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朗読会(グリとグラと日頃の鍛錬)
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さすがに多少のことには動じなくなってきた俺。
だが、今回は、ちょっとだけビビった。
絵本の朗読会を企画すると聞いていたから、何か起こるかもしれないと、心準備はしていたつもりだったんだ。
だが、まさか、こんな斜め上の事態になるとは……。
俺の予想した朗読会の光景。
ごっつい本因坊さんにギャン泣きの幼児達。
オロオロと慌てふためいて、朗読会どころではなくなる本因坊さん。
俺も一緒になって本因坊さんと頭を下げて、お怒りの保護者の皆様に謝罪。
朗読会は、不評の中で中止になる。
現実の光景。
ごっつい本因坊さんを、何かのアニメキャラと間違える幼児達。
本因坊さんに群がって、本因坊さんの上が幼児だらけ。
本因坊さんが、強引に絵本を朗読するが、幼児はテンションアゲアゲで、聞いてくれはしない。
「さ、佐々木君! 助けてくれたまえ!!」
困惑した本因坊さんから、俺に救援要請←今ココ。
あのマッスル脳筋の我が道を行く本因坊さんが、俺に救援を要請するなんて、珍しいなんてものではない。
面白いから放っておくのも一興だが、それではいつまで経っても朗読会が終わりはしない。
それはそれで困るから、やはり助け船は出すことにしよう。
本日朗読する予定の絵本は、「ぐりとぐら」。可愛いグリとグラというネズミのキャラが、大きな卵を拾って、それで大きなカステラをつくる話。
この話にちなんで、後で子ども達みんなにカステラを配って一緒に食べるまでが、朗読会のスケジュール。
もちろん、アレルギー何かは、保護者に確認済みだし、そのカステラの代金ももらっている。
だから、カステラを配るに到達しなければ、この朗読会は、終わらない。
「はい! みんなに美味しい物が出てくるお話をするよ!!」
俺は、本因坊さんに代わって、絵本を朗読する。
懐かしいな。昔、せがんで読んでもらったっけ?
どこかの絵本作家が、絵本のキャラクターの声とは、子ども達にとっては、「親」の声で再生されていると言っていた。おおかたの子どもに初めての読み聞かせをするのは、親だから。
まあ、結構な人数が、声優の戸田〇子さんの声でインプットされてそうな気はするが……。
だから、この子ども達の中の何名かは、この絵本に今日初めて出会い、俺の声がグリとグラの声としてインプットされるのだ。そう考えれば、感慨深い。
俺は、子ども達に作家さんの想いを届けるべく心して丁寧に朗読する。
さすがは、長く読み継がれている名作。
子ども達は、朗読をいつしか真剣に聞いてくれた。
絵本の素敵な絵に魅入って、絵本の登場人物たちを一緒に卵を運び、カステラをつくる。
最後の一行を読み終わった時には、どの子の目もキラキラとして、カステラに魅入っていた。
「さあ、お話はお終い。手を洗っておやつにしようね!」
絵本を閉じれば、歓声があがる。
配られたカステラに、子ども達の笑顔がはじける。
楽しいな。朗読会。
「助かったよ。佐々木君」
カステラを頬張る子ども達を見ながら、本因坊さんが俺にそう言った。
「やはり、本屋には筋肉が必要だな。まさか、こんなに全身の筋肉を総動員するとは思わなかったが!!」
カラカラと本因坊さんが笑う。
ええ、結局は、そこなんだよな。この人……。
ますます、トレーニングに力が入りそうな本因坊さんに、おれはひっそりとため息をついた。
だが、今回は、ちょっとだけビビった。
絵本の朗読会を企画すると聞いていたから、何か起こるかもしれないと、心準備はしていたつもりだったんだ。
だが、まさか、こんな斜め上の事態になるとは……。
俺の予想した朗読会の光景。
ごっつい本因坊さんにギャン泣きの幼児達。
オロオロと慌てふためいて、朗読会どころではなくなる本因坊さん。
俺も一緒になって本因坊さんと頭を下げて、お怒りの保護者の皆様に謝罪。
朗読会は、不評の中で中止になる。
現実の光景。
ごっつい本因坊さんを、何かのアニメキャラと間違える幼児達。
本因坊さんに群がって、本因坊さんの上が幼児だらけ。
本因坊さんが、強引に絵本を朗読するが、幼児はテンションアゲアゲで、聞いてくれはしない。
「さ、佐々木君! 助けてくれたまえ!!」
困惑した本因坊さんから、俺に救援要請←今ココ。
あのマッスル脳筋の我が道を行く本因坊さんが、俺に救援を要請するなんて、珍しいなんてものではない。
面白いから放っておくのも一興だが、それではいつまで経っても朗読会が終わりはしない。
それはそれで困るから、やはり助け船は出すことにしよう。
本日朗読する予定の絵本は、「ぐりとぐら」。可愛いグリとグラというネズミのキャラが、大きな卵を拾って、それで大きなカステラをつくる話。
この話にちなんで、後で子ども達みんなにカステラを配って一緒に食べるまでが、朗読会のスケジュール。
もちろん、アレルギー何かは、保護者に確認済みだし、そのカステラの代金ももらっている。
だから、カステラを配るに到達しなければ、この朗読会は、終わらない。
「はい! みんなに美味しい物が出てくるお話をするよ!!」
俺は、本因坊さんに代わって、絵本を朗読する。
懐かしいな。昔、せがんで読んでもらったっけ?
どこかの絵本作家が、絵本のキャラクターの声とは、子ども達にとっては、「親」の声で再生されていると言っていた。おおかたの子どもに初めての読み聞かせをするのは、親だから。
まあ、結構な人数が、声優の戸田〇子さんの声でインプットされてそうな気はするが……。
だから、この子ども達の中の何名かは、この絵本に今日初めて出会い、俺の声がグリとグラの声としてインプットされるのだ。そう考えれば、感慨深い。
俺は、子ども達に作家さんの想いを届けるべく心して丁寧に朗読する。
さすがは、長く読み継がれている名作。
子ども達は、朗読をいつしか真剣に聞いてくれた。
絵本の素敵な絵に魅入って、絵本の登場人物たちを一緒に卵を運び、カステラをつくる。
最後の一行を読み終わった時には、どの子の目もキラキラとして、カステラに魅入っていた。
「さあ、お話はお終い。手を洗っておやつにしようね!」
絵本を閉じれば、歓声があがる。
配られたカステラに、子ども達の笑顔がはじける。
楽しいな。朗読会。
「助かったよ。佐々木君」
カステラを頬張る子ども達を見ながら、本因坊さんが俺にそう言った。
「やはり、本屋には筋肉が必要だな。まさか、こんなに全身の筋肉を総動員するとは思わなかったが!!」
カラカラと本因坊さんが笑う。
ええ、結局は、そこなんだよな。この人……。
ますます、トレーニングに力が入りそうな本因坊さんに、おれはひっそりとため息をついた。
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