上 下
25 / 59

ロミオの暴走

しおりを挟む
『生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ』

いや、俺、ジュリエットだし、ハムレットじゃないし。

 仮死設定で舞台に転がる今。本来ならば、パリス役のマキノが倒されて、ロミオ役のフランネが俺の遺体の前で泣きながら自殺して、その後で起きて、悲観して死ぬ予定なのだが。

 このまま死んでたら、俺本当に死んじゃわない? 今、生き返って起きるべきじゃない?

 マキノが必死で戦ってくれているが、フランネの殺意はすごそうだ。

「ま、まあ、これはどういう事なのですか??」

俺は意を決して起きてみる。

「ジュリエット、生き返ったか!!」

 パリス・マキノが抱きついてくる。
 上手いな、アドリブ。

「おのれジュリエットやはり心変わりしていたのだな!! 許さん!!」

おい、ロミオよ。最愛の恋人ジュリエットが生き返ったのに、何だその態度は。まだ、攻撃を止めない気か?

「ロミオ様、誤解です。けしてそのような心では……」

俺がアドリブのセリフを言う前に、ツボの破片が飛んでくる。

 頬をかすめてツボの破片は、舞台上に転がる。
 ツウと、頬を流れ落ちる血。破片で怪我をしたのだろう。痛い。

「ロミオ!! てめえには、絶対にジュリエットは渡さん!!」

 俺の傷を見て激高するパリス。
 もう、筋書きはめちゃくちゃだ。

「パリス様、お話も聞いて下さらず私を憎むロミオ様。その短絡的な考えには、うんざりしましたわ。そもそも、喧嘩で人を殺めるなんて考えてみれば、なんて乱暴な!!」

筋書きがめちゃくちゃなら、もう、俺は保身に走っていいだろう。
 
「お味方いたします」

俺は、すっくと立って、パリスの横に立つ。

 観客席は、観たこともない展開のロミオとジュリエットに歓声を上げている。
 先生方は、ざわついているが……。

 二人がかりでロミオをなんとか止めて。
 俺への攻撃を諦めたのか、フランネは、自害する演技をして倒れた。

「ああ、俺ももう駄目です。どうやらロミオから受けた傷が、深かったようです」

 パリス・マキノが、突然説明しながら倒れる。
 
 じゃあ、もういいのかな?

「ああ、二人とも亡くなってしまったのね」

 ジュリエット俺も、さめざめ泣きながら、自害の演技をして、マキノの上に倒れ込む。

 そう、全ては、この茶番を早急に終わらせるため。無理やりにでも、全員死亡の状況に持っていくのだ。


 俺が死んだ演技を見て、慌ててロレンス・リンネが舞台袖から飛び出てくる。

「な、なんという悲劇!! ああ」

 頭を抱えて嘆くロレンスに照明が当たって、幕は引かれた。

 いや、喜劇だろ。これ。

「フランネ、お前、どういうつもりだ!!」

マキノがフランネの胸倉をつかむ。

「次の舞台があります。場所を移動しましょう」

リンネが冷静にそう言った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

婚約破棄された悪役令嬢は男装騎士になって推しを護ります!―女嫌いの王太子が溺愛してくるのは気のせいでしょうか―

イトカワジンカイ
恋愛
「私が王都までお守りいたします!殿下は私を男だと思ってますからバレなきゃ大丈夫ですよ」 スカーレットは唖然とする父と義弟にそう言い放った。 事の経緯としては、先日婚約者デニスに婚約破棄された際にテンプレながら乙女ゲー「マジらぶプリンセス」の悪役令嬢に転生したことをスカーレットは思い出す。 騎士の家系に生まれたスカーレットは並みの騎士よりも強いため 「もうお嫁に行けないし、こうなったら騎士にでもなろうかしらハハハハハ…」 と思いながら、実家の屋敷で過ごしていた。 そんなある日、偶然賊に襲われていた前世の推しキャラである王太子レインフォードを助ける。 ゲーム内でレインフォードの死亡イベントを知っているスカーレットは、それを回避するため護衛を引き受けようとするのだが、 レインフォードはゲームの設定とは違い大の女嫌いになっていた。 推しを守りたい。だが女であることがバレたら嫌われてしまう。 そこでスカーレットは女であることを隠し、男装して護衛をすることに…。 スカーレットは女であることを隠し、レインフォードの死亡イベントを回避することができるのか!? ※世界観はゆるゆる設定ですのでご了承ください ※たぶん不定期更新です ※小説家になろうでも掲載

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...