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1章.翼のない悪魔
9.不穏な気配
しおりを挟むアクロアの屋敷で暮らし始めたある日の事、モリオンは彼の部屋に呼び出されていた。
「アクロア、一体どうしたんだ?」
執務用の机に近づくと、様々な書類に目を通していたアクロアがふと顔を上げた。
「来てくれたか、モリオン。お前も大分ここに馴染んできたな。」
「ありがとう…これも全て、アクロアのおかげだ。」
モリオンが素直に感謝を述べると、アクロアは嬉しそうに微笑んだ。しかし普段の状況とは違うのか、すぐに真剣な表情に戻したアクロアは、モリオンに向けて話し始めた。
「……実は、今日は大事な話があってな。」
「何か、あったのか?」
「モリオン、……今後はなるべく外に出ないで欲しいんだ。畑の野菜を世話する際も必ず1人にならないこと、私かセドニーが側にいる時だけにしてくれ。」
その言葉を聞いたモリオンは驚きで一瞬固まってしまったが、すぐに我に返ると慌てて理由を聞き返した。
「アクロア、それはどういう意味なんだ!?……ぁ、もしや…」
「ああ、粗方モリオンが想像していることで間違っていない。最近、天使達の悪魔狩りが活発化している。いくら私の管理下にいたとしても、お前は悪魔だ。更に魔力も無いとなれば、天使達の恰好の獲物だ。捕まってしまえば殺されるか実験台にされるかもしれない。だからこれからは身を守る為、1人で外に出ないように…分かったな。」
モリオンはその言葉を聞くと、ぶるりと身震いをした。
「そういうことなら、理解した……」
モリオンは小さく呟くと、アクロアに頭を下げて部屋を出ようと立ち上がる。
「あぁ、そうだ。」
声をかけられ振り向くと、アクロアがこちらに向かって歩いてきていた。
「これを首にかけておけ。」
手渡されたのは首飾りだった。
透明な宝石の真ん中には羽の模様が刻まれている。光を反射したそれはキラキラと美しい輝きを放っていた。
「モリオン専用のお守りだ。私の魔力を込めてあるから、多少は効果があるはずだ。」
「そんな……!こんなに貴重な物、俺は貰えない……!」
「いいんだ。持っていてくれ。」
「でも……!」
「……頼む。これはお前を守る為なんだ。天使の中には、お前が私の管理下だと知らない奴や、知っていながら仕掛けて来る馬鹿がいるかもしれない。だから、お願いだ。」
そこまで言われてしまうと断る事が出来なかった。
「わかった……。」
モリオンはそう言うと手を伸ばし、首飾りを受け取った。キラキラと輝くそれを首にかけると、アクロアは満足げに微笑んでモリオンの頭をそっと撫でた。
「ふむ、やはりよく似合っている。…ではそろそろ昼食を食べようか。」
「あぁ、セドニーと準備していたから、すぐに食べられるぞ。」
モリオンはそっとアクロアの手をひくと、ダイニングに一緒に歩いていった。
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