6 / 10
6.入場
しおりを挟む
パーティー開始時刻になると、国王陛下と王妃様、そして第一王子であるネグロがローズを伴って入場した。
そこでは既に多くの貴族達が談笑しており、賑やかな雰囲気に包まれている。
ヴィオレットの両親は、2人に祝福と激励の言葉を残すと、親交のある貴族達に挨拶をする為に先に会場へと向かっていった。
ヴィオレットとビアンカは王妃様の計らいで婚約発表の際に会場入りすることになっている。
暫く待機していると貴族達の挨拶や談笑がひと段落ついたらしく、2人のいる控え室に王宮の使用人がやって来た。いよいよ入場の時間だ。
「さあ、行こうかヴィオレット。」
「はい、ビアンカ様」
2人はお互い手を取り合い立ち上がると使用人に先導されながら控え室から出ていく。
会場の扉の前に着くと、中から国王陛下の挨拶が聞こえてきた。
「本日は皆に良い報告がある故に、このような場を儲けた。我が息子の婚約の発表だ。この発表は我が王家に、そして王国に更なる平和をもたらすものとなるだろう。」
国王陛下がそう口にすると、会場からざわめきが沸き起こる。
国王夫妻の一歩下がった場所で待機しているローズ達も、自分達の婚約発表だと勘違いしたのかどこか浮き足だった表情をしている。
「いよいよだね、ヴィオレット。」
ビアンカがヴィオレットに小さな声で語しかけたタイミングで、使用人がゆっくりと扉を開いた。
会場内の視線が一斉にこちらへと注がれる。
「お待たせ致しました、それではご入場ください。」
「はい、わかりました。ではビアンカ様、御手をこちらに。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
使用人の合図と共にヴィオレットはビアンカと共に会場内へと足を踏み入れた。
男装姿のヴィオレットが、女装姿のビアンカをエスコートする姿を見た瞬間、会場の女性陣から黄色い悲鳴と割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「あれは…ヴィオレット様!?」
「キャー!ヴィオレット様の男装、カッコいいですわ!!」
「ビアンカ様のドレス姿、眼福です…!」
「ビアンカ様もとても麗しいですわ…素敵です!」
ヴィオレットとビアンカはそんな歓声の中、国王陛下と王妃様の元へとゆっくりと歩いていく。
「国王陛下、王妃殿下、本日は私達の為にこのような機会を設けて頂きまして、誠にありがとう御座います。」
ビアンカがカテーシーをすると、それに続いてヴィオレットも頭を下げる。2人の礼を受け国王陛下はゆっくりと口を開いた。
「よく来てくれた。私は心から君達の婚約を祝福する。そしてこれからは王家の一員として我が息子であるビアンカと、ヴィオレット嬢の2人でこのトリフォリウム家を支えて欲しい。」
国王陛下の言葉に、会場内にいる貴族達が拍手を送る。その光景を嬉しく思いながら、ヴィオレットとビアンカはそっとネグロとローズの様子を伺った。
彼らはあり得ないものを見たとでも言いたげに、目を見開いて硬直している。ローズに至っては口をパクパク開けて、戦慄いていた。
「……ど、どうして…?どうして貴方達がわたくし達よりも先に……!?み、認めないわ!!わたくしは絶対に、貴方達の結婚を認めないッ!!」
──自分達の婚約発表だと思い込んでいたローズの絶叫が賑やかな雰囲気の会場に響き渡った。
そこでは既に多くの貴族達が談笑しており、賑やかな雰囲気に包まれている。
ヴィオレットの両親は、2人に祝福と激励の言葉を残すと、親交のある貴族達に挨拶をする為に先に会場へと向かっていった。
ヴィオレットとビアンカは王妃様の計らいで婚約発表の際に会場入りすることになっている。
暫く待機していると貴族達の挨拶や談笑がひと段落ついたらしく、2人のいる控え室に王宮の使用人がやって来た。いよいよ入場の時間だ。
「さあ、行こうかヴィオレット。」
「はい、ビアンカ様」
2人はお互い手を取り合い立ち上がると使用人に先導されながら控え室から出ていく。
会場の扉の前に着くと、中から国王陛下の挨拶が聞こえてきた。
「本日は皆に良い報告がある故に、このような場を儲けた。我が息子の婚約の発表だ。この発表は我が王家に、そして王国に更なる平和をもたらすものとなるだろう。」
国王陛下がそう口にすると、会場からざわめきが沸き起こる。
国王夫妻の一歩下がった場所で待機しているローズ達も、自分達の婚約発表だと勘違いしたのかどこか浮き足だった表情をしている。
「いよいよだね、ヴィオレット。」
ビアンカがヴィオレットに小さな声で語しかけたタイミングで、使用人がゆっくりと扉を開いた。
会場内の視線が一斉にこちらへと注がれる。
「お待たせ致しました、それではご入場ください。」
「はい、わかりました。ではビアンカ様、御手をこちらに。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
使用人の合図と共にヴィオレットはビアンカと共に会場内へと足を踏み入れた。
男装姿のヴィオレットが、女装姿のビアンカをエスコートする姿を見た瞬間、会場の女性陣から黄色い悲鳴と割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「あれは…ヴィオレット様!?」
「キャー!ヴィオレット様の男装、カッコいいですわ!!」
「ビアンカ様のドレス姿、眼福です…!」
「ビアンカ様もとても麗しいですわ…素敵です!」
ヴィオレットとビアンカはそんな歓声の中、国王陛下と王妃様の元へとゆっくりと歩いていく。
「国王陛下、王妃殿下、本日は私達の為にこのような機会を設けて頂きまして、誠にありがとう御座います。」
ビアンカがカテーシーをすると、それに続いてヴィオレットも頭を下げる。2人の礼を受け国王陛下はゆっくりと口を開いた。
「よく来てくれた。私は心から君達の婚約を祝福する。そしてこれからは王家の一員として我が息子であるビアンカと、ヴィオレット嬢の2人でこのトリフォリウム家を支えて欲しい。」
国王陛下の言葉に、会場内にいる貴族達が拍手を送る。その光景を嬉しく思いながら、ヴィオレットとビアンカはそっとネグロとローズの様子を伺った。
彼らはあり得ないものを見たとでも言いたげに、目を見開いて硬直している。ローズに至っては口をパクパク開けて、戦慄いていた。
「……ど、どうして…?どうして貴方達がわたくし達よりも先に……!?み、認めないわ!!わたくしは絶対に、貴方達の結婚を認めないッ!!」
──自分達の婚約発表だと思い込んでいたローズの絶叫が賑やかな雰囲気の会場に響き渡った。
12
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる