから、少しは自重して!

 だけど、フードの子は気にしてないみたい。
 むしろネネちゃんに言われた通り、フードをパサリととった。
 そこには、まだ幼い女の子の顔があって……。
 だけど、幼い顔に似合わない深刻な表情。
 その顔に、妙に胸がドキドキする。

「まだ子供、だよね?
 えっと、さっきから謝ってるけど、何に対して謝ってるの?」
「その、あの……色々な事に、です」
「例えば、どんな?」

 女の子に近づいて、膝を地面につけて視線を合わせる。
 連くんが「美亜!」と注意してくれたけど……、なんだか。
 この子は、敵じゃない気がするの。

「不思議なんだけど、私をずっと見守ってくれてたような。
 この子から、そんな雰囲気を感じるの」
「!」

 すると女の子は、目を見開いて、すごく嬉しそうに顔を緩ませた。
 そしてガシッと、私の両手を握る。
 しかもブンブンと振って……
 って、痛い痛い!

「み、見た目に寄らず、力が強いね!?」
「はい! だって私、見た目はこんなですけど、中身は二百歳のおばあちゃんですから!」

「へ?」
「あ、やべ」

 女の子は、フードを再びかぶろうとしたので、急いで阻止をする。

「どういうこと?」
「え、えへへ……」

 すると女の子により明かされた、衝撃の事実。
 その事実に、私も連くんも――
 驚きすぎて、腰がぬけるかと思った。

「実は私、イコール国の女王をやってます……。
 名前を、フラットといいます」
「イコール国?」

 復唱すると、連くんも「?」と首をかしげ、分からない様子だった。
 私も分からない。
 だって、今まで聞いたことないもん。

「まさか、子供の遊びに付き合わされてる……?」
「ま、真面目に話してるので、真面目に聞いてください!」
「は、はい!」

 どうにも聞いてほしいみたい……。
 妖しさ百パーセントだけど、最後まで聞いてあげるとしよう。

「実はこの異世界において、イコール国の女王のみ、魔法が使えます。
 それは、世界の平和を守るためです」
「平和?」

「そう。国同士は、必ずイコール――つまり平等じゃないといけない。
 二つの国をシーソーに乗せて、どちらかが傾くと、それは不満になり、やがて戦争に繋がる。
 その悪循環を阻止するため、魔法を使える私が、国々の平等を守るため、日々ヒッソリと活動しているのです」
「つまり……」

 イコール国は、各国の敵でも味方でもない。
 女王が魔法を使い、日々の平和を作ってる……ってこと?

 簡単にまとめると、女の子――フラット王女は頷いた。
 だけど、どうして今まで秘密に?

「国の存在まで隠さなくても、いいじゃないの?」
「国、というほどの物でもないんです。
 だって、国民は女王の私――たった一人ですもん」

「え、えー!?」
「国が貧乏すぎて、皆が他国へ出稼ぎに言ったきり、帰らなくなりまして。
 今年、無事に国民ゼロとなりました……ハハ」

 まぁ、どうせ世界に認知されてない国なんで、いいんですけどね――というフラット王女の表情は暗い。

「でも、イコール王国の事は、出稼ぎに出た国民から情報が洩れるんじゃないの?
 どうして、今まで隠し通せたの?」

 連くんが、フラット王女に聞く。
 あ、言われてみれば、確かに。
 だけどフラット王女は「カンタンですよ」と笑う。

「国を出た時点で、魔法を使って記憶を消してますから。
 誰もイコール国の事を覚えてません」
「すごい効果があるんだね。君の魔法は……」

 連くんが「ほう」と感心する中、フラット王女は頷く。

「当たり前ですよ。
 そこのミア王女が私を”神様”と勘違いするくらい、私の魔法はすごいんですから!
 それに、タイムスリップさせたり、年齢を変えたりも、お茶の子さいさいです!」

「え?」
「ん?」

 今、なんて?
 タイムスリップっていった?
 するとフラット王女も「あ」と言って、口を滑らした事に気付いたようだ。
「え~っとぉ」と、逃げるしぐさをする。

 まぁ、もちろん。

 ガシッ

「逃がさないからね?」
「どういう事か、説明してもらおうか?」

「は、はひ……」

 私と連くんにより、フラット王女は捕まる。
 そして私と連くんが、この世界にきた理由を――洗いざらい、全て話してくれたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

カラフルマジック ~恋の呪文は永遠に~

立花鏡河
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞】奨励賞を受賞しました! 応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます! 赤木姫奈(あかぎ ひな)=ヒナは、中学二年生のおとなしい女の子。 ミステリアスな転校生の黒江くんはなぜかヒナを気にかけ、いつも助けてくれる。 まるで「君を守ることが、俺の使命」とばかりに。 そして、ヒナが以前から気になっていた白野先輩との恋を応援するというが――。 中学生のキュンキュンする恋愛模様を、ファンタジックな味付けでお届けします♪ ★もっと詳しい【あらすじ】★ ヒナは数年前からたびたび見る不思議な夢が気になっていた。それは、自分が魔法少女で、 使い魔の黒猫クロエとともに活躍するというもの。 夢の最後は決まって、魔力が取り上げられ、クロエとも離れ離れになって――。 そんなある日、ヒナのクラスに転校生の黒江晶人(くろえ あきと)がやってきた。 ――はじめて会ったのに、なぜだろう。ずっと前から知っている気がするの……。 クールでミステリアスな黒江くんは、気弱なヒナをなにかと気にかけ、助けてくれる。 同級生とトラブルになったときも、黒江くんはヒナを守り抜くのだった。 ヒナもまた、自らの考えを言葉にして伝える強さを身につけていく。 吹奏楽を続けることよりも、ヒナの所属している文芸部に入部することを選んだ黒江くん。 それもまたヒナを守りたい一心だった。 個性的なオタク女子の門倉部長、突っ走る系イケメンの黒江くんに囲まれ、 にぎやかになるヒナの学校生活。 黒江くんは、ヒナが以前から気になっている白野先輩との恋を応援するというが――。 ◆◆◆第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です◆◆◆ 表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

処理中です...