16 / 19
ととのう(サウナとマッスル)
しおりを挟む
本屋の話をしているのに、何を血迷ったか! そう叱られそうだが、今回はサウナの話。
俺は、日ごろのストレスを解消し、身も心も整えるつもりでサウナに向かった。
そう。
これ以上、あのマッスル脳筋思考に流されないために、自分を取り戻すのだ。
そのためには、並みのサウナでは足りない!
だから、ネットで調べて『世界大会級!!』とキャッチコピーがついているサウナへと足を向けたのだ。
世界大会? そういう疑問符は、捨てきれない。
サウナに世界大会も何もないだろうと思うのが普通だ。
サウナの世界大会。
サウナルームが広いとか? 使っている素材が豪華でファビュラスな感じ?
えっと……他に世界大会と言われそうな要素は?
ああ、最北端にあるとか……景色が良いとか……後は、場所が高い位置にあるとか……。
熱すぎるのは、ちょっと困るかな。それは、逆に健康に悪そうだ。
様々な想像を膨らませて、ワクワクして来たのだが、想像していたどれもが当てはまらない。
あれ? 普通のサウナだ。
『サウナ』と言われて、八割か九割の人が想像しそうな、普通の小さな部屋。
細長く、木の段差が部屋の端に設置されて、そこに座れるようになっている。
部屋の端には、熱源と思われる熱く熱された石。そこに水をかければ、ジュウウウと音を立てて水蒸気が上がる。
?? 世界とは?
これは、キャッチコピーに騙されたかな?
そう苦笑いしながら、俺はごく普通に他のお客さんと一緒にサウナを楽しむ。
ド級だの絶品だの強烈な言葉で誘っている商品を買ってみれば、拍子抜けするほど普通だったなんてことは、よくあることだ。
この間はなんだっけ?
究極のタレ! これさえあれば、どんな物も美味くなる! なんて言葉にスーパーで思わず買ってしまったのだが、ただの焼き肉のタレだった。
落ち着いてよく成分を見てみれば、家ですでに使っていた焼き肉のタレとほとんど成分表示が変わらない。
だが、訴えようにも、『究極』なんて抽象的な言葉。作った本人が「これこそ究極なんです!」と言い切ってしまえば、それに反論なんて出来そうにない。
本因坊さんなら、キャッチコピーを正しく読むためには、どんな筋肉が必要だというのだろうか……
いかんいかん。
完全に思考がマッスル寄りになってきている。
要らないのだ。マッスルは。
キャッチコピーを正しく読み取るためには、筋肉が必要なわけではない!!
冷静な判断! それ一択だろう。
普通のサウナで少しも整わずに、マッスルに流されそうになってると、サウナ室の扉が開く。
「お待たせいたしました!!」
なんだがムキムキのお兄さんが、サウナに入ってくる。
黒いティーシャツに赤いハチマキ。
すごく美味いラーメンを作りそうな出で立ちのお兄さん。
掃除の時間なのだろうか。
「今から、世界大会経験の技を披露いたします!!」
ムキムキのお兄さんが宣言する。
このサウナの常連らしき客が、「待っていました!」と歓声をあげて喜んでいる。
おっと、どうやらこのサウナの「世界大会」要素は、このお兄さんの『技』にあるようだ。
仁王立ちになるお兄さん。
熱源の石に水を素早くかけたお兄さんは、その卓越した上腕二頭筋を活かして猛烈なスピードでタオルで扇ぐ。
アウフグーツ
ロウリュ、つまり、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させろ。それを扇ぐ技、それがアウフグーツ。
お兄さんの世界大会級のアウフグーツで扇がれた熱風が、サウナ客である俺たちを襲う。
蒸気を含んだ強烈な熱風は、俺たちの日ごろのストレスや雑念を、マッスルに引っぺがしていく。
こ、これは整う……。
予想の斜め上の熱風サウナは、満喫できたが、俺の心は晴れなかった。
くっそう! 結局、すべては筋肉かよ!!
俺は、日ごろのストレスを解消し、身も心も整えるつもりでサウナに向かった。
そう。
これ以上、あのマッスル脳筋思考に流されないために、自分を取り戻すのだ。
そのためには、並みのサウナでは足りない!
だから、ネットで調べて『世界大会級!!』とキャッチコピーがついているサウナへと足を向けたのだ。
世界大会? そういう疑問符は、捨てきれない。
サウナに世界大会も何もないだろうと思うのが普通だ。
サウナの世界大会。
サウナルームが広いとか? 使っている素材が豪華でファビュラスな感じ?
えっと……他に世界大会と言われそうな要素は?
ああ、最北端にあるとか……景色が良いとか……後は、場所が高い位置にあるとか……。
熱すぎるのは、ちょっと困るかな。それは、逆に健康に悪そうだ。
様々な想像を膨らませて、ワクワクして来たのだが、想像していたどれもが当てはまらない。
あれ? 普通のサウナだ。
『サウナ』と言われて、八割か九割の人が想像しそうな、普通の小さな部屋。
細長く、木の段差が部屋の端に設置されて、そこに座れるようになっている。
部屋の端には、熱源と思われる熱く熱された石。そこに水をかければ、ジュウウウと音を立てて水蒸気が上がる。
?? 世界とは?
これは、キャッチコピーに騙されたかな?
そう苦笑いしながら、俺はごく普通に他のお客さんと一緒にサウナを楽しむ。
ド級だの絶品だの強烈な言葉で誘っている商品を買ってみれば、拍子抜けするほど普通だったなんてことは、よくあることだ。
この間はなんだっけ?
究極のタレ! これさえあれば、どんな物も美味くなる! なんて言葉にスーパーで思わず買ってしまったのだが、ただの焼き肉のタレだった。
落ち着いてよく成分を見てみれば、家ですでに使っていた焼き肉のタレとほとんど成分表示が変わらない。
だが、訴えようにも、『究極』なんて抽象的な言葉。作った本人が「これこそ究極なんです!」と言い切ってしまえば、それに反論なんて出来そうにない。
本因坊さんなら、キャッチコピーを正しく読むためには、どんな筋肉が必要だというのだろうか……
いかんいかん。
完全に思考がマッスル寄りになってきている。
要らないのだ。マッスルは。
キャッチコピーを正しく読み取るためには、筋肉が必要なわけではない!!
冷静な判断! それ一択だろう。
普通のサウナで少しも整わずに、マッスルに流されそうになってると、サウナ室の扉が開く。
「お待たせいたしました!!」
なんだがムキムキのお兄さんが、サウナに入ってくる。
黒いティーシャツに赤いハチマキ。
すごく美味いラーメンを作りそうな出で立ちのお兄さん。
掃除の時間なのだろうか。
「今から、世界大会経験の技を披露いたします!!」
ムキムキのお兄さんが宣言する。
このサウナの常連らしき客が、「待っていました!」と歓声をあげて喜んでいる。
おっと、どうやらこのサウナの「世界大会」要素は、このお兄さんの『技』にあるようだ。
仁王立ちになるお兄さん。
熱源の石に水を素早くかけたお兄さんは、その卓越した上腕二頭筋を活かして猛烈なスピードでタオルで扇ぐ。
アウフグーツ
ロウリュ、つまり、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させろ。それを扇ぐ技、それがアウフグーツ。
お兄さんの世界大会級のアウフグーツで扇がれた熱風が、サウナ客である俺たちを襲う。
蒸気を含んだ強烈な熱風は、俺たちの日ごろのストレスや雑念を、マッスルに引っぺがしていく。
こ、これは整う……。
予想の斜め上の熱風サウナは、満喫できたが、俺の心は晴れなかった。
くっそう! 結局、すべては筋肉かよ!!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
八奈結び商店街を歩いてみれば
世津路 章
キャラ文芸
こんな商店街に、帰りたい――
平成ノスタルジー風味な、なにわ人情コメディ長編!
=========
大阪のどっかにある《八奈結び商店街》。
両親のいない兄妹、繁雄・和希はしょっちゅうケンカ。
二人と似た境遇の千十世・美也の兄妹と、幼なじみでしょっちゅうコケるなずな。
5人の少年少女を軸に織りなされる、騒々しくもあたたかく、時々切ない日常の物語。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる