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天使くんの決意2
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「どうしたの?なんでここに?」
「……うん」
短く返事をしたきり、何も言わなくなってしまった天翔くん。
どうしたんだろう?
「あ、もしかして天界に帰れるようになったの?それで別れの挨拶をしに、わざわざここへ?」
「っ!」
私の質問に、天翔くんは体を揺らして反応した。どうやら正解みたい。
「わ~良かったね!でも、どうして帰れるようになったの?まさか、あのお兄さんが手を貸してくれたとか?」
「……」
「天翔くん?」
無表情のまま、無言で俯く天翔くん。
調子が悪い……ってわけじゃ、なさそうだけど。
「熱があるの?」と、天翔くんのおでこに手を伸ばす。
すると彼は、私の手を勢いよく掴んだ。
そして、とんでもない事を口にする――
「決められたルールを守って、天界に帰るよ」
「え?でも」
頭の中で「天界に帰れる条件」を思い出す。
天翔くんが言っていたのは、確か……
「魂を回収したら天界に帰れる、だっけ?でも私が死ぬのは半年後だよね?あ、他の誰かの魂を~とか、そんな話?」
「……」
「……違うの?」
無言の天翔くん。その顔を見れば分かる。
その歪んだ表情を見れば、よく分かる。
彼は何か、とんでもない嘘をついている、と。
「晴衣が死ぬのは、半年後じゃない。晴衣が死ぬのは――今日だ」
「へ?」
「晴衣は大会の帰り道、信号無視のトラックに自転車ごと跳ねられて死ぬんだ。今まで黙ってて、ごめん」
「え……えぇ?」
今のは、聞き間違い?
だって天翔くんは出会った時、私に「余命半年」って言ったよね?
「私は病気で死ぬんじゃないの?」
「死なない。晴衣は、ただ体が弱いだけ。死に直結する病気を患ってるわけじゃないよ」
「じゃあ、何で“余命半年”なんて言ったの?」
「ルールだから。天使は、人間の寿命を本人に告げてはいけないんだ。テキトウな嘘を言ってごめん」
「……」
頭が真っ白になった。
私は自分の体の弱さをよく知っていて、バドも満足にできなくて、いつも自分にどこか不満があって。
だから天翔くんから「余命半年」って言われた時は「やっぱりね」って思った。
こんな体、長持ちするわけないじゃんって。
でも、違ったんだ。
「事故が無ければ、私はずっと生きられるの?」
「そうだよ」
「そっか。本当に、ただ体が弱いだけだったんだ……」
力が抜けて、へにゃりと座ってしまう。すると天翔くんが、私の目の前で片膝をついた。
そして一本のシャトルを取り出す。
新品だ。それに、いつもより綺麗に見える。キラキラ光ってるみたい。
思わず見入っていると、天翔くんが私にシャトルを差し出した。
「晴衣にあげる。受け取って」
天翔くんはシャトルから手を離す。何の支えもないシャトルは地面に落ちる、かと思いきや。わずかに上下しながら、空中を漂っていた。
「……うん」
短く返事をしたきり、何も言わなくなってしまった天翔くん。
どうしたんだろう?
「あ、もしかして天界に帰れるようになったの?それで別れの挨拶をしに、わざわざここへ?」
「っ!」
私の質問に、天翔くんは体を揺らして反応した。どうやら正解みたい。
「わ~良かったね!でも、どうして帰れるようになったの?まさか、あのお兄さんが手を貸してくれたとか?」
「……」
「天翔くん?」
無表情のまま、無言で俯く天翔くん。
調子が悪い……ってわけじゃ、なさそうだけど。
「熱があるの?」と、天翔くんのおでこに手を伸ばす。
すると彼は、私の手を勢いよく掴んだ。
そして、とんでもない事を口にする――
「決められたルールを守って、天界に帰るよ」
「え?でも」
頭の中で「天界に帰れる条件」を思い出す。
天翔くんが言っていたのは、確か……
「魂を回収したら天界に帰れる、だっけ?でも私が死ぬのは半年後だよね?あ、他の誰かの魂を~とか、そんな話?」
「……」
「……違うの?」
無言の天翔くん。その顔を見れば分かる。
その歪んだ表情を見れば、よく分かる。
彼は何か、とんでもない嘘をついている、と。
「晴衣が死ぬのは、半年後じゃない。晴衣が死ぬのは――今日だ」
「へ?」
「晴衣は大会の帰り道、信号無視のトラックに自転車ごと跳ねられて死ぬんだ。今まで黙ってて、ごめん」
「え……えぇ?」
今のは、聞き間違い?
だって天翔くんは出会った時、私に「余命半年」って言ったよね?
「私は病気で死ぬんじゃないの?」
「死なない。晴衣は、ただ体が弱いだけ。死に直結する病気を患ってるわけじゃないよ」
「じゃあ、何で“余命半年”なんて言ったの?」
「ルールだから。天使は、人間の寿命を本人に告げてはいけないんだ。テキトウな嘘を言ってごめん」
「……」
頭が真っ白になった。
私は自分の体の弱さをよく知っていて、バドも満足にできなくて、いつも自分にどこか不満があって。
だから天翔くんから「余命半年」って言われた時は「やっぱりね」って思った。
こんな体、長持ちするわけないじゃんって。
でも、違ったんだ。
「事故が無ければ、私はずっと生きられるの?」
「そうだよ」
「そっか。本当に、ただ体が弱いだけだったんだ……」
力が抜けて、へにゃりと座ってしまう。すると天翔くんが、私の目の前で片膝をついた。
そして一本のシャトルを取り出す。
新品だ。それに、いつもより綺麗に見える。キラキラ光ってるみたい。
思わず見入っていると、天翔くんが私にシャトルを差し出した。
「晴衣にあげる。受け取って」
天翔くんはシャトルから手を離す。何の支えもないシャトルは地面に落ちる、かと思いきや。わずかに上下しながら、空中を漂っていた。
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