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2章.断罪 ※
22.咎人の烙印
しおりを挟むそれから1ヶ月間、天使達に拷問と凌辱を繰り返されたアクロアは、心身ともにボロ雑巾のようになっていた。
色白ながら鍛えられた肌は赤や青黒い痣が浮かび、夥しい数の裂傷が残っている。無理矢理ちぎられた翼もごく一部のみが残るだけで、非常に無残な姿だった。
それでも彼は、再びモリオン達の元へと帰る為に何とか断罪を耐えきった。
「ぐふっ……はぁっ……はぁっ……」
アクロアは両手両足を鎖で拘束された状態で、断罪部屋の椅子に座らされていた。そして彼の前には悠然とした表情のレべリオが立っている。
「ふふっ、1ヶ月間よく耐え抜いたな。よくやった、望み通りお前の刑を軽くしてやろう。」
レべリオはそう言うと、アクロアの顔を掴み上げる。
「ぐっ……」
「しかし、後一つだけやらなければならないことがある。その準備をするから待っていろ。」
「ぐ、ふぅっ……何をするつもりだ……」
アクロアは恐怖に怯えながらも、レべリオを睨みつける。
「お前には一目でわかる罰を与えてやろうと思ってね。その前に…まずはその醜く残った翼を根本から切り落としてやろう。」
レべリオはそう言いつつ剣を取り出すと、アクロアの背中にある歪に千切れた翼を根元の方からざっくりと切り落とした。
「ぐああ゙ぁ あ゙あ゙ッ!!!」
アクロアはあまりの痛みに絶叫し、床に転がり落ちる。
「ふははっ……痛いか?でもまだまだ終わりじゃないぞ。」
レべリオはそう言うと、アクロアの腕を持ち無理矢理立たせると、壁際に連れて行く。
「ぐっ……な、なんだ……?」
「その身体に咎人の紋様を刻んでやる。」
レべリオは壁に手をかざして魔法陣を起動させた。淡い光が放出されたかと思うと、アクロアにどんどん集約されていく。
「ぐあっ……!?」
次第にアクロアの身体に吸収された光は、ジワジワと胸部と背部に紋様を描いて定着した。
「これでよし…この紋様は咎人の烙印と言ってな、堕天の代わりに編み出された2番目に厳しい罰だ。罪を犯した天使に刻む、永遠に消えることの無い紋様だ。さて、これで断罪は終了した。気高く美しくあり続けた天使、アクロアよ…今から地上に返してやろう。」
レべリオはそう言うと、アクロアの身体を拘束していた鎖を外した。
「ぐっ……れ、レベリオ……どういうつもりだ?」
突然鎖から解放されたアクロアは、戸惑いの表情をレベリオに見せる。
「言っただろう?ここから解放してやるって。さぁ、天界から地上に落としてやろう。」
レベリオはそう言うと、ボロボロのアクロアを担ぎ上げると断罪部屋の外へと連れだされた。少し歩いた場所にある転移用魔法陣まで連れて来ると、そのまま身体を宙に投げ飛ばした。
「なっ……!」
「さらばだ、アクロアよ。」
レべリオはそう言い残すと、その場から立ち去っていった。
「うわぁあ゙ぁぁっ……!」
転移魔法陣を抜けた先は、屋敷近くの森の上空だった。
しかしアクロアは、翼が切断されている為飛ぶことすら出来ない。全身に走る痛みと落下する勢いで次第に意識が遠のいて行き、遂には完全に気を失ってしまった。
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