(完結)不思議な図書館へようこそ。〜少女ととある本のお話〜

黒狐

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青年side

世界を超える(完)

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「…ここは。」

 次に目を開けた時、辺り一体は宇宙空間のような場所だった。
 物語の中で見たことの無い初めての場所に、俺は思わず驚いてしまった。
 そんな俺の前に突如、背の高い女性が現れた。

「お前は自身がいた物語の結末を変えてしまった。…故に、お前は2度とあの世界へと戻ることは出来ない。だがしかし、此度の物語は非常に興味を唆られた。だから、そうだな…。お前の願いをたったひとつだけ叶えてやろう。何か希望があれば申してみるがいい。」

 どこか不遜で、威厳のあるその物言いに、俺は思わずその場に跪いた。

「俺の望みはただ1つ……たったひとり、あの少女を救いたいんだ。」
「……ほう?それは何故だ?」
「彼女は孤独で、ずっとひとりで泣いていたんだ。そんなあの子の涙を掬い上げてあげたいと、そう思ったんだ。だから俺は、幻想本の中から彼女の下現実に行く力を、世界境界を超える力が欲しい。」

 女性は俺の言葉に少し考える素振りを見せたあと、ゆっくりと口を開いた。

「ふむ、成程な……いいだろう。お前の願い、叶えてやろう。さぁ、世界を超える力を使いあの娘を救うがいい!」

 女性が俺に向けて手を翳すと、眩い魔力が発せられ、ゆっくりと身体に流れ込んできた。
 俺は魔力を光の粒子の状態で身体に纏い少女のいる現実へと飛び立った。

 ◆

 降り立った場所は夢の中でみた、巨大な図書館だった。
 数多の物語が保管されているそこに降り立つと、彼女を探す為に歩き出した。
 暫くの間歩みを進めると、ふと懐かしいような、暖かな気配を感じた。
 思わず足を止めてそちらを見る。

 ───薄柳色の髪に、森の木々のような優しいドレス。その手には先程まで俺がいた、物語の本が大事そうに抱えられていた。

「やっと見つけた、俺の大切な人。」

 俺の声を聞いた少女は、目に溢れんばかりの涙をためながらこちらに駆け寄ってきた。
 彼女がこれから先の未来で幸せになれるように、2度と1人ぼっちにしないと決意して、俺はそっとその身体を抱きしめた。

 ◆

 ───これより先は彼らだけの物語。

 ヴィヴリオ・ポリスと物語の青年は、こうして1つの結末を迎えましたとさ。

   


         めでたしめでたし。
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