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一章

三十話 ダフトへ

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私は目を覚ました。アズサに抱きつかれて状況を理解できていなかった。アズサは私が起きたのを気づいたのか私の顔を見て言う。

「エマ…本当に心配したんだから…」

アズサの涙が私の頰に落ちてくる。私は腕を動かして涙を拭き取ろうとしたが抱きつかれていてそもそも動かなかった。

アズサの裏にはアズサのお兄さんが見ていた。私はすごく恥ずかしい気持ちになった。

「アズサ…ゴメン心配かけて…もうこんなことはしないから」

私は言いながら彼女の背中を叩いた。すると、彼女は抱きつくのを段々弱めてくれた。私はやっと腕が動かせて涙を拭き取った。

裏で、見ていたアズサのお兄さんが呆れた顔で見る。お兄さんにとっては赤の他人と妹が再会している図を見て感動するはずかないか…と心の中で思ってしまった。

「なぁ…アズサもう森の入り口に戻らないと…」

「わかってる!お兄ちゃんは先に行ってていいから」

「お兄ちゃん…うぅ…初めて聞いたぜ…」

アズサのお兄さんは違うところで感動していた。涙を流しながらアズサのお兄さんは行ってしまった。

「立てる?」

「立てるわ…ありがとう」

私は、アズサの手を借りながら立った。アズサは私の背中を払ってくれて笑顔でこちらを見る。

「さぁ行きましょう」

アズサは手を差し出して来た。私はその手を取り手を繋ぎながら私たちは森の入り口…元にいた場所へと戻った。先に行っていたお兄さんが待っていた。

「お兄さん…迷惑をかけました」

私は、お兄さんに会って早々お辞儀をして謝った。すると、お兄さんは痰が絡まったのかガラガラ声で言う。

「いやいや…そんな謝らないでいいから…逆にこっちが強引に行かせようとしていたのが悪かった」

お兄さんは、頭を掻きながら言った。私は頭を上げてお兄さんに笑顔を見せて言う。

「それでは…お互い様ってことでいいですかね?」

「そうだな…」

「兄さんキモい」

突然二人の会話に割り込んできたアズサ。私はびっくりするがお兄さんは慣れているのか顔色変えずに言った。

「あぁ…そうかそうかキモいのか…」

「そうキモい…そんな女の子に対してニアニア…ねぇエマもキモいよね?」

アズサが急に同情を求めて来てびっくりしたがここで違うことを言ってもなんだか空気読めないやつだと思われるから私は頷くしかできなかった。

すると、アズサのお兄さんは泣き崩れた。それほど、精神的ダメージが受けたのだろう。
お兄さんは膝まついて俯いていた。

それを見て何も言わないアズサ。私は不思議に思った。
私は、アズサの耳元で言った。

「ねぇ?アズサ、お兄さん放置でいいの?」

「いいのいいの、あんな兄貴はほっとけばそのうち治るから」

そう言いながら、夕食の準備をしていた。私は辺りを見渡した。草原の方を見ると真っ暗なところもあれば所々に夕日が差し込んでいるところもあった。

木々は生えている森を見ると太陽が眩しく感じた。
私は、アズサの手伝いをした。

「アズサ、ここに薪を置いておくね~」

「あっありがとう。助かるわ~」

前のアズサとは違く、なんだか優しいなぁと感じた。その後も薪を拾いに拾い続けてやがて…

「エマ…」

「何?」

「あなた…集めすぎよ…薪」

「えっ…?」

アズサが見る方向を見ると確かに薪が積み上がっていた。私は夢中になると周りの目が見えなくなるタイプだと実感した。

「あぁ~ごめんやりすぎちゃった」

「まぁ大丈夫!行けるさ!」

突然、テンション下がっていたお兄さんが急に話し始めた。私は驚いてお兄さんを見る。すると、お兄さんは親指を立ててグッドとやっていた。

「そうですか…」

私は戸惑いを隠しながらも言った。すると、アズサが私の方に近づいて来て言う。

「エマ!ご飯できたよ!」

その笑顔は素敵だった。私は、その笑顔に見惚れながら言った。

「わかった~今行くね~」

アズサの料理は抜群に美味しかった。お兄さんはなぜか残飯処理班となっていた。なんだか、かわいそうな感じだった。そして、私たちは広がって寝た。星空を見ているとアズサが私の方を見て言う。

「星空ってこんな綺麗だったけ?」

「そうだよね…まじまじと星空を観察したことなかったわ」

エルフでも長生きをしていても星空をマジマジと見たことがないんだと思った。私は、それで会話が途切れて目を瞑った。すると、魔法にかかったかのように眠りに落ちた。

ー次の日ー

朝起きると頭が痛かった。私は頭を抑えながら起き上がると…

「エマどうしたの?」

「ちょっと頭が痛くて…」

そう言うと、アズサはおでこと私のおでこを合わせて来た。すると、アズサのおでこは冷たかった。

「あなた、すごい熱じゃない…」

アズサは大声で言った。すると、寝起きのお兄さんが言う。

「それは、魔力不足かもしれないな」

あくびをしながら言った。私は疑った。自分は魔力不足などなったことがない…と思ったが今なっている。

アズサは私の腕を引っ張って近くの茂みまで連れて行かれた。

「何よいきなり!」

私が少し大きな声で言うと、アズサが静かにと人差し指を立てて合図してくる。

「目瞑ってて」

私はアズサに言われてそっと目を閉じた。すると、私の唇に何かが近づいてくる。

次の瞬間、唇に柔らかい温かいものが当たった。

「ん…!」

私は思わず声を出してしまう。唇にあたっている時間は10秒ほどだったが長く感じた。
それは、そっと離れていき目を開けると恥ずかしがっているアズサがいた。

「アズサ…」

「エマ…」

「私の初めて奪ったね」

「私のもよ」

私たちは…人生で初めてキスと言うものをしたのだった。


私たちは、騎乗位でしたので周りから見たら何をしているんだと言う体形であった。
私たちは、数秒間見つめあって視線を逸らした。そして…

「いつまでこの状態でいるの?」

「あ、あ、ゴメン」

アズサは謝りながらどいた。なんだかさっきまでの頭痛が無くなった。これが、魔力の口渡しの効果かと思った。

私たちは戻り片付けをする。お兄さんは草原の方を見ていた。

「俺は、もうここでお別れだな」

「じゃぁな兄さん元気で」

私たちは、片付けが終わりダフトへ向かおうとしたがお兄さんは止める。

「なんか、反応薄くね…?一応お前の兄なんだけど?三十年くらい会ってないけど」

「それが何か?」

アズサは冷たい反応で兄を捌いていた。私は見て兄弟がいるとこんな感じなのかと思った。
私たちは、アズサのお兄さんを無視してダフトへ向かった。


ダフトへは昼ごろまで歩いてやっとついた。
ダフトは確かに貴族が住み街だと思った。それは、街の門からだった。

「何よこの豪華さ…」

アズサが言葉を失うのも仕方がない。なぜなら、門が金色と水色で出来ていたからである。

「まぁ…私たちでも馴れるでしょ…」

そう言い私たちは、門の中へと足を踏み入れるのだった。
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