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第一章 パーティーの離脱と単独行動 ラディウスside
1.離脱
しおりを挟む いきなり何を言い出したんだろうか。
メイベル様は美しいプラチナブロンドを綺麗に巻いており、ドレスも少し大人っぽく、目は紅玉のそれという絶世の美貌の持ち主で。少しきつそうな顔つきも、お化粧が濃いせいで余計そう見えている。
性格もあるのだろう。悪を嫌い正義を重んじる。私とは正反対、というか、もしかして私の嘘八百にそろそろ嫌気がさしてトドメでも刺しに来たのだろうか。
私の沈黙をどう受け取ったのかは知らないが、メイベル様は頭が痛むのかこめかみに指先を当てて少し考えるようにしてから言った。
「……今『リリィクイン』の中で殿下の心象が一番いいのは貴女です。私は、貴女のように場を和ませることも、使用人の粗相を笑って許す事もできません。厳しく律することで、成長すると思うからです」
時々居る、厳しさこそが本当の優しさ、を極めたタイプの人か、と私は即座に理解した。
私にとっては、厳しいも優しいもその時その状況による、としかいえないのだけれど、どんな状況であれど厳しければそれがその人の為になる、と信じている人がいる。
それは間違いじゃない。けれど、正解でもないと私は思っている。少なくとも私は、笑っている記憶の方が頭に残るので、失敗を笑って次に活かすような方法が好きだ。
まぁそれはいい、そこは主義主張の違いだし、国母となるのならその位厳しい方が世の為人の為かもしれない。
それはともかく、否定しなければいけない部分がある。
「おまちください。殿下の心象がいい、などというのは思い込みだと思いますわ。むしろ最悪なのでは無いでしょうか?」
私のせいだとは思っていないが(何せ私は触ってもいない)、リリィクインが集まる場で、必ず私の近く、ないしは私が口を出せそうな相手の物が壊れたり台無しになったりしているのだ。
私を王太子妃に、ひいては王妃にしてしまっては国庫が居るだけで傾くなんて事態もあり得る。そういう意味でも丁重に私はこの場を遠慮して去りたいものだ。最後の晩餐会までは居なければいけなくなってしまったけれど。
「イリア様が誰を擁立したかはすぐに分かります。それに……本当にお気づきではないんですの?」
「何がです?」
「貴女が話すと、殿下は笑っておられます」
笑っている? どこをどう見ても鉄面皮で声の抑揚も少ないあの殿下が、いつ、どこで、何を笑ったというのだろう。
もし笑った可能性があるとするのなら……。
「それは呆れ笑いという物ではございませんか?」
「……一番のライバルがこんなに鈍いだなんて。あなた、『リリィクイン』としてもう少し王太子殿下に興味をお持ちになられた方がよろしいのではなくて?」
できれば辞退したいので今後もそれは無いかと思います、とはメイベル様の気迫に圧されて言えなかったけれど。
「まぁ……、ライバルだなんて、そんな。そうですね、でも、笑ってくださっているかどうかは……もう少し注意して見てみることにしますわ」
にっこり笑って当たり障りなく会話を終わらせようとしたが、メイベル様は深いため息を吐くと、もう一度だけ強いまなざしで私を見詰める。
「とにかく、貴女には負けません。私は必ず王太子妃に選ばれてみせます」
イリア様の手前、どうぞどうぞ、とも言えない私は、最後はこれしか言えなかった。
「えぇ、お互い頑張りましょうね」
精いっぱいの言葉だったが、思いっきり私を敵視しているメイベル様にとって、これは酷い嫌味に聞こえたのかもしれない。
終始しかめっ面のまま、メイベル様は月下宮を出た。
メイベル様は美しいプラチナブロンドを綺麗に巻いており、ドレスも少し大人っぽく、目は紅玉のそれという絶世の美貌の持ち主で。少しきつそうな顔つきも、お化粧が濃いせいで余計そう見えている。
性格もあるのだろう。悪を嫌い正義を重んじる。私とは正反対、というか、もしかして私の嘘八百にそろそろ嫌気がさしてトドメでも刺しに来たのだろうか。
私の沈黙をどう受け取ったのかは知らないが、メイベル様は頭が痛むのかこめかみに指先を当てて少し考えるようにしてから言った。
「……今『リリィクイン』の中で殿下の心象が一番いいのは貴女です。私は、貴女のように場を和ませることも、使用人の粗相を笑って許す事もできません。厳しく律することで、成長すると思うからです」
時々居る、厳しさこそが本当の優しさ、を極めたタイプの人か、と私は即座に理解した。
私にとっては、厳しいも優しいもその時その状況による、としかいえないのだけれど、どんな状況であれど厳しければそれがその人の為になる、と信じている人がいる。
それは間違いじゃない。けれど、正解でもないと私は思っている。少なくとも私は、笑っている記憶の方が頭に残るので、失敗を笑って次に活かすような方法が好きだ。
まぁそれはいい、そこは主義主張の違いだし、国母となるのならその位厳しい方が世の為人の為かもしれない。
それはともかく、否定しなければいけない部分がある。
「おまちください。殿下の心象がいい、などというのは思い込みだと思いますわ。むしろ最悪なのでは無いでしょうか?」
私のせいだとは思っていないが(何せ私は触ってもいない)、リリィクインが集まる場で、必ず私の近く、ないしは私が口を出せそうな相手の物が壊れたり台無しになったりしているのだ。
私を王太子妃に、ひいては王妃にしてしまっては国庫が居るだけで傾くなんて事態もあり得る。そういう意味でも丁重に私はこの場を遠慮して去りたいものだ。最後の晩餐会までは居なければいけなくなってしまったけれど。
「イリア様が誰を擁立したかはすぐに分かります。それに……本当にお気づきではないんですの?」
「何がです?」
「貴女が話すと、殿下は笑っておられます」
笑っている? どこをどう見ても鉄面皮で声の抑揚も少ないあの殿下が、いつ、どこで、何を笑ったというのだろう。
もし笑った可能性があるとするのなら……。
「それは呆れ笑いという物ではございませんか?」
「……一番のライバルがこんなに鈍いだなんて。あなた、『リリィクイン』としてもう少し王太子殿下に興味をお持ちになられた方がよろしいのではなくて?」
できれば辞退したいので今後もそれは無いかと思います、とはメイベル様の気迫に圧されて言えなかったけれど。
「まぁ……、ライバルだなんて、そんな。そうですね、でも、笑ってくださっているかどうかは……もう少し注意して見てみることにしますわ」
にっこり笑って当たり障りなく会話を終わらせようとしたが、メイベル様は深いため息を吐くと、もう一度だけ強いまなざしで私を見詰める。
「とにかく、貴女には負けません。私は必ず王太子妃に選ばれてみせます」
イリア様の手前、どうぞどうぞ、とも言えない私は、最後はこれしか言えなかった。
「えぇ、お互い頑張りましょうね」
精いっぱいの言葉だったが、思いっきり私を敵視しているメイベル様にとって、これは酷い嫌味に聞こえたのかもしれない。
終始しかめっ面のまま、メイベル様は月下宮を出た。
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