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戻って来た!?校舎裏
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ドサッ
「きゃあ!」
体に衝撃が加わり、硬く閉じていた目を開ける。
すると――
「美亜、平気?」
「れ、連くん……?」
いつもの優しい笑みをした連くんが、私を抱きしめていた。
しかも、驚くことに。
「え……大人じゃ、ない?」
「うん。俺も思った。
小学生の俺たちに戻ってるよね。
しかも、ここは……」
連くんが周りを見る。
私も、同じようにグルリと一面を見渡した。
すると、見覚えのある景色だと気づく。
少し伸びた草。
外に剥き出しに設置された、体育倉庫。
そして日陰が涼しい、校舎の大きな影。
そう。ここは、私たちが通っていた学校。
しかも、連くんに呼び出された、あの校舎裏だった。
「ど、どういう事? 夢?」
「その場合、どっちが夢なのかな?
異世界が夢?
それとも今、俺たちが学校にいるのが夢?」
そ、そう言われれば……!
どっちなんだろうと考えていると、大きな音でチャイムが鳴った。
それに合わせて、皆が移動する音が聞こえる。
「昼休み終わったー!」
「次なんだっけ?」
「体育が良かったなー」
賑やかな声が、色んな方向から聞こえてくる。
これが夢だとは、考えにくい。
すると連くんが突然。
自分の手を、キュッとつねった。
「れ、連くん!?」
「うん。ちゃんと痛いね。
美亜、ここは夢じゃないみたいだよ」
「え……」
「どうやら俺たちは、“死んだから異世界に行った”ワケじゃないらしい」
「まだ生きてるって事?」
「うん、そうだよ。
俺も美亜も、死んでない。
死んでなかったんだ。
生きてるんだよ」
「うそ、本当に……っ?」
信じられない事実に、
願ってやまなかった事実に直面して。
涙が、ポロポロと溢れた。
そんな、まさか……。
また、小学生の連くんと会えるなんて。
また、学校で過ごせるなんて。
「うぅ、連くん~!」
「美亜、良かったね。本当に、良かった」
「うんッ!」
お互いに抱きしめあって、お互いの存在を確認する。
連くんの温かさが伝わって来て……。
自然と、涙がこぼれた。
「連くん、連くん……っ」
すると、突然に連くんが「あ」と声を上げる。
そして、何を言うかと思えば――
「そう言えば、まだ美亜に言ってなかった」
「え、なにを……?」
「異世界で、約束したでしょ?」
「約束……」
――連くん、校舎裏で何を言おうとしてたの?
――美亜こそ。手紙に、こう書いてあった。「次に再会した時、連くんに“好き”って伝えたい」って
――じゃあお互い、次に会った時の楽しみにしておこうか
「あ」
そう言えば、そうだった。
パーティの日に会ったはいいけど、それどころじゃなかったしね。
この約束のおかげで、私は「絶対にまた連くんと会う」って頑張れたんだっけ。
「連くん……」
「美亜」
二人で、見つめ合う。
連くん、小学生の連くん。
久しぶり過ぎて、顔をみただけで、泣けて来ちゃう。
「う~っ」
「美亜は、泣き虫だね」
「だってぇ……っ」
でも、本当に良かった。
きっと、こっちが本当で、異世界が夢だったんだ。
妙にリアルな夢だったし、私も連くんも同じ夢の記憶が残っているのが謎だけど。
でも、いいんだよね?
あの世界は夢だったって……
そう思って、いいんだよね?
「美亜、俺は……」
「う、うん」
連くんが、口の形を変える。
私に、あの二文字を言うために――
私は、ドキドキ鳴りっぱなしな心臓を落ち着かせようと、服の上から心臓がある辺りを押さえた。
だけど、その時に気付く。
自分の手が、何かを握っている事に。
「美亜、俺ね」
「ちょ、ちょっと待って連くん!」
「え」
ズリッと肩透かしを食らった連くんは、私を見てギョッとする。
だって、私があまりにも青い顔をしていたから。
「み、美亜? どうしたの!?」
「連くん……、これ……」
「え?」
連くんの視線が下がって……。
そして、目に写る。
私の手の中にいる妖精。
ネネちゃんの姿が。
「え!? ネネ!?」
「んぅ……?」
連くんの驚いた声で、目を開けたネネちゃん。
私、今まで片手で持っちゃってたけど、ネネちゃん潰れてないかな!?
ワタワタする私。
すると、ネネちゃんは問題なさそうに目をこすった。
「ふああ~。よく寝た。
あれ、レンにミア。
なんか小さくなった?」
「十歳に戻ったからね。
でも、ネネだって……」
「え?」
連くんに指摘されて、ネネちゃんは自分の姿を見る。
すると、今までの半分の大きさになっている自分を見て、声にならない声を出していた。
「え、なにこれ!?
ちょ、待って待って!
私、どうなってるの?
ロロ~!」
だけど、ネネちゃんが泣いて縋りつくはずのロロはいない。
あ。
待って、大事なことを忘れてたけど……。
ここにネネちゃんが居るって事は、あの異世界は夢じゃなかったって事だよね?
ってことは。
異世界が夢じゃないなら――
「ねぇ連くん……。
もしかして、ロロって連れていかれた?」
「そうだね。
ここにネネがいる限り、あの世界も……本当に存在する現実なんだと思う。
という事は……」
私たちの目の前で、ロロはいなくなった。
羽と一緒に、消えてしまったんだ。
「きゃあ!」
体に衝撃が加わり、硬く閉じていた目を開ける。
すると――
「美亜、平気?」
「れ、連くん……?」
いつもの優しい笑みをした連くんが、私を抱きしめていた。
しかも、驚くことに。
「え……大人じゃ、ない?」
「うん。俺も思った。
小学生の俺たちに戻ってるよね。
しかも、ここは……」
連くんが周りを見る。
私も、同じようにグルリと一面を見渡した。
すると、見覚えのある景色だと気づく。
少し伸びた草。
外に剥き出しに設置された、体育倉庫。
そして日陰が涼しい、校舎の大きな影。
そう。ここは、私たちが通っていた学校。
しかも、連くんに呼び出された、あの校舎裏だった。
「ど、どういう事? 夢?」
「その場合、どっちが夢なのかな?
異世界が夢?
それとも今、俺たちが学校にいるのが夢?」
そ、そう言われれば……!
どっちなんだろうと考えていると、大きな音でチャイムが鳴った。
それに合わせて、皆が移動する音が聞こえる。
「昼休み終わったー!」
「次なんだっけ?」
「体育が良かったなー」
賑やかな声が、色んな方向から聞こえてくる。
これが夢だとは、考えにくい。
すると連くんが突然。
自分の手を、キュッとつねった。
「れ、連くん!?」
「うん。ちゃんと痛いね。
美亜、ここは夢じゃないみたいだよ」
「え……」
「どうやら俺たちは、“死んだから異世界に行った”ワケじゃないらしい」
「まだ生きてるって事?」
「うん、そうだよ。
俺も美亜も、死んでない。
死んでなかったんだ。
生きてるんだよ」
「うそ、本当に……っ?」
信じられない事実に、
願ってやまなかった事実に直面して。
涙が、ポロポロと溢れた。
そんな、まさか……。
また、小学生の連くんと会えるなんて。
また、学校で過ごせるなんて。
「うぅ、連くん~!」
「美亜、良かったね。本当に、良かった」
「うんッ!」
お互いに抱きしめあって、お互いの存在を確認する。
連くんの温かさが伝わって来て……。
自然と、涙がこぼれた。
「連くん、連くん……っ」
すると、突然に連くんが「あ」と声を上げる。
そして、何を言うかと思えば――
「そう言えば、まだ美亜に言ってなかった」
「え、なにを……?」
「異世界で、約束したでしょ?」
「約束……」
――連くん、校舎裏で何を言おうとしてたの?
――美亜こそ。手紙に、こう書いてあった。「次に再会した時、連くんに“好き”って伝えたい」って
――じゃあお互い、次に会った時の楽しみにしておこうか
「あ」
そう言えば、そうだった。
パーティの日に会ったはいいけど、それどころじゃなかったしね。
この約束のおかげで、私は「絶対にまた連くんと会う」って頑張れたんだっけ。
「連くん……」
「美亜」
二人で、見つめ合う。
連くん、小学生の連くん。
久しぶり過ぎて、顔をみただけで、泣けて来ちゃう。
「う~っ」
「美亜は、泣き虫だね」
「だってぇ……っ」
でも、本当に良かった。
きっと、こっちが本当で、異世界が夢だったんだ。
妙にリアルな夢だったし、私も連くんも同じ夢の記憶が残っているのが謎だけど。
でも、いいんだよね?
あの世界は夢だったって……
そう思って、いいんだよね?
「美亜、俺は……」
「う、うん」
連くんが、口の形を変える。
私に、あの二文字を言うために――
私は、ドキドキ鳴りっぱなしな心臓を落ち着かせようと、服の上から心臓がある辺りを押さえた。
だけど、その時に気付く。
自分の手が、何かを握っている事に。
「美亜、俺ね」
「ちょ、ちょっと待って連くん!」
「え」
ズリッと肩透かしを食らった連くんは、私を見てギョッとする。
だって、私があまりにも青い顔をしていたから。
「み、美亜? どうしたの!?」
「連くん……、これ……」
「え?」
連くんの視線が下がって……。
そして、目に写る。
私の手の中にいる妖精。
ネネちゃんの姿が。
「え!? ネネ!?」
「んぅ……?」
連くんの驚いた声で、目を開けたネネちゃん。
私、今まで片手で持っちゃってたけど、ネネちゃん潰れてないかな!?
ワタワタする私。
すると、ネネちゃんは問題なさそうに目をこすった。
「ふああ~。よく寝た。
あれ、レンにミア。
なんか小さくなった?」
「十歳に戻ったからね。
でも、ネネだって……」
「え?」
連くんに指摘されて、ネネちゃんは自分の姿を見る。
すると、今までの半分の大きさになっている自分を見て、声にならない声を出していた。
「え、なにこれ!?
ちょ、待って待って!
私、どうなってるの?
ロロ~!」
だけど、ネネちゃんが泣いて縋りつくはずのロロはいない。
あ。
待って、大事なことを忘れてたけど……。
ここにネネちゃんが居るって事は、あの異世界は夢じゃなかったって事だよね?
ってことは。
異世界が夢じゃないなら――
「ねぇ連くん……。
もしかして、ロロって連れていかれた?」
「そうだね。
ここにネネがいる限り、あの世界も……本当に存在する現実なんだと思う。
という事は……」
私たちの目の前で、ロロはいなくなった。
羽と一緒に、消えてしまったんだ。
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