上 下
11 / 29

ドキドキデート!?

しおりを挟む

「みーちゃん、こっちに美味しそうな物があるよ」
「わ、わあホント~!」

「……ぷ、ふふ」
「わ、笑わないで。連くん!」

 あの後――
 連くんが街で服を用意してくれた後。
 私と連くんは、一般市民へと変装していた。
 そして現在。
 男の人が通ったと見られる、秘密のショートカットの入り口まで移動している最中。
 入り口はココと、確実に分かっているわけじゃないから、手探りしている状態。
 家の間、お店の裏。少し外れた森の中――
 様々な場所に寄り道をしながら、私たちは入り口を探した。
 だけどスター国の人達とすれ違う事もあるから、怪しまれないようにデートしているフリをして探している――というわけだ。

 お忍びデート。
 真剣に入り口を探さないといけないのに、心がどこか浮ついて、仕方ない。
 だけど、それは私だけではないようで……。
 どこか気の緩んだ顔の連くんも、嬉しそうに私を見て笑ってくれていた。

「まさか、異世界で美亜とデート出来るなんてね」
「ほ、本当だよね。夢みたい……」

 この世界が夢、なら良かったんだろうけど……。敵国同士なんて嫌だし。
 だけど、今この瞬間においては、この世界が存在して良かった、ともいえる。
 だって、本来なら私たちは――

「俺が校舎裏に呼び出した日の事、覚えてる?」
「! 私も今、その事を考えてた」

 そう。私と連くんは、二人きりで校舎裏にいた。
 その時、上から何かが降って来て、私を守るため連くんが覆いかぶさってくれて――
 そこからは、記憶がない。
 でも、なんとなく分かる。
 転生したって事は、私も連くんも、死んでしまったんだろうなって。

「私達には、デートはもう叶わないって思ってたから……。
 今、夢が叶って嬉しいな」
「俺もだよ、美亜」

 泣きそうになる私の手を、ギュッと握ってくれる連くん。
 その力強さが、連くんが生きてるって事を実感させてくれて……。
 嬉しくて、やっぱり泣きそうになった。

「私を庇ってくれて、本当にありがとう。
 私たち、きっと死んじゃったんだよね?
 連くんまで道連れにして、本当にごめん」
「ううん、これでいいんだ。
 じゃなくて……これが、いいんだよ。
 だって俺は、美亜がいないと……」
「連くん?」

 急に顔を赤らめた連くんが、とっても可愛く思えて。
 つい「その顔を、もっと見たい」って思っちゃった。

「ねぇ連くん。聞いてもいい?」
「ん?」

「あの日、校舎裏で……。
 私に、何を言おうとしてたの?」
「それは……」

 また、赤くなった顔。
 どうやら連くんは、不意打ちに弱いみたいだった。
 だけど、すぐに立場は逆転する。
 連くんは「俺も聞きたいことがあるんだ」と、ポケットから見覚えのある紙を出した。

「この前、手紙を貰った。
 その手紙には、こう書いてあった」

 ――次に再会した時、連くんに「好き」って伝えたいです

「これは、いつ聞かせてくれるの?」
「そ、それは……!」

 そう言えば、手紙にそんな事を書いた記憶がある!
 まさか会えるなんて思わなかったから。
 まさか、こんなにすぐに夢が叶うなんて思わなかったから……どうしよう。

 今、すっごい恥ずかしい!!

「い、意地悪~!」
「ふふ、お互い様だよ」

 私たちは、言葉に出来ない想いを、お互いの手に込めた。
 ギュッ、ギュッと。
 まるでキャッチボールをするみたいに、交互に繋がった手に力を込める。

「じゃあ、次に会った時の楽しみに取っておこうか」
「え?」

「今日は、俺も会えるとは思わなかったからさ。
 これ以上のサプライズを貰ったら、なんかもったいない気がするよ。
 だから、次回まで取っておく」
「連くん……」

「だから美亜。次に会う時までに、あのフレーズを言う心の準備をしておいてね」
「あのフレーズ……」

 ――好き

「俺も、校舎裏で言いたかった気持ちを伝えるから。ね?」
「連くん……、うん。約束!」

「約束」
「へへッ」

 そうして、私と連くんは小指を出して約束した。
 キュッとつながった小指は熱を帯びていて、燃えるように熱かった。

「指切りげんまん――」
「――ゆびきった!」

 そうこうしていると、顔を土で汚したネネちゃんがやって来る。

「連、入口を見つけたよ!
 穴の中にあった!」

「美亜!」
「……うん!」

 私と連くんは頷き、入口へ移動する。
 そうして、明らかに人工的な物で掘られたような穴を見つけた。

「地下に繋がってるみたいだね。
 中には、誰かいるのかな?」
「今、ロロが入って無人か確認してるよ。
 ほら、帰って来た!」

 すると、ネネちゃんと同じように、顔を土で汚したロロが、ひょっこり穴から顔を出した。

「誰もいなかった!
 通るなら今だぜ!」

「じゃあ、美亜」
「うん……。私、行くね」

 繋いでいた手が、ゆっくりと離れる。
 すると連くんのぬくもりが、すぐに私から逃げて行った。

「あ……」

 それが、妙に寂しくて悲しくて……。
 今はこんなに近くにいるのに、またしばらく会えないのかと思うと……辛かった。

「うッ……。嫌だ、行きたくないよぉ」
「美亜……」

 連くんは困った顔をして、私と身長が同じになるように、屈んでくれた。
 そして、頬にそっと手をあてる。

「また絶対に会おう。
 その時は、コソコソ会うんじゃなくて、王子と王女として会おう。堂々とね」
「でも敵国だから、それは叶わないんじゃ……」

 言うと、連くんはグッと唇に力を入れた。
 そして――

「心配しないで。
 俺が絶対、なんとかするから。
 だから、君も頑張るんだ。美亜」
「!」

「俺は、国とか関係なく、いつか美亜と毎日を過ごしたいって。そう思ってるんだよ」
「わ、私も……っ」

 すると、連くんがギュッと私を抱きしめる。
 まるで「大丈夫だよ」って、そう言ってくれるみたいだ。

「美亜、また会おう。
 その時に、俺は校舎裏で言いたかった言葉を言うから」
「うん。私も、手紙に書いた言葉を、必ず言うから。
 だから――」

 絶対に、また会おうね

 その言葉を最後に、私と連くんは別れた。
 最後は泣きすぎて、視界がぼやけて、よく見えなかったけど。
 それでも――
 私を思ってくれる連くんの想いの強さを、私はハッキリと、この目で見た気がした。

 でも。
 連くんばかり見ていたから、いけなかったのか。
 連くんの後ろで、険しい顔をしているネネちゃんの事に、私は気づくことが出来なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

超ポジティブ委員長の桂木くん

またり鈴春
児童書・童話
不登校の私の家に委員長がやって来た。 「この僕がいるのに、なぜ学校に来ないのですか?」 「……へ?」 初対面で、この発言。 実はこの人、超ポジティブ人間だった。 「同じクラスで僕と同じ空気を吸う、 それは高級エステに通ってると同じですよ」 自己肯定感の塊、それが委員長の桂木くん。最初は「変なヤツ」って思ってたけど… バカな事を大まじめに言う桂木くんを、「学校で見てみたい」なんて…そんな事を思い始めた。 \委員長のお悩み相談室が開幕!/

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

超イケメン男子たちと、ナイショで同居することになりました!?

またり鈴春
児童書・童話
好きな事を極めるナツ校、 ひたすら勉強するフユ校。 これら2校には共同寮が存在する。 そこで学校も学年も性格も、全てがバラバラなイケメン男子たちと同じ部屋で過ごすことになったひなる。とある目的を果たすため、同居スタート!なんだけど…ナイショの同居は想像以上にドキドキで、胸キュンいっぱいの極甘生活だった!

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

原田くんの赤信号

華子
児童書・童話
瑠夏のクラスメイトで、お調子者の原田くん。彼は少し、変わっている。 一ヶ月も先のバレンタインデーは「俺と遊ぼう」と瑠夏を誘うのに、瑠夏のことはべつに好きではないと言う。 瑠夏が好きな人にチョコを渡すのはダメだけれど、同じクラスの男子ならばいいと言う。 テストで赤点を取ったかと思えば、百点満点を取ってみたり。 天気予報士にも予測できない天気を見事に的中させてみたり。 やっぱり原田くんは、変わっている。 そして今日もどこか変な原田くん。 瑠夏はそんな彼に、振りまわされてばかり。 でも原田くんは、最初から変わっていたわけではなかった。そう、ある日突然変わり出したんだ。

わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました! 応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます! 「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」 再会は突然だった。 わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。 なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。 そんなわたしには、とある秘密があって……。 新入生のイケメン、乙黒咲也くん。 わたし、この子を知ってる。 ていうか、因縁の相手なんですけどっ!? ★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★ わたしはかつて、魔法少女だったんだ。 町をねらう魔物と戦う日々――。 魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。 「意外とドジですね、愛葉センパイは」 「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」 「生まれ変わったおれを見てほしい」 ★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★ 改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる! 光と闇がまじりあうのはキケンです! わたしたちの恋愛、NGだよね!? ◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆ 表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。

処理中です...