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妖精の能力!?
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「そこまでだよ、トードー」
まるで透き通るような。
真っすぐな意思を持った声が、広く遠くまで響き渡る。
「こちらのミア王女は、客人だ。
手荒な真似はしないように」
「あ……っ」
声の主を見ると、その人は――
私がずっと、会いたかった人。
会いたくて会いたくて、仕方のなかった人。
必ず再会を果たすと約束した、連くんだった。
「れ、」
「初めまして、ミア王女。
お怪我はありませんか?」
「あ……」
そうか、私と連くんって、王子と王女としては、初対面なんだっけ?
危ない。
「連くん」って、思わず言いそうになっちゃった!
「だい、じょうぶです……っ」
「それなら良かった。
部下が手荒な真似をして、申し訳ありません」
「い、いえ……」
今の連くんに、思わず目を奪われる。
白いマント、大人びた顔つき、喋り方。
そして、この場の主導権を握る、そんな強いオーラ。
連くん、本当に王様なんだ。
「カッコイイ……」
ぽつりと呟いた言葉は、連くんの耳に届いたか、届いてないか。
それを確認する前に、なんと私は――
グイッ
連くんに、抱きしめられてしまった。
「え、え!?」
「ミア王女、早くこうしたかった」
「えー!?」
スター国の人も、ハート国の人も見ている中で、思い切りハグ!
連くん、何を考えているの!?
絶対にブーイングが飛んでくる――と思いきや。
のっぽさんが「やはり言い伝えは本当だったのですね」と。
心ここにあらずのような、そんな力のない声で呟いた。
「スター国には昔から言い伝えがある。
代々の王子が、心の底から惹かれる女性と生涯を共にすることで、スター国が未来永劫に繁栄すると。
そして、その惹かれる女性というのは――妖精を従えている者が多かった、と」
「え……、どゆこと!?」
つまり、え?
やっぱり分からない!
連くんを見ると笑うだけで、何も言わない。
ロロを見ても、お手上げのポーズをしている。
ということは、きっとロロも知らない事……なんだろうな。
「でも……」
誰からも、ブーイングが来ないなら。
こんな夢みたいな現実を、噛み締めてもイイかなって――
そんな事を思った。
ギュッ
「私も、お会いしたかったです。
レン王子!」
半泣きになりながら、どさくさに紛れて、連くんを抱きしめ返す。
すると連くんは「うん」と、私を抱きしめる手に、力を込めた。
「ミア王女、俺もだよ。
ずっとずっと、会いたかった」
「はい……っ!」
喜びでいっぱいになった私の頭を、連くんが撫でる。
その時の手つきが優しくて、本当に私を大事に思ってくれてるようで。
堪えていた涙が、私の目から零れ落ちた。
「ミア王女」
「レン王子……っ」
ハート国とスター国の人が見ている中、私と連くんは抱きしめあっていた。
敵国同士の、ハートとスター。
その王女と王子が、こうして抱きしめあっているのに……誰一人ブーイングをしてこない。
スター国に代々からある言い伝えのおかげで――
「ねぇレン王子。
言い伝えを、もう一度教えてほしいです」
「簡単に言うとね、スター国の王子が大好きな人と結婚すると国が栄える、って事」
「大好きな人と、結婚……」
れ、連くんったら!
そんな事を、こんなおおやけの場で!
照れながら嬉しがる私を、ロロがしかめっ面で見た。
そして連くんに近づき、誰にも聞こえないよう、小さな声で話す。
「なぁレン、場所を変えた方が良くないか?」
「なんで?」
「いや、ミアの様子を見るに、いつ本音を漏らすか分かんねーぞ。
連くん、この前ぶりだね。あれからずっと会いたかったんだよ~、とか」
「……」
ロロが、私の声を真似して喋ると、連くんはピタリと固まった。
「今の、全然、美亜には似てないけど……。
ここはロロの言う通りにしようかな」
「え、移動するの? でも、どこに?」
連くんの腕の中から、顔を上げた私。
すると優しい連くんの目と、バッチリ視線が交わっった。
「城内に、と言いたいけど、聞かれたくない話もあるし。どうしようかな」
「それなら、俺に任せろよ」
そう言ってロロは、フワリと高く飛んだ。
そして、何やら呪文を唱え始める。
「ロロ? 何をしてるの?」
聞くと、呪文を言い終えたロロが、金色に光り始めた。
え!? ロロ、大丈夫!?
すると、心配する私をよそに、ロロはニカッと笑みを浮かべた。
「妖精ってのはな、一人に一つ、必ず能力があるんだ」
「え!? 初めて聞いたよ!」
驚く私。
だけど、正反対の反応をしたのが、連くんだった。
「そうらしいね。そう言えば、君の能力はまだ知らなかったな」
「え、連く……じゃなくて、レン王子はご存じだったのですか?」
「うん。ネネから聞いてたし、俺もその能力に、随分とお世話になったからね」
「お世話になった?」
分からなくてポカンとしている私に、連くんは「その話についても、また後でね」と頭をポンポンと撫でた。
う、胸がキュンとしてしまう……っ。
「さて、ミアがレンにのぼせてるところで。
準備できたぜ」
「準備って、ロロ。
何をするの?」
「これから、時間を止める。
その間に、誰もいない所に移動するぞ」
「え!」
時間を止める!?
ロロ、そんなスゴイ能力があったんだ!
っていうか!
「どうして今まで話してくれなかったのー!?」
そうしたら私とロロが悪い人に連れ去られた時も、簡単に逃げることが出来たかもしれないのに!
そう言うと、ロロが不機嫌になった。
私、何か怒らせるような事をいった?
だけど、ロロが怒った原因は、私にあるわけでは無いらしかった。
なぜなら――
「よし、準備完了。
時間よ――止まれ」
ロロが呟いた瞬間に、時間が止まる。
私と連くんを除いた皆は、まるで石になったように動かなくなっていた。
「ワー! 凄いね、ロロ!」
「ほんと、皆が止まってるね」
私と連くんが感心していると、ロロが「走れ!」と大声で叫ぶ。
え、なんで!?
「走るって、どこに!?」
「どこでもいい、誰にも見つからない所まで、早く走れ!
じゃないと、」
ロロが行く方向に、私も連くんもついていこうとする。
だけど――
「レン王子、どこへ行かれるのですか?」
「ミア王女も!」
「え?」
「へ?」
声がした方を向くと、なんと――
さっきまで止まっていた皆が、既に動き始めていた。
「あの、ロロ……聞いてもいい?」
「虚しくなるから、聞かれる前に話しておく。
俺が時間を止められるのは、
一分だけだ」
「え、」
「そして、能力は一日一回しか使えない。
悪い、今日はここまでだ」
「えぇ~!?」
まるで透き通るような。
真っすぐな意思を持った声が、広く遠くまで響き渡る。
「こちらのミア王女は、客人だ。
手荒な真似はしないように」
「あ……っ」
声の主を見ると、その人は――
私がずっと、会いたかった人。
会いたくて会いたくて、仕方のなかった人。
必ず再会を果たすと約束した、連くんだった。
「れ、」
「初めまして、ミア王女。
お怪我はありませんか?」
「あ……」
そうか、私と連くんって、王子と王女としては、初対面なんだっけ?
危ない。
「連くん」って、思わず言いそうになっちゃった!
「だい、じょうぶです……っ」
「それなら良かった。
部下が手荒な真似をして、申し訳ありません」
「い、いえ……」
今の連くんに、思わず目を奪われる。
白いマント、大人びた顔つき、喋り方。
そして、この場の主導権を握る、そんな強いオーラ。
連くん、本当に王様なんだ。
「カッコイイ……」
ぽつりと呟いた言葉は、連くんの耳に届いたか、届いてないか。
それを確認する前に、なんと私は――
グイッ
連くんに、抱きしめられてしまった。
「え、え!?」
「ミア王女、早くこうしたかった」
「えー!?」
スター国の人も、ハート国の人も見ている中で、思い切りハグ!
連くん、何を考えているの!?
絶対にブーイングが飛んでくる――と思いきや。
のっぽさんが「やはり言い伝えは本当だったのですね」と。
心ここにあらずのような、そんな力のない声で呟いた。
「スター国には昔から言い伝えがある。
代々の王子が、心の底から惹かれる女性と生涯を共にすることで、スター国が未来永劫に繁栄すると。
そして、その惹かれる女性というのは――妖精を従えている者が多かった、と」
「え……、どゆこと!?」
つまり、え?
やっぱり分からない!
連くんを見ると笑うだけで、何も言わない。
ロロを見ても、お手上げのポーズをしている。
ということは、きっとロロも知らない事……なんだろうな。
「でも……」
誰からも、ブーイングが来ないなら。
こんな夢みたいな現実を、噛み締めてもイイかなって――
そんな事を思った。
ギュッ
「私も、お会いしたかったです。
レン王子!」
半泣きになりながら、どさくさに紛れて、連くんを抱きしめ返す。
すると連くんは「うん」と、私を抱きしめる手に、力を込めた。
「ミア王女、俺もだよ。
ずっとずっと、会いたかった」
「はい……っ!」
喜びでいっぱいになった私の頭を、連くんが撫でる。
その時の手つきが優しくて、本当に私を大事に思ってくれてるようで。
堪えていた涙が、私の目から零れ落ちた。
「ミア王女」
「レン王子……っ」
ハート国とスター国の人が見ている中、私と連くんは抱きしめあっていた。
敵国同士の、ハートとスター。
その王女と王子が、こうして抱きしめあっているのに……誰一人ブーイングをしてこない。
スター国に代々からある言い伝えのおかげで――
「ねぇレン王子。
言い伝えを、もう一度教えてほしいです」
「簡単に言うとね、スター国の王子が大好きな人と結婚すると国が栄える、って事」
「大好きな人と、結婚……」
れ、連くんったら!
そんな事を、こんなおおやけの場で!
照れながら嬉しがる私を、ロロがしかめっ面で見た。
そして連くんに近づき、誰にも聞こえないよう、小さな声で話す。
「なぁレン、場所を変えた方が良くないか?」
「なんで?」
「いや、ミアの様子を見るに、いつ本音を漏らすか分かんねーぞ。
連くん、この前ぶりだね。あれからずっと会いたかったんだよ~、とか」
「……」
ロロが、私の声を真似して喋ると、連くんはピタリと固まった。
「今の、全然、美亜には似てないけど……。
ここはロロの言う通りにしようかな」
「え、移動するの? でも、どこに?」
連くんの腕の中から、顔を上げた私。
すると優しい連くんの目と、バッチリ視線が交わっった。
「城内に、と言いたいけど、聞かれたくない話もあるし。どうしようかな」
「それなら、俺に任せろよ」
そう言ってロロは、フワリと高く飛んだ。
そして、何やら呪文を唱え始める。
「ロロ? 何をしてるの?」
聞くと、呪文を言い終えたロロが、金色に光り始めた。
え!? ロロ、大丈夫!?
すると、心配する私をよそに、ロロはニカッと笑みを浮かべた。
「妖精ってのはな、一人に一つ、必ず能力があるんだ」
「え!? 初めて聞いたよ!」
驚く私。
だけど、正反対の反応をしたのが、連くんだった。
「そうらしいね。そう言えば、君の能力はまだ知らなかったな」
「え、連く……じゃなくて、レン王子はご存じだったのですか?」
「うん。ネネから聞いてたし、俺もその能力に、随分とお世話になったからね」
「お世話になった?」
分からなくてポカンとしている私に、連くんは「その話についても、また後でね」と頭をポンポンと撫でた。
う、胸がキュンとしてしまう……っ。
「さて、ミアがレンにのぼせてるところで。
準備できたぜ」
「準備って、ロロ。
何をするの?」
「これから、時間を止める。
その間に、誰もいない所に移動するぞ」
「え!」
時間を止める!?
ロロ、そんなスゴイ能力があったんだ!
っていうか!
「どうして今まで話してくれなかったのー!?」
そうしたら私とロロが悪い人に連れ去られた時も、簡単に逃げることが出来たかもしれないのに!
そう言うと、ロロが不機嫌になった。
私、何か怒らせるような事をいった?
だけど、ロロが怒った原因は、私にあるわけでは無いらしかった。
なぜなら――
「よし、準備完了。
時間よ――止まれ」
ロロが呟いた瞬間に、時間が止まる。
私と連くんを除いた皆は、まるで石になったように動かなくなっていた。
「ワー! 凄いね、ロロ!」
「ほんと、皆が止まってるね」
私と連くんが感心していると、ロロが「走れ!」と大声で叫ぶ。
え、なんで!?
「走るって、どこに!?」
「どこでもいい、誰にも見つからない所まで、早く走れ!
じゃないと、」
ロロが行く方向に、私も連くんもついていこうとする。
だけど――
「レン王子、どこへ行かれるのですか?」
「ミア王女も!」
「え?」
「へ?」
声がした方を向くと、なんと――
さっきまで止まっていた皆が、既に動き始めていた。
「あの、ロロ……聞いてもいい?」
「虚しくなるから、聞かれる前に話しておく。
俺が時間を止められるのは、
一分だけだ」
「え、」
「そして、能力は一日一回しか使えない。
悪い、今日はここまでだ」
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