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新婚さん(モンゴメリーと心筋)
しおりを挟むリア充は、爆発しろとお考えの方は世界に数多いらっしゃると思いますが、俺もその一人です。
今回は、とっても幸せそうな男女二人がご来店いたしました。
本因坊店長~! 仕事ですよ~!
リア充め。本因坊店長の理不尽マッスル筋トレで、汗と涙で爆発しやがれ。
「本日は何をお探しかな?」
にこやかに筋肉エプロン姿で応対する本因坊店長。
「えっとぉ~! 新婚旅行にカナダに行く予定でぇ~♪ 『赤毛のアン』って小説が、カナダが舞台なんでしょ? 一度読んでおこうと思って!」
ウキウキの新妻が、夫と腕を組みながらそう言った。
『赤毛のアン』それは、カナダのプリンスエドワード島で、美しい自然、仲良しのダイアナ、ちょっと意地悪なギルバートと一緒に、アン・シャーリーという、赤毛のおしゃべり好きでちょっとおっちょこちょいな気の強い女の子が成長する物語。
ダイアナと遊ぶ様子、ギルバートとの喧嘩、赤毛がコンプレックスで、怪しい毛染めを使ったり、せっかくケーキを焼いたのにケーキにバニラエッセンスと間違えて薬を入れてしまったり。とても楽しい老若男女問わず楽しめる深い物語。
まあ、観光に行くのに、その場所にちなんだ小説を読もうとするなんて、ちょっと粋でいいんじゃない? 店内でいちゃつかれるのは困るが、ちょっと見直した。えっと、確か倉庫にあったはずだ……。
「ご夫婦は、心臓は強い方かな?」
「え? 心臓? 特に既往症はないけれど……」
夫の方が、きょとんとしながら答える。
そりゃ、そうだよな。エベレストに行くというわけではないのに、どうしてプリンスエドワード島に行くのに心臓の状況をきかれるのか。
「いかん! いかんぞ!! モンゴメリーを強靭な心臓を持たずに読めば、そのトキメキで死んでしまうだろうが! 愛する妻を未亡人にするつもりか! 無茶は止めるんだ!!」
相変わらずの超理論。
そして、相変わらずの……
「そ、そんな! 未亡人だなんて!!」
今回もとってもノリの良いお客様。
俺の常識の方が間違っているのか? そう疑いたくなるレベルで、この店に来た客は、本因坊店長のマッスル筋肉理論をそのまま受け入れてしまう。なんで?
やはりこの店は、異世界なのだろうか?
「店長さん! どうすれば! 俺は、この愛する妻とずっと一緒にいたいんだ!!」
縋る夫。ウンウンと横で首を縦に振る新妻。
「任せろ! 心筋を鍛えるには、有酸素運動と適度なベンチプレスだ!」
あ、そうなんだ。へえ。心臓って鍛えられるんだぁ。
新婚さんは、熱い筋トレをして、無事『赤毛のアン』に加えて続編の『アンの青春』までご購入してお帰りになりました。
良い新婚旅行をお過ごしください。
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▶︎credit
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