私の少ない命あなたなら幸せにしてくれる

mikadozero

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第一章 幼馴染

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時間は、一時間目が終わり合間の休み時間。
俺は、トイレに行こうと向かっていた。すると、前のほうで人だかりができている。トイレに行くついでに誰に集まっているのだろうと覗くと中心にいたのは、葵だった。

いつもの風景か。
俺はトイレに入り用を足した。出てきても、人だかりは絶えない。そんなに葵と一緒にいて楽しいだろうかと手の水気をハンカチで拭きながら廊下を歩いていた。

教室に帰り、残りの休み時間は五分を切っていた。俺は次の準備をしなきゃと思い机の中を漁る。
「次は理科だ」
独り言を言いながら。

隣で見ていた玲奈が不思議そうにこちらを見る。何だろうと思ったが俺は理科の用意を出す。
玲奈が何かを言いたそうな顔でこちらを見ている。俺はまた教科書を忘れたのか?と思いながら言う。

「玲奈、こっちを見てどうしたんだ?」

「いやー…なんといいますか」

「どうした?俺の顔にないかついてるか?」

「そんなことはないんだけど…」

玲奈は渋るように何も言わない。俺は思っていることを口に出す。

「もしかして…教科書忘れたのか?」

「違う…」

「じゃぁ何だ?」

「明人君って…几帳面だなぁと思って…」

「几帳面?俺はガサツなほうだと思うが…」

俺が、言うと玲奈は椅子を俺の机ほうに近づけてきて言う。

「ほら、この机の中」

「机の中?」

「教科書の並びが今日の授業通りになってるの」

「それがどうしたんだ?」

「それが、几帳面だなぁと思って」

玲奈はやがて椅子を自分の席へと戻った。次の瞬間学校のチャイムが鳴る。いつの間にかガラガラだった教室は全員座っているいつも通りになった。

俺は授業のモードへと切り替えるのだった。


ー30分後ー

授業も中盤に入り始めた頃。俺の机に一枚に紙切れが届く。玲奈が小声で言うには…

「葵様かららしいよ」

俺は、聞いて驚いた。あの葵が俺に対して言うことがあるなんて…
もしかして、たまに見ることあるけど目線がきつかったりするのかな…

そんなことを考えながら俺は開く中に書いてあったことは誰にも言えないことだった。

ーアキ君へー

今日の放課後屋上に来てください。大事なことを伝えたいです。
これは、余談なのですがみんなが集まりすぎてなかなかアキ君と話せないです。

ー葵よりー

そんな一言の伝言だった。俺は読んだ瞬間なんだか昔のことを思い出して笑いそうになった。
けれども、教室は静まり返っている。声を出したら誰が出したのかすぐにわかってしまう。

授業が終わり、俺は理科の教科書などをしまっていた。すると、玲奈が目をキラキラさせながらこちらを見てくる。

「なんだよ」

「いや…さっきの紙切れの内容…どんなこと書いてあったの?」

「お前には関係ないことだ」

俺は、玲奈に対してぶっきらぼうに言った。すると玲奈は怒ったのか腕を組んで言う。

「明人君…別に教えてくれてもよくない?」

玲奈はどこか怒っているように感じられた。俺は、少し言い過ぎたかと思いながら席に戻る。その際にも玲奈がピタ付でついてくる。

この状態になった玲奈はめんどくさい。

「どこか行ってくれないか?」

「いやだね!」

玲奈はそっぽ向きながら言った。これは長い戦いになるなそう覚悟したのだった。

ー放課後ー

自分の思っていた以上に放課後というのは早く来てしまうものだった。久々に葵と話せる喜びとドキドキする気持ちがあった。

屋上のドアを開けると葵は手すりに寄り掛かり遠くの景色を見ていた。
髪が風で揺れて…夕日で髪の毛が輝いていた。久々にちゃんと見る彼女は美しかった。

「おい…来たぞ」

俺が、彼女に話しかけると彼女はこちらに振り返った。
彼女は笑顔だった。そのまま歩いてきてその差は二歩差になった。

俺は、内心ドキドキしていた。なにを言われるのかわからない。そんな中彼女が一歩踏み出して俺の耳元でささやく。

「私…実は病気があるんだ」

そう告げられて俺は固まる。彼女は笑顔でこちらを見てくる。俺はどう返せばいいのかわからないまま黙っていると彼女は追撃を入れるように言う。

「しかも…長くて二年…短くて一年半だって」

「そんなの嘘だろ?」

俺はここでやっと声が出た。だが、次の言葉が見つからない。そんな中彼女が言う。

「私の少ない命を…アキ君なら幸せにしてくれるよね?」

彼女はそう言い残し、屋上を去っていった。
俺は、現実を受け止められず膝から崩れ落ちた。

「嘘だぁ!!」

俺はこの広い空に向かってただ叫び続けるしか…
俺には方法がなかっだ。

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