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卒業間際
爆弾魔 1
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学校のどこかに爆弾が仕掛けられた。
よって、休校にする。
先生の話は、衝撃的だった。
「ふうん。休校だって。帰ろうか」
赤野が、何の興奮もなくサラリとそう言ってのける。
「ちょっとは驚こうよ」
「え……でも、こういうのって、本当に仕掛けられている可能性は低いし、僕たち生徒がやらなければいけないことって言ったら、速やかに避難して、捜査の邪魔にならないようにすることでしょう?」
キョトンとした顔の赤野。
そうだけれども。それでも、こんな事件があれば、普通は、「怖い!」とか「大丈夫かな」とか、思うものだろう? 赤野よ。
ドーン!
大きな音が突然響く。
キャアキャアと誰かが叫ぶ声が響く。
何人かは、やじ馬で観に行ってしまった。
「三階のゴミ箱らしいぞ!」
「音楽室の前か!」
そんな声が聞こえてくる。
赤野のスマホが、震えだす。
――木根刑事だ。
「はい。今学校だよ……ええっ!……伯父さん? ちょっと、僕も一般の生徒なんだけれども! 暗号? そんなの刑事さんだけで……って、もう!」
聞かなくても分かる。
何かを押し付けられたんだ。
「赤野に木根刑事が手伝えって?」
「そう。なんか、犯人からの予告状みたいなのが届いていたんだって。予告状の内容は、この学校の写真に、爆発をコラージュした写真。それに、意味不明な文字がついていて、警察ではただの悪戯だと思っていたんだって。それが、今朝になって、学校に直接、校内に複数の爆弾を仕掛けたと手紙が届いたんだそうだ。……学校は、休校にして、警察に連絡して。じゃあ、あの届いていた不思議な写真は、予告状だったのではないかという話になっていた時に、あの爆発。それで、焦った伯父さんが、僕に連絡してきたの」
赤野が、ため息をつく。
「酷くない? 『一般の生徒』を帰らせた後に、捜査をするから、手伝えって! 僕だって一般の生徒だということを、伯父さんは完全に忘れているよ」
赤野の苦悩も分かるが、実際に爆弾が仕掛けられていれ爆破されてしまったのだから、焦っているのだろう。
赤野みたいな便利な存在が、ちょうど事件現場にいるのならば、利用したくなる気持ちも分からなくない。
生徒たちは、先生たちの誘導で速やかに下校していく。
それを横目に、俺と赤野は、校庭の隅で木根刑事を待つ。
どこに爆弾が仕掛けられているのかは分からないから、流石に校舎内では待てない。
「寒くない?」
「うん。大丈夫」
卒業間際の寒い時期。こんな屋外で待たされれば、冷えてしまう。
赤野に俺の上着を掛けてやろうとすれば、「いいよ。松尾君だって冷えるでしょ?」と、拒否されてしまった。
トンッと、赤野がもたれてくる。
「くっついていれば、温かいかも」
無邪気にニコリと笑う赤野。
邪な気持ちで、俺は、熱いくらいになってしまったのだが。
よって、休校にする。
先生の話は、衝撃的だった。
「ふうん。休校だって。帰ろうか」
赤野が、何の興奮もなくサラリとそう言ってのける。
「ちょっとは驚こうよ」
「え……でも、こういうのって、本当に仕掛けられている可能性は低いし、僕たち生徒がやらなければいけないことって言ったら、速やかに避難して、捜査の邪魔にならないようにすることでしょう?」
キョトンとした顔の赤野。
そうだけれども。それでも、こんな事件があれば、普通は、「怖い!」とか「大丈夫かな」とか、思うものだろう? 赤野よ。
ドーン!
大きな音が突然響く。
キャアキャアと誰かが叫ぶ声が響く。
何人かは、やじ馬で観に行ってしまった。
「三階のゴミ箱らしいぞ!」
「音楽室の前か!」
そんな声が聞こえてくる。
赤野のスマホが、震えだす。
――木根刑事だ。
「はい。今学校だよ……ええっ!……伯父さん? ちょっと、僕も一般の生徒なんだけれども! 暗号? そんなの刑事さんだけで……って、もう!」
聞かなくても分かる。
何かを押し付けられたんだ。
「赤野に木根刑事が手伝えって?」
「そう。なんか、犯人からの予告状みたいなのが届いていたんだって。予告状の内容は、この学校の写真に、爆発をコラージュした写真。それに、意味不明な文字がついていて、警察ではただの悪戯だと思っていたんだって。それが、今朝になって、学校に直接、校内に複数の爆弾を仕掛けたと手紙が届いたんだそうだ。……学校は、休校にして、警察に連絡して。じゃあ、あの届いていた不思議な写真は、予告状だったのではないかという話になっていた時に、あの爆発。それで、焦った伯父さんが、僕に連絡してきたの」
赤野が、ため息をつく。
「酷くない? 『一般の生徒』を帰らせた後に、捜査をするから、手伝えって! 僕だって一般の生徒だということを、伯父さんは完全に忘れているよ」
赤野の苦悩も分かるが、実際に爆弾が仕掛けられていれ爆破されてしまったのだから、焦っているのだろう。
赤野みたいな便利な存在が、ちょうど事件現場にいるのならば、利用したくなる気持ちも分からなくない。
生徒たちは、先生たちの誘導で速やかに下校していく。
それを横目に、俺と赤野は、校庭の隅で木根刑事を待つ。
どこに爆弾が仕掛けられているのかは分からないから、流石に校舎内では待てない。
「寒くない?」
「うん。大丈夫」
卒業間際の寒い時期。こんな屋外で待たされれば、冷えてしまう。
赤野に俺の上着を掛けてやろうとすれば、「いいよ。松尾君だって冷えるでしょ?」と、拒否されてしまった。
トンッと、赤野がもたれてくる。
「くっついていれば、温かいかも」
無邪気にニコリと笑う赤野。
邪な気持ちで、俺は、熱いくらいになってしまったのだが。
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