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いいこと続き!

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「ロロ、連くんと会えたかなぁ」

 ロロが旅立って、一週間が経った。
 ロロがいない生活に戻った私は、いつもと変わらない毎日を送っている。

「ミア王女、そろそろダンスレッスンの時間ですよ」
「はーい」

 側近にそう言われて、いそいそと着替え始める。
 その間も、ロロの事が気になってちゃって……。
 何度も何度も、窓を見てしまう。

「ロロがいないと、こんなに静かだったかなぁ?」

 部屋を見渡す。
 すると、不思議なことにいつもより広く見える。
 色んな装飾品があるのに、殺風景に見えるほど。
 その殺風景の中に、テーブルに並ぶ、美味しそうなクッキーたち。
 もちろん、ロロが帰って来た時に、食べてもらおうと私が用意したの!

「早くロロに食べてほしいなぁ。
 あ、いけない。
 レッスンに遅れちゃう!」

 鏡を見て……うん、準備オッケー!
 だけど――
 最後に、もう一度だけ振り返って、窓を見る。
 そして、やっぱり姿の見えないロロを思って……少しだけ落ち込んだ。

「早く、ロロに会いたいなぁ」

 だけど――
 そんな私がビックリしたのは、ダンスレッスンから自室に帰って来た時。

「ただいま~」

 自室のドアを開ける。
 すると、なんと、そこには!

「おー、おかえり。ミア」
「え、ロ……ロロ!?」

 机の上で、クッキーを食べているロロの姿。
 まさか、帰ってきてくれてたなんて!
 ロロ―!と手を広げながら、ロロの元へ走った。

「ロロ! おかえり!
 無事で本当に良かった!」
「心配しすぎだっての。
 手紙、ちゃんと届けて来たぞ」
「っていう事は、連くんに会えたの!?」

 ドキドキしながら尋ねると、ロロはコクリと頷いた。
 うそ、うそ!
 信じられない!
 まさか、ロロが連くんと、本当に会えたなんて!

「レンもミアと同じ、中身十歳の子供だったぞ。
 良かったな、お前の予想が当たって」
「本当に、本当……?」
「本当だっての」

 私と同じ、この世界に、連くんが確かに存在する――
 その事が、とんでもなく嬉しい。
 神様、ありがとう。

「よ、」
「よ?」
「よかっだあぁぁ~!」

 ボロボロと涙を流す私を見て、ロロは「おわ!」と驚く。
 ごめんねロロ、ビックリさせちゃって。
 でも、でもね。
 自分で想像してた事だけど、実際に「連くんも私と同じく転生した」んだって思ったら……。
 涙が、止まらないんだよ。

「連くん、連くん……っ!」

 この世界にいる連くんは、私と同級生だった連くん。
 私の好きな人。

「連くん、会いたいよ~!」
「ほら、ハンカチ」

 ズビズビ鼻を鳴らす私に、ロロはため息をついた。
 そして、近くにあったハンカチを渡してくれる。
 ある物と一緒に――

「キレイな封筒……。これは?」
「レンからの返事だ。ミア宛に」
「え、返事!?」

 いや、手紙だから返事が来てもおかしくないけど……。
 まさか、あの連くんから返事がもらえるなんて!
 震える手で、ロロから手紙を受け取る。
 その手紙は、ただの紙なのに……。
 握った瞬間、なぜだか体中が温かくなった気がした。

「それと、もう一つ良いニュース」
「え? まだ、何かあるの?」

 私の前に立つロロ。
 笑みを浮かべ「しっかり聞けよ」と、したり顔をした。

「俺が、ミアとレンが文通をする手助けをする。
 だから、また返事を書け。
 俺がスター国に持って行ってやるよ」
「え、でも……。
 それは、ロロに悪いよ。
 今回だって、長い距離を飛んで、しんどかったでしょ?」

 するとロロは「いんや」と首を振った。

「今回、スター国に行って……俺の仲間を見つけたんだ。
 そいつは、俺がずっと探してた奴だ」
「え! 本当!?
 良かったねぇ、ロロ!」

 嬉しくて、ロロの両手に親指を添える。
 最初は驚いた顔をしたロロ。
 だけど次の瞬間、眉を下げて笑った。

「ミアは、なんかネネと似てるよな」
「ネネ?
 もしかして、見つかったお仲間さんの名前?」

「そう。妖精のネネ。
 レンとずっと一緒にいたらしい。ベッタリだったぞ」
「え、連くんと!?」

 そんな偶然ってあるんだ!
 すごすぎない!?

「ロロは私と一緒にいて、ネネって子は、連くんと一緒にいる。
 私とロロの探していた相手が、まさか一緒にいたなんて……。
 ほんと、ビックリだね」
「普通ありえねーよな」

「奇跡じゃない!?
 むしろ、運命かも!」
「……」

 頬を紅潮させて喜ぶ私を、ロロは顔を歪めた。
 そして、

「仕組まれた運命じゃなきゃ、良いんだけどな」

 と、腕を組んで、何やら考え始める。
 こんなに真剣なロロの表情を、今まで見たことがないかも。

「ロロ、何か気になる事でもあるの?」
「……レンと会った時に、アイツ。
 気になる事を、言ったんだ」

 それは、ロロが連くんに手紙を渡した時の事らしい。

 ――俺と美亜がコンタクトをとれるのは、もう少し先だと思ってたから

 その意味を聞こうとして、結局聞けずじまいだったロロ。
 今も、連くんのその言葉がずっとひっかかっているらしく……
 渋い顔から、なかなか元に戻らない。

「か、考えすぎ……、とかじゃなくって?」
「”考えすぎ”だったらいいって。そう思ってるけどな」
「そっか……」

 ロロに、なんて声を掛けていいか分からなくて。
 とりあえず、新たにクッキーを差し出した。
 するとロロは素直に受け取ってくれ、かじり始める。

「なんにせよ、俺とネネがお互いの国境近くまで飛ぶから、飛ぶ距離は今までの半分になるって事だ。
 だから、俺らの事は気にすんな。
 ミアは、決められた曜日までに返事を書けばいい。
 俺とネネがが落ち合う曜日と時間は、もう決めてあるんだ」
「そうなんだ……、わかった。
 ありがとう、ロロ」

 私が納得したのを見て、ロロが頷く。
 そうか、私また……手紙を書いていいんだ。
 連くんに、私の好きな人に、手紙を――!

「そういやミア、手紙になんて書いてたんだ?」
「へ?」

「いや、レンが手紙を読んで、顔を真っ赤にしてたから。
 なんか変だなーって思って」
「え! あ、えっと!
 な、なんて書いたっけ~?」

 アハハ~と誤魔化す私。
 ロロは「あっそ」と興味なさげに、またクッキーに手を伸ばした。

「あ、今度は遠慮せずに、手紙を書けよ」
「遠慮?」

「一枚じゃ足りねーだろ。
 もっと枚数増やしてイイって、そう言ってんだよ」
「ロロ……、うん。ありがとう!」

 ロロの優しさが嬉しくて、いてもたっても、いられなくなってきた。
 だって、連くんに手紙だよ?
 また書いていいんだよ!?
 書きたいことが多すぎて、悩んじゃう!

「封筒はコレにしようかな? あ、これもいいかも!」

 さっそく、次の手紙の事を考え始める私。
 だけど、ふと、思い出す。
 さっきの、ロロの言葉を――

 ――俺と美亜がコンタクトをとれるのは、もう少し先だと思ってたから

「”美亜”って……。
 連くん、私の事を”美亜”って呼んでくれてるの!?」

 ロロがクッキーを食べている横で「キャー!」とか「ワー!」と叫ぶ私。
 湧きあがる喜びから座ってられなくなり、さっき覚えたダンスを踊ってみる。
 そんな私を見て、ロロはため息をついた。

「まったく。ミアは気楽でいいな」
「それより、ロロ見てよ!
 ちょっとはダンスレッスンの成果が出てると思わない!?
 こんなに滑らかに踊れるようになったんだよ~!」
「はいはい、ヨカッタナー」

 小躍りしながら部屋中をクルクル回る私。
 一方のロロはお腹いっぱいになったのか、「ちょっと寝る」と言い、ベッドにヒラヒラ飛んで行ったのだった。
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