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迷わず、進む!
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パーティに出席すると返事をした文が、スター国に届いていない――
それは、パーティを明日に控えた私からすると……耳を塞ぎたくなるくらい、ショッキングな出来事だった。
「お父様に了解を貰って、出席の返事を書いた文。それを、確かに側近に渡したよ!?」
パーティは明日。
連くんと会えると思っていた希望の日が、一気に絶望の日へと変わろうとしていた。
事の始まりは、ロロが「連くんが書いた手紙」を、持って帰る予定の日。
そして案の定、手紙を持ったロロが、すごい速さで部屋に入ってきた。
『ロロ!早かったね!
そんなに急いで、どうしたの?』
『はぁ、はぁ……!
今すぐ、手紙を読め!』
『え?なにが、』
『いいから!!』
ロロが手紙を受け取る時。
ネネちゃんから、こう言われたらしい。
『レンの努力を、どうしてムダにしたの?』
『無駄?』
心当たりがなかったロロは、ネネちゃんから事情を聞いたらしい。
そして「パーティに出席する」と返事をした文が、スター国に届いてない事を知った。
「何で、どうしてこうなったの……!?」
「もしかして、ミアが手紙を渡した側近が、手紙を無くしたのか?
でもバレたら確実に罰がくだる。それが嫌で“文を届けた”とウソを言った、とか。
それか……」
ロロの顔が、一気に怖くなる。
私は思わず、ツバを飲み込んだ。
「本当は文が届いているのに、スター国が“届いてない”と嘘をついてるか」
「え、どうして、そんな嘘を……?」
「決まってる。ハート国を陥れるためだ。
でも、レンが裏切るとは考えにくい。
スター国の王様は、はなからハート国を招待する気は無かったかもしれねぇ」
「!」
そんな、まさか……。
そこまでハート国が嫌われていたなんて!
「私、今から連くんの所へ行って、王様と話が出来ないか、聞いてみる!」
「無駄だ。それに、さっきの俺の推測は、可能性の一つだ。もし違ったら、スター国の王を侮辱した罪で死刑だぞ」
「じゃあ、私に出来る事って……」
するとロロは「そうだな」と、腕を組む。
「文がスター国に届いてないのは、レンから手紙を受け取ったミアしか知らない事だ。
だから、明日は堂々とスター国に行けば良い。ハート国としては、返事は“出席”で出しているわけだし」
「でも、それじゃあ……」
「逆に、スター国に行かない方が怪しまれる。スター国の内情を、ハート国が知ってるって事になるからな。
ハート国がスター国へスパイを送っているのかって、それこそ争いに繋がっちまう」
「あ、そっか……」
じゃあ、私はハート国の女王として、明日のパーティーに参加すればいいんだ。
スター国に、行けばいいんだ。
「でも“ハート国から出席連絡はきてない”とか言われて、スター国に入る前に、門前払いになりそうなんだけど……」
「そうならねぇように、今から証拠を集めるぞ」
「証拠?」と首を傾げる私に、ロロは人差し指をピンと立て、頷いた。
「スター国へ文を届けた側近を探すぞ。その日何があったか、ちゃんと文を届けたのか。
ハート国は悪くないっていう証拠集めを、今から死に物狂いでするぞ!」
「おー!!」
そうと決まれば私たちは「すぐ行動!」と、勢いよく証拠探しを務めた。
だけど、不思議な事が起こった。
「あぁ~。あの側近なら、つい先日辞めましたよ。田舎に帰るとか何とか言って」
「や、やめたぁ!?」
まさかの事態に、ガクリと膝をつく私。
髪の毛の中に隠れていたロロも「マジか」と声にならない声を出した。
「ど、どうしよう、ロロ!」
とりあえず自室に戻るため、お城の中を歩く。
ロロは「うーん」と唸っていた。
「どうにも、事がトントン拍子に上手くいきすぎてる。もしかして、側近はスター国に引き抜きにあったんじゃね?」
「引き抜き?」
「ハート国より、もっといいお金をあげるから、スター国においでよっていう……。
いわゆる勧誘だな」
「その提案に、側近はノッたって事!?」
「辞めた時期が時期だしな。
文を届けなければ、スター国で手厚く歓迎するだなんだ言われたら、そりゃ誰でもノるだろ」
「いや、誰でも乗ったら困るよ。忠誠心……」
肩を落とした私に、ロロは「とりあえず」と語気を強める。
「全ては明日だ。
もう後は、野となれ山となれだから……」
「だから?」
「気合で乗り切るぞ」
「え、えぇ~!?」
なんという無茶ぶり!
でも、仕方ない現実もあって……。
ハート国の人達は、みんな文がスター国に届いてると思ってる。
だから明日はパーティに出席するため、スター国を目指すはずだ。
「野となれ山となれ、か……」
正直、打つ手がない。
となれば……。
やっぱり、進むしかない。
「せっかく連くんが用意してくれたチャンスだもんね。
前へ進むよ、ロロ!」
「おうよ!」
そして、私たちはパーティ当日を迎える。
私は見た事もない綺麗なドレスに身を包み、ドキドキしながら、移動の馬車に乗り込んだ。
それは、パーティを明日に控えた私からすると……耳を塞ぎたくなるくらい、ショッキングな出来事だった。
「お父様に了解を貰って、出席の返事を書いた文。それを、確かに側近に渡したよ!?」
パーティは明日。
連くんと会えると思っていた希望の日が、一気に絶望の日へと変わろうとしていた。
事の始まりは、ロロが「連くんが書いた手紙」を、持って帰る予定の日。
そして案の定、手紙を持ったロロが、すごい速さで部屋に入ってきた。
『ロロ!早かったね!
そんなに急いで、どうしたの?』
『はぁ、はぁ……!
今すぐ、手紙を読め!』
『え?なにが、』
『いいから!!』
ロロが手紙を受け取る時。
ネネちゃんから、こう言われたらしい。
『レンの努力を、どうしてムダにしたの?』
『無駄?』
心当たりがなかったロロは、ネネちゃんから事情を聞いたらしい。
そして「パーティに出席する」と返事をした文が、スター国に届いてない事を知った。
「何で、どうしてこうなったの……!?」
「もしかして、ミアが手紙を渡した側近が、手紙を無くしたのか?
でもバレたら確実に罰がくだる。それが嫌で“文を届けた”とウソを言った、とか。
それか……」
ロロの顔が、一気に怖くなる。
私は思わず、ツバを飲み込んだ。
「本当は文が届いているのに、スター国が“届いてない”と嘘をついてるか」
「え、どうして、そんな嘘を……?」
「決まってる。ハート国を陥れるためだ。
でも、レンが裏切るとは考えにくい。
スター国の王様は、はなからハート国を招待する気は無かったかもしれねぇ」
「!」
そんな、まさか……。
そこまでハート国が嫌われていたなんて!
「私、今から連くんの所へ行って、王様と話が出来ないか、聞いてみる!」
「無駄だ。それに、さっきの俺の推測は、可能性の一つだ。もし違ったら、スター国の王を侮辱した罪で死刑だぞ」
「じゃあ、私に出来る事って……」
するとロロは「そうだな」と、腕を組む。
「文がスター国に届いてないのは、レンから手紙を受け取ったミアしか知らない事だ。
だから、明日は堂々とスター国に行けば良い。ハート国としては、返事は“出席”で出しているわけだし」
「でも、それじゃあ……」
「逆に、スター国に行かない方が怪しまれる。スター国の内情を、ハート国が知ってるって事になるからな。
ハート国がスター国へスパイを送っているのかって、それこそ争いに繋がっちまう」
「あ、そっか……」
じゃあ、私はハート国の女王として、明日のパーティーに参加すればいいんだ。
スター国に、行けばいいんだ。
「でも“ハート国から出席連絡はきてない”とか言われて、スター国に入る前に、門前払いになりそうなんだけど……」
「そうならねぇように、今から証拠を集めるぞ」
「証拠?」と首を傾げる私に、ロロは人差し指をピンと立て、頷いた。
「スター国へ文を届けた側近を探すぞ。その日何があったか、ちゃんと文を届けたのか。
ハート国は悪くないっていう証拠集めを、今から死に物狂いでするぞ!」
「おー!!」
そうと決まれば私たちは「すぐ行動!」と、勢いよく証拠探しを務めた。
だけど、不思議な事が起こった。
「あぁ~。あの側近なら、つい先日辞めましたよ。田舎に帰るとか何とか言って」
「や、やめたぁ!?」
まさかの事態に、ガクリと膝をつく私。
髪の毛の中に隠れていたロロも「マジか」と声にならない声を出した。
「ど、どうしよう、ロロ!」
とりあえず自室に戻るため、お城の中を歩く。
ロロは「うーん」と唸っていた。
「どうにも、事がトントン拍子に上手くいきすぎてる。もしかして、側近はスター国に引き抜きにあったんじゃね?」
「引き抜き?」
「ハート国より、もっといいお金をあげるから、スター国においでよっていう……。
いわゆる勧誘だな」
「その提案に、側近はノッたって事!?」
「辞めた時期が時期だしな。
文を届けなければ、スター国で手厚く歓迎するだなんだ言われたら、そりゃ誰でもノるだろ」
「いや、誰でも乗ったら困るよ。忠誠心……」
肩を落とした私に、ロロは「とりあえず」と語気を強める。
「全ては明日だ。
もう後は、野となれ山となれだから……」
「だから?」
「気合で乗り切るぞ」
「え、えぇ~!?」
なんという無茶ぶり!
でも、仕方ない現実もあって……。
ハート国の人達は、みんな文がスター国に届いてると思ってる。
だから明日はパーティに出席するため、スター国を目指すはずだ。
「野となれ山となれ、か……」
正直、打つ手がない。
となれば……。
やっぱり、進むしかない。
「せっかく連くんが用意してくれたチャンスだもんね。
前へ進むよ、ロロ!」
「おうよ!」
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