上 下
27 / 45
一章

二十七話 街は元通り

しおりを挟む
私たちは、宿へと帰った。あの後領主の跡地はどうなったかは私たちは知らない。
私は、服を着替えながらアズサに話しかけた。

「ねぇ?アズサはこの街どう思う?」

「え…?どう思うって…まぁ普通の街じゃない」

「えぇ~普通の街なの?アズサはあんなことをされたのに…?」

「私はされたかもしれないけど…それは、あのクソ領主の欲望が強かったかでしょ?」

私は話しているうちに服の着替え終わった。私はベットに座って靴下を履いた。
アズサは、髪を縛りドアを開ける。私はどこに行くのだろうと声をかけるとアズサは笑顔でこちらを見た。

「ちょっと、外の空気を吸いに行こうかなって思って…」

「私も行っていい?」

「ダメ…」

私は勢いよくベットから立ったが、アズサの否定されてしまったので私は再びベットに深く座り込んだ。
アズサは、静かにドアを閉めてどこかに行ってしまった。こんな夜中にどこに行くのだろうか…

私は考え込んだ。その結果、アズサの後を尾行していこうと考えついたのだった。


◆◇◆◇

私は、宿の外に出た。目的は、あの青年に会うことが目的であった。外は冷え切っていた。こんなに寒いとは思わず薄着で来てしまった。私は、草道を歩いていると目の前に人影があった。

私は、視線を前に向ける。すると、そこにいたのはあの青年が立っていた。月の光しか周りに光はなかった。だから、青年の顔はよく見えなかった。

「こんな夜中にどうしたんですか?」

「ちょっと…あなたに会いたくてね」

私が言うと、青年はびっくりした表情をしていた。この表情は見れた。月の光が彼の顔の端を照らしていて少し皮膚が動いていたからだ。

「こんな、犯罪者になんの用があるんですか?」

「それは…」

「ほら、用はないじゃないか。俺はどこへ行かせてもらうよ…もう少ししたら俺は捕まるんだから」

青年は、どこかを見ながら言った。青年は、私の横を通ってすれ違おうとしている。
青年が横を通り過ぎると、なんだか寂しい気持ちが溢れてくる。私は、青年の服の裾を引っ張った。

「なんだよ…離せよ」

「離さないもん…」

「どうしたんだよ…急に…」

青年が急に振り返って来て私の顔を見る。すると、青年の顔は赤くなっていた。

「赤いですよ」

「お前もな」

私たちは、クスクスと笑い合った。青年が、私の一歩近づいて抱いてくる。

「なんですか…いきなり…やめてください…」

私は照れながら言った。すると、青年は抱くのをやめて私の顔を見て言う。

「お前…エルフだったんだな」

私は言われて慌ててフード耳を隠す。だが、彼はフードを取ってきた。私が、フードを直そうとしていると彼は私の腕を掴んだ。

「お前は…してない方が可愛いよ」

私は言われて…なんだか心が熱くなってきた。これが、恋愛というものかと思ってしまった。
私は、赤らんだ顔を隠しながら言った。

「そんなに褒めなくてもいいじゃない…照れるわ…」

彼は、鼻で笑った。私はおかしなことを言ったのだろうかと考えていると…彼は私の頬を触り…

「美しい…」

そう言いながら、唇をつけてくる。私は、恥ずかしくなり目を瞑る。私は、もう少しで触りそうと言うところで私は彼を押した。彼は不機嫌そうな顔をしていた。

「なんだよ、いきなり」

「いや…私考えたのこの続きはあなたの罪を償ってからとね」

私は、人差し指を立てながら唇につけて言った。彼はそっぽ向いた。私は、いけないことを言ってしまったのだろうかと思ったが彼は力強い声で言った。

「そうだな…だが!これは約束だぞ!」

「えぇ…私たちだけの約束よ」

私は、青年と深い約束をした。
私は青年と別れを告げて宿へと戻る。戻る途中茂みがモゾモゾと動いている。私は気味が悪いなと思いながら歩いた。

「イテ…」

その声は、あたりに響いた。なんだか、聞き覚えのある声でもあった。私は恐る恐るその茂みに近づくと…

「わぁあ!」

声をあげて出てきたのは、エマだった。私は胸を撫で下ろした。

「どうして…あなたがここにいる訳?」

「どうしてって…アズサが気になったから?」

エマは、俯いたまま言った。これは…と思いエマに近寄って言う。

「あなた…もしかしてさっきの会話聞いた?」

「…」

エマは無言のままでいた。私は聞いていたなと確信をした。私はエマの頭を優しく叩きながら言った。

「エマのバカ野郎!」

「ゴメンって~」

私は、何度も言いエマは何度も謝ったのだった。

ーーーーーーーーーー

私たちは、朝目が覚めたら外がなんだか騒がしいと思い疲れが取れていない重い体を起こして窓を開けた。すると…そこに広がっていたのは人だかりであった。

「アズサ!アズサ!起きて外がやばいことになってる」

私は、アズサの体を揺らしながら起こした。アズサは、目を擦りながら私の誘導に素直に従い窓へと行く。

「何よこれ」

アズサは、寝起きのガラガラ声で言った。アズサは、何度も目を擦り現実かどうか確かめていた。

「これは…どうなってるのか?」

私が椅子に座りながら言うと外から声が聞こえた。

「あの窓ってエマ様とアズサ様が泊まってる部屋じゃないか!」

「そうね…さっき金髪の長髪が見えたもの」

私は、その会話が耳に入りやばいなと確信した。

「アズサ…この街を出るわよ」

「なんでよ?」

「面倒ごとになりそうだから」

「わかったわ。出る前に最後にいいかしら」

私は首を傾げてアズサを見た。アズサは、笑っていた。


私たちは、裏口から出て宿の表へと行った。途中バレるかもと思ったがギリギリのところでバレなかった。私たちが、向かった先は…

「警察署…」

私は、察してしまった。アズサが中に入り何かを話している。やがて、アズサは出てきて私と目を合わせて警官とどこかへ歩きながら言った。

「ちょっと、行ってくるから中で待ってて」

私は、声をかけようか迷ったが警察署の中に入り私は静かに待った

ー30分後ー

アズサが帰ってきたと思ったら、アズサが連れてきたのは青年だった。私は座っていた椅子を立ち上がって言う。

「アズサ…やるんだね」

「そうね…これが彼を救う唯一の方法だから」

私たちは、彼を見送ることができたのは来客用の場所までだった。彼は、私の前を通る際に小さく会釈をして通って行った。私は何か意味があるのだろうかと思いながら見過ごした。

私は、警察署の外へ出て太陽を手で隠しながら言った。

「行きますか」

「そうね…」

私が、歩き出すとアズサもついて来たがアズサは何度か振り返りながら歩いていた。そんなアズサに私は近づいて言う。

「アズサが心配するほど彼は弱くない…罪を償ったら立派の男として生きてるよ」

私が声をかけるとアズサの顔には笑顔が戻っていた。私も笑顔でアズサのことを見たのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH
ファンタジー
 家柄こそ全て! 名家生まれの主人公は、絶望しながら死んだ。 そんな彼が生まれ変わったのがとある成り上がりラノベ小説の世界。しかも悪役貴族。 名家生まれの彼の心を占めていたのは『家柄こそ全て!』という考え。 新しい人生では絶望せず、ついでにウザい成り上がり共(元々身分が低い奴)を蹴落とそうと決心する。 別作品の執筆の箸休めに書いた作品ですので一話一話の文章量は少ないです。 軽い感じで呼んでください! ※不快な表現が多いです。 なろうとカクヨムに先行投稿しています。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

神殿から追放された聖女 原因を作った奴には痛い目を見てもらいます!

秋鷺 照
ファンタジー
いわれのない罪で神殿を追われた聖女フェノリアが、復讐して返り咲く話。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界に召喚されたぼっちはフェードアウトして農村に住み着く〜農耕神の手は救世主だった件〜

ルーシャオ
ファンタジー
林間学校の最中突然異世界に召喚された中学生の少年少女三十二人。沼間カツキもその一人だが、自分に与えられた祝福がまるで非戦闘職だと分かるとすみやかにフェードアウトした。『農耕神の手』でどうやって魔王を倒せと言うのか、クラスメイトの士気を挫く前に兵士の手引きで抜け出し、農村に匿われることに。 ところが、異世界について知っていくうちに、カツキは『農耕神の手』の力で目に見えない危機を発見して、対処せざるを得ないことに。一方でクラスメイトたちは意気揚々と魔王討伐に向かっていた。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...