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1章.翼のない悪魔
12.初めてのキス
しおりを挟むアクロアは食事を終えた後、モリオンの部屋を訪れることにした。今日の仕事は余裕を持って早朝にほぼ終わらせている、新たな仕事が入っても明日に回すくらいの余裕はある。何の問題もないだろう。
「モリオン、アクロアだ。少し部屋に入ってもいいか?少し話をしたいんだ。」
モリオンの部屋の前に立ち、軽くドアをノックする。
アクロアは、そういえば自分から彼の部屋を訪れたことはなかったなと考えていた。
少しすると中から返事があった為、ドアを開いて部屋の中へと入った。
モリオンの部屋は、全体的に落ち着いた色合いで纏められ、様々な植物が飾られた美しい空間だった。彼が来る前は備え付けの家具しか無かった筈だ。
となるとセドニーが、モリオンの好みを反映させて家具を調達したのだろう。
悪魔らしくない綺麗な内装に改めて驚きつつ、ベッドの上に座って本を読むモリオンの隣に腰掛けた。
「随分と部屋の様子が様変わりしたな、落ち着いた雰囲気で、何より綺麗だ。」
「ありがとう、これは俺の趣味なんだ。家具は、セドニーが準備してくれた。」
「やはりそうなのか……。この部屋に飾ってある植物は?」
「だんだん、畑で野菜を育てるのが楽しくなってきてな、野菜以外の花や植物も育てて見たくなった。だから自分の部屋にもポットを置いているんだ。」
モリオンは楽しげな様子でアクロアに話した。
好きなことを見つけられたのは、彼にとって良い変化だ。以前より生き生きして来た彼を見ていると、自然と心が癒されていくようだと、アクロアは感じていた。
彼の顔を見つめていると、唐突にモリオンが質問を返してきた。
「アクロアは、何か好きなものとかあるのか?」
「私か?そうだな……。強いて言えば甘いもの、だろうか。」
「そうなのか、なんだか意外だ。」
「…そうだろうか?」
「あぁ、とても綺麗で美しくて…完璧に見えるアクロアにも、好き嫌いがあるんだって。それが知れて嬉しい。」
モリオンはそう言って微笑む。その笑顔を見たアクロアは思わずドキッとしてしまう。
(やっぱりモリオンには敵わないな……。)
アクロアはそう思いながら、モリオンの頭を優しく撫でた。
「えっと、アクロア……?」
モリオンは驚いた表情をすると、照れ臭そうな表情に変わる。
そんなモリオンを見て、愛おしいと思うと同時に、抱きしめたい衝動に駆られる。
「モリオン……好きだよ。」
アクロアはそう囁くと、彼の唇にそっと口づけをした。最初は驚いていたモリオンだったが、次第に受け入れてくれたのか目を瞑ると静かに身を委ねてくれた。
そっと唇を離すと2人の間にスッと銀色の糸が引く。
「モリオン……」
「ぁ、アクロア……」
2人の視線が重なると再び口付けを交わす。何度も何度も、互いの存在を確かめるように口付けを交わした。
「モリオン……今日は私の部屋で一緒に寝ないか?」
しばらくした後でアクロアはモリオンを6枚の翼でそっと抱き寄せると、耳元で甘く囁いた。
「……喜んで。」
モリオンは嬉しそうに返事をすると、アクロアの首に腕を回した。
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