両思いでしたが転生後、敵国の王子と王女になりました!?

またり鈴春

文字の大きさ
上 下
12 / 29

私、強くなる!

しおりを挟む

 絶対に、また会おう

 連くんと奇跡の再会を果たしてからというもの。
 その言葉が、私のお守りとなった。

 また、絶対に連くんと会う。
 王子も王女も、国の繋がりも、そんなしがらみに負けない私達でいたい。
 私と連くんの愛のパワーで、乗り越えて見せる!

「といっても、まだ告白すら出来てないんだけどね……へへ」

 それなのに「愛のパワー」とか言っちゃう私。
 もう笑うしかない。
 でも、笑えばいいと思う。
 だって、その方が前向きになれるもん!

「よし、準備オーケー」

 今の格好は、ドレスではなく動きやすいパンツ姿。
 兵隊さんが着ているような、そんな服。
 その服を着て、何をするかというと――

「ミア王女、準備はよろしいですか?」
「はい! いつでも!」

「では、参りますぞ」
「お願いします!」

 キンッと高い音で鳴り響く、金属音。
 私の手に握られた剣と、私の相手をしてくれる側近の一人が持つ剣が、激しくぶつかり合った音。

「脇がガラ空きですぞ!
 もっと剣を構えなされ!」
「はい!」

 今まで剣術のレッスンがあったと言っても、それは剣を持って素振りをする程度。
 本物の剣同士で戦いの練習をした事なんて、一度もない。
 じゃあ、どうして今、こんな激しい練習をしているかと言うと――

「にしても、ミア王女がコッソリお城を抜け出した日から、こんなにレッスンに前向きになってくれるとは。
 あの日、何かあったのですか?」
「べ、別に! 何もないよ?」

 ウソ。
 本当は、私の考えが百八十度変わる出来事があった。
 私を犯人から逃がすべく、一人残った連くん。
 連くんが心配で「私も残る」と駄々をこねていた、あの時――

 ――あなたが行って、何か変わるの?
 ――あなたがレンの近くにいても、レンが戦いにくいだけだよ

 あの時、ネネちゃんから言われた言葉が、ずっと頭から離れない。

「ただ守られるだけは、もう嫌なの」
「……ほう?」

「私は、たくさん、たっくさん!
 皆を守れるくらい、強くなりたい!」
「――良い瞳をしておられますな。
 見違えましたぞ、王女」

 あの時、あの場所で。
 私は邪魔者でしかなかった。
 ただ守られるだけの王女様。
 連くんは私と同じ十歳なのに、それでも平然と、犯人を追い払っていた。
 腰に差していた剣を、使いこなしていた。
 それだけで、私の努力は、まだまだちっぽけな物だったなって。思い知らされたの。

「なので鍛錬をお願いします!」
「承知。ミア王女、お覚悟を」
「はい!」

 そして、側近との戦いはしばらく続いた。
 だけど私があまりにも剣術ばかりを磨くから「女の子なのだから、そのへんにしときなさい」と心配したお父様により、レッスンはお開きとなる。
 そして自室に帰る途中まで、お父様と二人きりとなる。

「最近のミアは、とっても頑張り屋だが……。
 その、頑張る方向を間違えないでくれよ?」
「どういう?」

「王女が腕が立つと、噂が流れ始めている。
 そうなると、男って言うのは寄り付かないものなんだよ。
 ほら、ミアも、もういい年だ。
 いつ結婚の話が来ても、おかしくないからね」
「っ!」

「じゃあね。良く休むんだよ」というお父様の言葉は、私の耳には入らない。
 うすうすは気づいていたけど、お父様から「結婚」の言葉が出て、思わず焦ってしまう。
 二十歳の王女である私。
 させられるのは、たぶん政略結婚。
 好きでもない人と、国の利害関係の一致のためだけに結婚する――
 王女っていうのは、そういう宿命があるって、頭では分かってる。
 だけど、私は、嫌だ。
 だって――

 ガチャ

「ロロ、ただいまぁ」
「お~ミア。おかえり」

「帰ってたんだね、お疲れ様。
 いつもお手紙を運んでくれてありがとう」
「もう慣れたってーの」

 クッキーを食べていたロロが、机を指さす。
 そこには、綺麗な封筒が置かれていた。

「連くん……、また書いてくれたんだね」

 封筒を、ギュッと抱きしめる。
 そうすれば連くんの存在を、近くに感じられるかと思って。

「なに辛気臭い顔してんだよ、ミア」
「うん、私、結婚するなら……やっぱり連くんがいいなって。そう思ったの」

「何をいまさら。
 ずっとそうするって、ミアが言ってたんだろ。
 もう耳にタコが出来るほど聞いたっての」
「へへ! そうだね!」

 私はいつか、連くんと結婚する――
 それが有言実行出来たら、どんなにいいか。

「……は! いけない、いけない。
 連くんも頑張ってるんだから、私もクヨクヨせずに頑張らなきゃ!」

 ――俺は、国関係なく、いつか美亜と毎日を過ごしたいって。そう思ってるんだよ 
 ――だから君も頑張るんだ、美亜

 あの言葉を、忘れちゃいけない。
 あの言葉は、私のやる気の源だ。
 諦めずに頑張って、頑張って頑張ったら――
 その先には、きっと、あの約束を果たせる日が待ってるから。

「だから絶対、諦めない!
 連くん意外とは、結婚しないんだから!」
「おーおー、また言ってらぁ」

 ついに耳を塞いだロロ。
 すっごく嫌そうな顔してる!?

「ロロ~!
 そんなつれない態度とらないで~」
「あー、うっとうしい!
 早く手紙を読め!
 そして静かになれ!」
「ひ、ひどい!」

 だけど手紙の中身も気になるので、いそいそと手を動かして封筒を開ける。
 その時に、ロロが「あ」と。
 何かを思い出したように、声をあげた。

「今回の手紙には大事な事が書いてあるって、レンが言ってたらしいぞ」
「ネネちゃんが、そう言ってたの?」

「そう。手紙を交換する日になると、嫌に不機嫌なんだよな。アイツ」
「ネネちゃんが不機嫌?」

 そう言えば、ネネちゃんは私の事を嫌っていた。
 そんな私のために長い距離を飛ばないといけないんだから……機嫌がいいわけないか。

「また、美味しいクッキーを持って行こうね。スター国にいるネネちゃんに」
「ま、堂々と持って行けるのは、いつになるんだって話だけどな」
「う……、そうだけど」

 カサッと、便せんの折り目を開いて、手紙の内容に目を通す。
 そして通した瞬間――
 私は、驚きすぎて目がおっこちるかと思った。

「ねぇ、ロロ。
 堂々とスター国に行ける日は、そう遠くないかもしれないよ?」
「は? どういう?」
「これを見て」

 手紙をロロに見せる。
 すると、ロロは目を皿のようにして、穴が空くほど手紙を見ていた。

「”スター国で開催されるパーティーへ参加してもらう案内状を送るつもりだから”って……へ?」

「スター国に、行けるんだよ! 私が!」
「ま、マジで?」

「やったー!」と手紙を持ってクルクル回る私。
 一方のロロは「敵国の女王を呼ぶ?どういう理由で?」と頭を悩ませていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

超ポジティブ委員長の桂木くん

またり鈴春
児童書・童話
不登校の私の家に委員長がやって来た。 「この僕がいるのに、なぜ学校に来ないのですか?」 「……へ?」 初対面で、この発言。 実はこの人、超ポジティブ人間だった。 「同じクラスで僕と同じ空気を吸う、 それは高級エステに通ってると同じですよ」 自己肯定感の塊、それが委員長の桂木くん。最初は「変なヤツ」って思ってたけど… バカな事を大まじめに言う桂木くんを、「学校で見てみたい」なんて…そんな事を思い始めた。 \委員長のお悩み相談室が開幕!/

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

カラフルマジック ~恋の呪文は永遠に~

立花鏡河
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞】奨励賞を受賞しました! 応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます! 赤木姫奈(あかぎ ひな)=ヒナは、中学二年生のおとなしい女の子。 ミステリアスな転校生の黒江くんはなぜかヒナを気にかけ、いつも助けてくれる。 まるで「君を守ることが、俺の使命」とばかりに。 そして、ヒナが以前から気になっていた白野先輩との恋を応援するというが――。 中学生のキュンキュンする恋愛模様を、ファンタジックな味付けでお届けします♪ ★もっと詳しい【あらすじ】★ ヒナは数年前からたびたび見る不思議な夢が気になっていた。それは、自分が魔法少女で、 使い魔の黒猫クロエとともに活躍するというもの。 夢の最後は決まって、魔力が取り上げられ、クロエとも離れ離れになって――。 そんなある日、ヒナのクラスに転校生の黒江晶人(くろえ あきと)がやってきた。 ――はじめて会ったのに、なぜだろう。ずっと前から知っている気がするの……。 クールでミステリアスな黒江くんは、気弱なヒナをなにかと気にかけ、助けてくれる。 同級生とトラブルになったときも、黒江くんはヒナを守り抜くのだった。 ヒナもまた、自らの考えを言葉にして伝える強さを身につけていく。 吹奏楽を続けることよりも、ヒナの所属している文芸部に入部することを選んだ黒江くん。 それもまたヒナを守りたい一心だった。 個性的なオタク女子の門倉部長、突っ走る系イケメンの黒江くんに囲まれ、 にぎやかになるヒナの学校生活。 黒江くんは、ヒナが以前から気になっている白野先輩との恋を応援するというが――。 ◆◆◆第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です◆◆◆ 表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。

処理中です...