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天使くんの心配
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「はい、休憩終わり」
「え……もう?」
駐車場で、ぐでーと伸びている私。そんな私を、ストップウォッチを片手に見下ろしている天翔くん。
「も、もう一分だけ休憩させて……」
「ダメだよ」
「けちぃ~!」
あれから――
お兄さんとバトルした日から、天翔くんは数日間、自由に動くことが出来なかった。動けなかったと言っても、日常生活は普通に出来る。
ただ、私の自主練に付き合うだとか、羽を出して飛ぶだとか。そういう事が一切できないほど、天翔くんはダメージを受けていた。
「本当、天翔くんが元気になってくれて良かったよ」
「今日からまた、晴衣をどんどん鍛えるからね」
(あ、また名前で呼んでくれた)
あの日以来、天翔くんは私の事を名前で呼んでくれるようになった。無表情は相変わらずだけど。
私を名前で呼ぶことには、抵抗ないのかな?何度も呼んでくれるし。だとしたら……距離が縮まったみたいで嬉しいな!
「ねぇ天翔くん、笑ってみて?」
「……やだ」
(やだって、ちょっと可愛い)
ふふ、と笑っていると、天翔くんが「ポケットから何か出てるよ」と私のズボンを指さした。
え? 何か入ってる?
触ると、それは紙だった。
あぁ、そうだった!
「天翔くん、聞いて! 今度バドミントンの試合があるんだけど、そのトーナメント表が今日配られたの!」
「へぇ」
「もっとリアクションを大きくしてよ~!今回は1体1のシングルのみなんだよ。しかも初戦から結構強いところと当たるっていう、結構なハードモード……」
「ふぅん。大変だね。いつなの?試合」
(お、話題を振ってくれた!)
話に興味を持ってくれた事が嬉しい。だって、すごくレアなんだもん。いつもは「ふぅん」とか「へぇ」で終わっちゃうからさ。
ニコニコする私と、無表情な天翔くん。
そんな中、私は試合日を発表した。
「来週!22日の土曜日だよ!」
「――」
ニコニコする私と……目を開いて、驚いた顔をした天翔くん。
あ、レアな表情を見ちゃった!嬉しい気持ちが半分。あとは……不安な気持ちが半分。
今の天翔くんの表情を見ると、私の胸が妙にザワザワしちゃう。
なんでだろう?
「どうしたの?天翔くん」
「その日付……間違いないの?」
「うん。合ってるよ!大事な試合の日を、私が間違えるわけないじゃん~!」
ブイ!とピースを作ると、天翔くんは私の手から紙を奪った。そして目を皿のようにして、書かれている文字を見ている。
そして――やっぱり私のいう事は間違いじゃないと分かったらしい。無言で紙が返された。
「どうしたの?なんか変だよ?」
「……」
「天翔くん?」
天翔くんは、口をギュッと閉じて開かない。
薄い唇が、問答無用で潰され横に伸びている。
「ねぇ晴衣」
すると、心配する私の顔を、天翔くんは穴が空くほど見つめた。
そして真剣な表情をして、何を言うかと思えば――
「棄権して」
「……え?」
「この試合、出ちゃダメ」
「で、出ちゃダメって……」
またまた~なに冗談言っちゃってんの!と笑う私。一方で、真剣な顔の天翔くん。
その顔を見たら、どうしてか「冗談」とは思えなくて。胸のざわつきが、大きくなる。
「え……もう?」
駐車場で、ぐでーと伸びている私。そんな私を、ストップウォッチを片手に見下ろしている天翔くん。
「も、もう一分だけ休憩させて……」
「ダメだよ」
「けちぃ~!」
あれから――
お兄さんとバトルした日から、天翔くんは数日間、自由に動くことが出来なかった。動けなかったと言っても、日常生活は普通に出来る。
ただ、私の自主練に付き合うだとか、羽を出して飛ぶだとか。そういう事が一切できないほど、天翔くんはダメージを受けていた。
「本当、天翔くんが元気になってくれて良かったよ」
「今日からまた、晴衣をどんどん鍛えるからね」
(あ、また名前で呼んでくれた)
あの日以来、天翔くんは私の事を名前で呼んでくれるようになった。無表情は相変わらずだけど。
私を名前で呼ぶことには、抵抗ないのかな?何度も呼んでくれるし。だとしたら……距離が縮まったみたいで嬉しいな!
「ねぇ天翔くん、笑ってみて?」
「……やだ」
(やだって、ちょっと可愛い)
ふふ、と笑っていると、天翔くんが「ポケットから何か出てるよ」と私のズボンを指さした。
え? 何か入ってる?
触ると、それは紙だった。
あぁ、そうだった!
「天翔くん、聞いて! 今度バドミントンの試合があるんだけど、そのトーナメント表が今日配られたの!」
「へぇ」
「もっとリアクションを大きくしてよ~!今回は1体1のシングルのみなんだよ。しかも初戦から結構強いところと当たるっていう、結構なハードモード……」
「ふぅん。大変だね。いつなの?試合」
(お、話題を振ってくれた!)
話に興味を持ってくれた事が嬉しい。だって、すごくレアなんだもん。いつもは「ふぅん」とか「へぇ」で終わっちゃうからさ。
ニコニコする私と、無表情な天翔くん。
そんな中、私は試合日を発表した。
「来週!22日の土曜日だよ!」
「――」
ニコニコする私と……目を開いて、驚いた顔をした天翔くん。
あ、レアな表情を見ちゃった!嬉しい気持ちが半分。あとは……不安な気持ちが半分。
今の天翔くんの表情を見ると、私の胸が妙にザワザワしちゃう。
なんでだろう?
「どうしたの?天翔くん」
「その日付……間違いないの?」
「うん。合ってるよ!大事な試合の日を、私が間違えるわけないじゃん~!」
ブイ!とピースを作ると、天翔くんは私の手から紙を奪った。そして目を皿のようにして、書かれている文字を見ている。
そして――やっぱり私のいう事は間違いじゃないと分かったらしい。無言で紙が返された。
「どうしたの?なんか変だよ?」
「……」
「天翔くん?」
天翔くんは、口をギュッと閉じて開かない。
薄い唇が、問答無用で潰され横に伸びている。
「ねぇ晴衣」
すると、心配する私の顔を、天翔くんは穴が空くほど見つめた。
そして真剣な表情をして、何を言うかと思えば――
「棄権して」
「……え?」
「この試合、出ちゃダメ」
「で、出ちゃダメって……」
またまた~なに冗談言っちゃってんの!と笑う私。一方で、真剣な顔の天翔くん。
その顔を見たら、どうしてか「冗談」とは思えなくて。胸のざわつきが、大きくなる。
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