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犬神
忠義
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犬神が、ポタリと手に持ったおぞましい物を落とす。
歯をむき出しにして「ウウーッ」と、犬のように紫檀に敵意むき出しの威嚇の声を上げる。
痩せた人間の男の姿をしているが、中身は犬同然。
飼い主の怨念を晴らす時に、化け猫は、飼い主の姿に変じて憎い相手の前に現れると聞いたことがある。
では、あの犬神の姿も、死んだという犬神の主の姿か。
「しかし、晴明よ。お前が儂に任せる時は、話し合いの余地ない状況が多いと思うのじゃが?」
「ふふ。当然だ。それが紫檀の修行になる。一石二鳥じゃ」
軽く笑う晴明に、紫檀はため息をつく。
すうっと紫檀の前から晴明は姿を消す。
結界を張って、そこへ入ったのであろう。
「ほんに、狐使いの荒いやつじゃ」
紫檀は、目の前の犬神へと集中する。
まあ、遊び甲斐は、ありそうな奴だ。妖力は高い。
だが、やはり気に喰わない。
「のう。犬神よ。主抜きで理性という物を保てはしないものか?」
これほどの妖力だ。知性も、並みの妖よりは高いはずだ。
では、なぜ自分で考えて判断しない? 白児のような眷属もいるような妖であるのに。
「うるさい。狐風情が。お主のような野良に『忠義』が理解できるはずもない」
忠義ときたか。
主を守り忠誠を誓い、尽くす想い。
このように、主亡き後に制御を失って村人を貪り喰う姿が忠義とな?
それとは違うような気がするのだが……。まあ、本人がそう信じているのだろう。
どす黒い霧のような妖力が、紫檀の周囲に渦巻く。
紫檀の浄化の妖力は、犬神の妖力を簡単に跳ね返す。紫檀が犬神へ狐火を放てば、犬神が、紫檀の狐火を手のひらで握りつぶす。
「これは、面白い」
犬神の呪いを根源とした妖力と、紫檀の稲荷神の加護を受けた浄化の妖力は、面白いように反発する。
互いに打ち消し合う力。
「ふざけるな! 狐め!」
犬神が紫檀を捕まえようと殴りかかる。
紫檀は、軽やかに避けながら、犬神へ殴りかかる。犬神は、紫檀の拳を捕まえて、そのまま投げ飛ばす。
紫檀は、クルリと身を翻して体制を整えようとするが、着地点を狙って白児が、手に持った槍で突いてくる。
「なんとなんと連携の取れた動きじゃな。良きかな」
白児の槍の上に立つ紫檀は、カラカラと笑う。
「だが、まだヌルイ。やはり、晴明と戦ってみたいのう」
紫檀の目が光る。
周囲の空気がピリリと引き締まる。
「さあ、犬神よ。狐の力を存分に味わえば良い」
犬神の前で、紫檀は大きな黒狐に変じる。
ニィと笑った黒狐の顔に、犬神は恐怖を覚える。
無数の狐火。
狐火にすっかり囲まれた犬神は、逃げ場を失う。
健気にも、白児は、犬神の前に立ち、犬神を庇おうとする。
「ふふ。忠義と言うならば、その仔犬の方がよっぽど忠義じゃ」
悠然と立つ黒狐、紫檀。
尾を揺らめかせながら犬神を見下ろす。
歯をむき出しにして「ウウーッ」と、犬のように紫檀に敵意むき出しの威嚇の声を上げる。
痩せた人間の男の姿をしているが、中身は犬同然。
飼い主の怨念を晴らす時に、化け猫は、飼い主の姿に変じて憎い相手の前に現れると聞いたことがある。
では、あの犬神の姿も、死んだという犬神の主の姿か。
「しかし、晴明よ。お前が儂に任せる時は、話し合いの余地ない状況が多いと思うのじゃが?」
「ふふ。当然だ。それが紫檀の修行になる。一石二鳥じゃ」
軽く笑う晴明に、紫檀はため息をつく。
すうっと紫檀の前から晴明は姿を消す。
結界を張って、そこへ入ったのであろう。
「ほんに、狐使いの荒いやつじゃ」
紫檀は、目の前の犬神へと集中する。
まあ、遊び甲斐は、ありそうな奴だ。妖力は高い。
だが、やはり気に喰わない。
「のう。犬神よ。主抜きで理性という物を保てはしないものか?」
これほどの妖力だ。知性も、並みの妖よりは高いはずだ。
では、なぜ自分で考えて判断しない? 白児のような眷属もいるような妖であるのに。
「うるさい。狐風情が。お主のような野良に『忠義』が理解できるはずもない」
忠義ときたか。
主を守り忠誠を誓い、尽くす想い。
このように、主亡き後に制御を失って村人を貪り喰う姿が忠義とな?
それとは違うような気がするのだが……。まあ、本人がそう信じているのだろう。
どす黒い霧のような妖力が、紫檀の周囲に渦巻く。
紫檀の浄化の妖力は、犬神の妖力を簡単に跳ね返す。紫檀が犬神へ狐火を放てば、犬神が、紫檀の狐火を手のひらで握りつぶす。
「これは、面白い」
犬神の呪いを根源とした妖力と、紫檀の稲荷神の加護を受けた浄化の妖力は、面白いように反発する。
互いに打ち消し合う力。
「ふざけるな! 狐め!」
犬神が紫檀を捕まえようと殴りかかる。
紫檀は、軽やかに避けながら、犬神へ殴りかかる。犬神は、紫檀の拳を捕まえて、そのまま投げ飛ばす。
紫檀は、クルリと身を翻して体制を整えようとするが、着地点を狙って白児が、手に持った槍で突いてくる。
「なんとなんと連携の取れた動きじゃな。良きかな」
白児の槍の上に立つ紫檀は、カラカラと笑う。
「だが、まだヌルイ。やはり、晴明と戦ってみたいのう」
紫檀の目が光る。
周囲の空気がピリリと引き締まる。
「さあ、犬神よ。狐の力を存分に味わえば良い」
犬神の前で、紫檀は大きな黒狐に変じる。
ニィと笑った黒狐の顔に、犬神は恐怖を覚える。
無数の狐火。
狐火にすっかり囲まれた犬神は、逃げ場を失う。
健気にも、白児は、犬神の前に立ち、犬神を庇おうとする。
「ふふ。忠義と言うならば、その仔犬の方がよっぽど忠義じゃ」
悠然と立つ黒狐、紫檀。
尾を揺らめかせながら犬神を見下ろす。
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