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6.入場

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 パーティー開始時刻になると、国王陛下と王妃様、そして第一王子であるネグロがローズを伴って入場した。
 そこでは既に多くの貴族達が談笑しており、賑やかな雰囲気に包まれている。
 ヴィオレットの両親は、2人に祝福と激励の言葉を残すと、親交のある貴族達に挨拶をする為に先に会場へと向かっていった。
 ヴィオレットとビアンカは王妃様の計らいで婚約発表の際に会場入りすることになっている。
 暫く待機していると貴族達の挨拶や談笑がひと段落ついたらしく、2人のいる控え室に王宮の使用人がやって来た。いよいよ入場の時間だ。

「さあ、行こうかヴィオレット。」
「はい、ビアンカ様」

 2人はお互い手を取り合い立ち上がると使用人に先導されながら控え室から出ていく。
 会場の扉の前に着くと、中から国王陛下の挨拶が聞こえてきた。

「本日は皆に良い報告がある故に、このような場を儲けた。我が息子の婚約の発表だ。この発表は我が王家に、そして王国に更なる平和をもたらすものとなるだろう。」

 国王陛下がそう口にすると、会場からざわめきが沸き起こる。
 国王夫妻の一歩下がった場所で待機しているローズ達も、自分達の婚約発表だと勘違いしたのかどこか浮き足だった表情をしている。

「いよいよだね、ヴィオレット。」

 ビアンカがヴィオレットに小さな声で語しかけたタイミングで、使用人がゆっくりと扉を開いた。
 会場内の視線が一斉にこちらへと注がれる。

「お待たせ致しました、それではご入場ください。」
「はい、わかりました。ではビアンカ様、御手をこちらに。」
「ああ、よろしく頼むよ。」

 使用人の合図と共にヴィオレットはビアンカと共に会場内へと足を踏み入れた。
 男装姿のヴィオレットが、女装姿のビアンカをエスコートする姿を見た瞬間、会場の女性陣から黄色い悲鳴と割れんばかりの拍手が沸き起こった。

「あれは…ヴィオレット様!?」
「キャー!ヴィオレット様の男装、カッコいいですわ!!」
「ビアンカ様のドレス姿、眼福です…!」
「ビアンカ様もとても麗しいですわ…素敵です!」

 ヴィオレットとビアンカはそんな歓声の中、国王陛下と王妃様の元へとゆっくりと歩いていく。

「国王陛下、王妃殿下、本日は私達の為にこのような機会を設けて頂きまして、誠にありがとう御座います。」

 ビアンカがカテーシーをすると、それに続いてヴィオレットも頭を下げる。2人の礼を受け国王陛下はゆっくりと口を開いた。

「よく来てくれた。私は心から君達の婚約を祝福する。そしてこれからは王家の一員として我が息子であるビアンカと、ヴィオレット嬢の2人でこのトリフォリウム家を支えて欲しい。」

 国王陛下の言葉に、会場内にいる貴族達が拍手を送る。その光景を嬉しく思いながら、ヴィオレットとビアンカはそっとネグロとローズの様子を伺った。

 彼らはあり得ないものを見たとでも言いたげに、目を見開いて硬直している。ローズに至っては口をパクパク開けて、戦慄いていた。



「……ど、どうして…?どうして貴方達がわたくし達よりも先に……!?み、認めないわ!!わたくしは絶対に、貴方達の結婚を認めないッ!!」


 ──自分達の婚約発表だと思い込んでいたローズの絶叫が賑やかな雰囲気の会場に響き渡った。
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