流血剣士の恩返し

黒狐

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第一章 パーティーの離脱と単独行動 ラディウスside

5.不穏な気配

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 それから暫くラディウスはラント村に留まり、村人達の手伝いをしていた。
 依頼された仕事をこなしたり、作物を狙い現れた盗賊の撃退、時には村の子供達の遊び相手にもなった。

 そんなある日のこと……

「ラディウス、ギルドの人がアンタのことを呼んでいたよ!一度行っておいで。」

 アイラの果樹園を手伝っていると、村の食堂を切り盛りしている女将さんがラディウスを呼びに来た。

「分かった、今行く。」
「じゃあアタシは店の準備をしているからね。後でお昼ご飯、食べにおいで。」
「ああ、お言葉に甘えさせてもらう。」

 ラディウスはアイラと食堂の女将さんに軽く手を振ると、急いでギルドへと向かった。

 ◆

 ギルドの扉を開けたラディウスは、普段とは違う緊張感漂う室内の雰囲気に僅かに動揺しつつ、受付カウンターに向かった。

「ラディウスだ、一体何があったんだ?いつもと様子が違うが……」
「ああっ!ラディウスさんですね!実はですね……ラント村の側にある森林に、S級ランクの魔物が出現したんです!」
「S級ランクが…?」
「はい、毎日村の男性陣が結成した自警団や他の冒険者パーティーが見回っていましたが、今日になって突然……!しかも、どうやらその魔物は複数体いるようなんです!」

 職員の話を聞きながら、ラディウスは険しい表情で黙り込んだ。

(S級ランク…!?滅多に現れない筈の魔物が、何故村の近くに…?)

 そんな彼の姿を見つつ、職員は言葉を続けた。

「現在、貴方の所属しているクレッドさんのパーティーが、こちらに向かっています。ですが、到着まで最短でも2日かかります。ラント村の自警団や、村付近にいる冒険者パーティーでは、S級ランクの魔物を討伐することは不可能です。……その為、クレッドさんのパーティーが到着するまでの数日間、魔物の注意がラント村に向かない様に、遠方から誘導して欲しいのです。」
「成る程……事情は理解した。俺もその依頼を受けよう。」
「ありがとうございます!!では早速手続きをするので、こちらに来てください。」

 ラディウスは真剣な表情で承諾すると、職員と共に部屋の奥へと姿を消した。


 その後、手続きを終えたラディウスはすぐに森林へと向かうことにした。



 ────────────────────

 ここで一旦、ラディウス視点は終わりです。
 次の話はクレッド達、パーティーメンバー視点になります。(時系列は少し前に戻ります。)
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